第157話「新築同然」

「敷金は返せないね」

就職を機に転居しますと大家さんに電話で伝えると、彼女は部屋を訪ねて来た。

我が物顔で室内を歩き回り、部屋の隅々に視線を這わしてから、はっきりと言った。

冒頭の言葉だ。

え? と漏らした僕の眼前に、老婆は枯れ枝のような指を差し出し、ゆっくりと折っていく。

「タバコですすけた壁紙。床もかなり変色してる。風呂場は専門の業者による清掃が必要だ。トイレも同じ。冷房設備もカビが生えてるし。他にも――」

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2023年以降に投稿した意味怖を載せるマガジンです。 何話まで書けるか分からないので、基本的には購入しないでください。 応援としてのご購入なら助かります。

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