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To-Doではなく、To-Beのためのマニュアル

いま、マニュアル作成のお手伝いをしています。OJTで人を育てている会社さんです。プロジェクトを進めているうちに、ただの手続きマニュアルではなく、自分たちらしい仕事のあり方を再定義する、といったものになりつつあります。お客様の仕事内容はあまり詳しく書けないですが、ざっくりいうと心理系のリハビリをやっています。お話を伺っていると、課題解決の主体はクライエントであるという考えを大切にしていることが伝わってきます。これは、手間がかかるだろうなと直観的に思いました。ただ、そこに彼ら、彼女ららしさがあるのだろうと思います。誰でもが簡単に真似出来る事ではないからこそ価値があるのですね。

やっていることを言語化しようとすること自体に意味がある

冒頭で、「ただの手続きではなく、仕事のあり方を再定義する」マニュアル作りになりつつあると書きました。というのは、決まった型やソリューションを当てはめれば済むわけではない仕事だからです。こうした非定型の仕事はマニュアルには不向きです。とはいえ、やっていることを言語化しないと進歩がありません。これは、個人としても、組織としても、です。大切なのは、言語化しようとすること自体にあります。結果オーライではなく、何を狙って実行し、その結果何が起きたか。それについて、どのように感じたか。そう感じるのは、わたし達の問題なのか、環境の問題なのか…などなどを言語化していくのです。ただし、ここでやりたいのは、手続きの整理、つまりTo-Doの洗い出しではありません。そもそもわたし達はどういう存在であるべきなのか、というTo-Beを探求しようとしているのです。

我々コンサルタントもそうですが、特に人間の心や行動に働きかけるサービスは、正解が一つに定まりません。相手との関係性の中で互いが取り組むべきことを見出していくからです。そう考えると、大切なのは、その人(クライエント)にとって、自分(コンサルタント)がどういう存在であるべきなのかを常に問うことなのではないかと思うのです。

互いにどうありたいかを問うことで仲間になっていくOJTというプロセス

これは、クライエントに対してだけでなく、OJTで教える対象についても同じなのではないかと思います。もちろん、知識や身につけるべきスキルは教える必要があります。つまり、やるべきTo-Doはあります。ただ、それだけでは、誰もができる平均点をこなすだけの人を作ることになります。それでは、互いに面白くない。

わたしは「OJTは、仲間になっていく過程」なのではないかと思っています。仕事をただ覚えるだけでなく、どうありたいかを互いに語り合い、認めあっていくことで、組織の一員となり、その人ならではの貢献ができるようになっていくのです。こうした組織としての学習が根づいている組織は、常に進化する強い組織です。

マニュアルというと、やっていることを標準化して、成果の再現性を高めるものというのが一般的な捉え方だと思います。しかし、マニュアルを見て覚えれば良いだけの仕事は、AIやロボットに代替されていくでしょう。大切になってくるのは、標準化する過程や、身につけようとする過程における対話です。そのことによって、自分たちはどうあるべきなのかを考え、自ら進化していく組織になることができます。それは、わたし達誰しもができることであり、AIやロボットが得意ではないことです。

進めているプロジェクトを振返ると、作るのはマニュアルだし、活用するのはOJTだけど、その中に、「わたし達はどうありたいのかを語り合う状況」をデザインしていくことが大切なポイントであるな、とあらためて感じています。

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