モノに愛着を持つには、その背景を愛せるほどの想像力が大事だと感じた話。〜運命のイス〜
2020年7月末、引越しをした。これは、そのときに出会った運命のイスにまつわる話である。
新しく住むことになった東京都墨田区にあるそのワンルームには、あらかじめいくつかの家具が備え付けられていた。自炊など滅多にしない男の一人暮らしには持て余すほどの冷蔵庫。デスクワークには特に不自由しないサイズの机。そして、その机とセットになっている、一脚のイスだ。
引越し費用をとにかく抑えたかった自分にとって、こんなにありがたいことはない。冷蔵庫も、机も、申し分なかった。だがひとつ気にな