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社員に「やったもん負け」と思わせたら負け

「お客さんと対立しちゃってる感じなんですよね、ウチの会社って」
お客様の会社で部長にインタビューしていたらそんな言葉がでてきました。お客様の要望をいかにかわすか、やりすごすか、言いくるめるか…そんな意味あいのことをおっしゃっていました。本来は、お客様の要望を聞いて商品・サービスに反映していくことが求められます。なぜなら、そうしない限りわたし達の仕事には何の価値も生まれないからです。

社内の都合だけを見ているから「やったもん負け」になる

この会社さん、業績は決して悪くありません。社員のみなさんもまじめです。しかし、時に「やったもん負け」のような言動に出くわします。マネジャーの方が「ときどき工場のラインに入ることがあるが、改善できる個所は結構見つかる。でも、それを指摘すると仕事が増えてしまうから言わない」と言ったりします。もちろん、これは良くないと思っていることとして、部外者のわたしに話したことです。つまり、ここだけの話、というやつですね。

…なんとももったいないですよね。まだまだパフォーマンスあがると思います。業績ももっと上を目指しています。しかし、短期思考、部分最適に陥ってしまっています。日々の業務をこなしていくのにはある意味適しているのかもしれません。ただ、やはり「これでは良くない」という発言がでてくるわけです。そこから感じるのは、わたし達は、根源的には、仕事をもっと良くしたいし、誰かに喜んでもらいたいし、感謝されたらすごくうれしいのだと、そう信じています。…けど、そこにフタがされていませんかね…と思うわけです。

心は勝手に都合のいいストーリーを作る

おかしいとは思っているけど思うようにはならない…という矛盾を「認知的不協和」と言います。そして、わたし達の心はこの矛盾を無意識レベルで解消しようとします。良く出てくる例が、イソップ童話の「すっぱい葡萄」のキツネです。キツネは、高いところになっている葡萄を獲ろうとします。しかし、いくら跳んでも跳ねても葡萄が取れません。結果、「あの葡萄はどうせ酸っぱいんだ」と決めつけて、その場を後にするという話です。

一方、その逆の甘いレモンというのもあります。手に入れた果物はレモンしかなかったが「このレモンは甘いに違いない」と決めつけて満足しようとすることです。「なんか仕事の仕方がおかしいし、変えた方が良いとは思うけど、そういう声をあげて面倒がられるのも嫌だし。それに変えるのにも時間がかかるし。そもそも誰がやるのって話になるし。だったら、今まで通りやってお金ももらえるのだし、特に誰かを困らせるわけでもないし」…と矛盾がなくなるように理由を考えるのです。そして、これは無意識レベルで起こります。そうやって解決しないと前に進めないこともあるので、大事な心の働きです。ただ、その働きが裏目に出るわけです。これを、わたしは、「賢さの裏返し」と呼んでいます。

無理やりにでも立ち止まらせることもマネジメントのひとつ

では、裏返らないようにするにはどうしたら良いのでしょうか。
自動的に筋の通った話をわたし達は考えてしまいます。なので、強制的に立ち止まる、ということが必要です。それがマネジメントの機能の一つなのではないかと思います。いったん結論を保留して本当は何が大切なのかを考える場を持つことが組織運営に求められるのです。

て

冒頭で「お客さんと対立しちゃってる感じなんですよね、ウチの会社って」という言葉を紹介しました。理想的な姿は、上の図のようにお客様へ価値を提供することを通じて、お客様から学ぶことです。そして、そのためには、立ち止って、左側の様な仲間と学び合う場を持つことが大切です。

実はこの左のような場は、たいていの会社で必要となります。それは、人事評価です。人事評価をただの査定で終わらせてはいけません。立ち止まって振返り、どうやったらお客様のお役に立つことができるかを考え、その貢献を評価していくのです。やったもん負けの会社の多くは、この場がありません。結果、みんなで無難な目標を立てて行動するため、成果が伴わなくなります。

こうなると、いくら経営者がチャレンジしろといっても機能しないのです。進めという号令ばかりでは、マネジメントになりません。立ち止まらせることもマネジメントです。そういう場を作り、わたし達の賢さを活かす仕組みが、成果を生むエンジンとなるのです。

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