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お金で口コミを買っても長続きしない

「今日は、サイトからの予約でご新規の方が3組ほどいて。正直、気を使うので疲れます。」

いつも髪を切ってくれている美容師さんの言葉です。一定数の常連さんもいてほぼ一人で切り盛りしています。こうした常連さん、いわゆる既存客がいるのは有難いことです。

ただ、長期的に考えると新規のお客様にご来店いただく工夫も必要です。そこで、美容系の予約&口コミサイトにお店の情報を載せています。おかげで新規のお客様もコンスタントに来店します。これも有難いですね。

クレームよりもクレームがないことを恐れた方が良い

ただ、この予約サイト経由の新規のお客様には、特に気を使うそうです。

「ネガティブな口コミを書かれたこともあるので…」

どんなことが書かれているのか、家に帰ってから見てみました。好意的な口コミばかりです。そのなかで1件だけ、「写真を持っていったのに全然違う髪型にされた。もう利用しない」というものがありました。

普段の彼の仕事ぶりから考えると、ちょっとした行き違いなのだと思います。よく話を聴いてくれますし、腕も確かです。また、きちんと返信も書いていました。「貴重なご意見、有難うございます。またご来店いただけるようカウンセリング力を磨いていきます」といった内容です。

確かに気を使います。大変かもしれません。しかし、これも有難いと思った方が建設的です。なぜなら、多くのお客様は、黙って去っていきます。わざわざ、クレームを言うとは限りません。「クレームよりも、クレームがないことを恐れた方が良い」とよく言われます。

彼は、新規のお客様に来ていただいて、一定の評価を受けることでサービスを磨く機会を得ているのです。問題は、自覚的にそれができているかどうかでしょう。

お金で口コミを買っても長続きしない

たまにタイミングが合わずに、予約サイトで別の美容院を検索して利用することがあります。ただ、今のところは、他の店に行っても、また行きたいとは思いません。急な予約ができる店は、開業したばかりのケースが多く、どこかサービスがぎこちないというのもあるでしょう。

そうしたお店で、それとなく集客の様子を聞いてみると工夫しているお店もあります。例えば、口コミをサイトに書いてくれたお客様に、独自のキャッシュバックをしているお店もありました。口コミが増えると新規のお客様にお店を知ってもらう確率が高まります。

しかし「でも、やっぱりリピートが課題ですね」…とおっしゃっていました。

確かに集客としては上手い使い方です。しかし、サービスに満足するから口コミを書くのであって、安くなるから口コミを書く、というのは順序が違います。

もちろん、安ければよいという人もいるでしょう。しかし、そうなると価格勝負になります。安ければよいというお客さんは、もっと安いところを探すだけです。そうなると、必ずしもリピートにつながらないのです。

本来は、口コミというフィードバックをいただいて、サービスそのものを磨くという視点に立つべきです。口コミが多ければ、その分だけご新規の来店は増えます。しかし、ビジネスの本質は、商品・サービスでお客様に喜んでいただくことです。お金で口コミという信用を買っても長続きしません

マーケティングの施策で抜けがちな視点

こうした日常的な例からも、マーケティングは大変重要だとあらためて思います。マーケティングとは、自社の強みを活かせるお客さまを特定し、そのお客さまが求めているものが何かを見出し、それらを提供することです。

しかしながら、いかにお客様に知っていただくか、どうやって他社よりも多くお客様を囲い込むかというところにばかりフォーカスが行きがちです。

もちろん、そうした集客や囲い込みを否定するつもりは全くありません。むしろ必要です。ただ、お客様を集めるだけでは企業の目的を果たせません。お客様が求めているものを見出し、提供することが求められます。

大切なのは、お客様から学び、商品・サービスを磨くことです。そうした工夫がない限り、焼畑農業で終わってしまい、いつまでたっても発展することができません。

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