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思いを軸にしたハードとソフトの両輪が事業を推進し、組織を育てる

とあるお客様のところでマネジメントチームの立ち上げを行っています。90年近く事業を営んできている30名ほどの製造業の会社です。15年ほど前、売上が落ち込む危機がありましたが、3代目の社長を中心にビジネスモデルを変えながら売上を回復し、このコロナ下においても順調に事業を進めています。うまくいかない中でも、やれることをとことんやろうと決め、商品や売り方を追求してきたことが、いまの強みを作っています。順調ですが、そこに甘んじている訳にもいきません。社長は、これからのことを考えるともう少し社員を増やして、かつ、次世代のリーダーを育てる必要があると考えるようになりました。

実のところ、直接的には、人事評価制度づくりのお手伝いを依頼されたのでした。リーダーを育てていくための仕組みが必要であると社長が考えたのです。プロジェクトを進めるにあたって、社員ヒアリングをした結果、評価制度云々というより、マネジメントの仕組みが十分でないと感じました。社長のリーダーシップによって、事業を進めてきた側面が強く、組織としての仕組みができていないのです。とはいえ、商品・サービスを磨き、結果が得られたことで、自律的に考え行動する社員が増えてきているという印象でした。そこで、次世代のマネジメントチームをプロジェクトメンバーとして、人事評価制度作りを進めています。プロジェクトを通じてマネジメントの仕組みや考え方を根付かせていこうと考えたわけです。

両輪ないと前には進んでいかない

よく、「ウチもそろそろ人事評価制度が必要だと思うのですが…」という相談があります。多くは、会社がちょっと大きくなり始めたので、必要性を感じたという動機からです。また、「人事制度が形骸化している」ので制度を作り直したいという依頼もいただきます。人事制度に限らないのですが、制度を作ったからといって経営課題が解決することは、まずありません。人が行動して結果が出るようにしていくことが大切です。つまり、制度だけでなく運用を加えた両輪が必要なのです。これは、制度だけでなく、戦略にも当てはまります。戦略を立てても実行しなければ意味がありません。また、実行した結果から学ぶという仕組みも必要です。ところが、やりっぱなし、結果オーライ、うまく行かなくなったら、流行りの別の戦略を真似してみる…なんていうことが少なくありません。

7つのSで思いを軸にハードとソフトの両輪を回す

こうした問題はあちこちの会社で起こります。それを解決しようとするなかで、抽象化された知恵が生まれます。先人たちの苦労の結晶がフレームワークになって、存在しています。制度と運用、戦略と実行を考えていく上では7Sというフレームワークが参考になります。

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7Sは、上記の7つのSの観点から経営を見ていこうというものです。また、ハードの3Sとソフトの4Sに分かれています。制度と運用、戦略と実行は、ハードとソフトの両輪に読みかえられると思います。そして、真ん中にShared Valueがあります。やはり、根幹になるのは、その企業のもつ事業への思いです。常にここに立ち返ることが大切です。

例えば、人事制度はSystemに当たります。一方、「次世代のリーダーを育てたい」というのは、SkillやStaffに関わってくるところです。前述の社長が直観的に人事制度が必要だと感じたのは、さすがだと思いました。様々な角度から経営を考え続けていることが伺えました。一方、「制度がそろそろ必要」「形骸化しているので直したい」という発想は踏込みが足りません。部分しか見ていないのです。将来の会社の姿をどのようにしたいのかという高い視座に立って多角的に考えることができていないのです。

ここのところ様々なお客様と話をしていますが、コロナの危機を迎えて、今までもどうにかしないとなあ、と思っていたことが顕在化していると感じます。ジョブ型の人事評価もその一つだと思います。間違いなく検討しなくてはならないことの一つです。ただ、そこだけを見ているとうまく行きません。Shared Valueを軸に置きながら全体感を持って将来像を描いていくことが大切です。そして、描くだけでなく、ハードとソフトの両輪を回す実践が会社を育てて行くのです。

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