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【映画】『PERFECT DAYS 』 生きることの意味

話題の映画『PERFECT DAYS』を見終わったとき、ひたひたと熱いものが込み上げてきた。

〈一部ネタバレも含みます〉

大きな事件が起こるわけではない。
東京で公衆トイレの清掃員をしている平山は無口な男だ。
よって、主演の役所広司さんの台詞も少ない。
感情の起伏は平坦だが、時折見せる静かな微笑み。

カセットテープで聴くお気に入りの曲。
小さなフィルムカメラで撮る木漏れ日。
2つ折りのガラケー。
古本屋で買う百円均一の文庫本。

部屋では湯呑みを鉢代わりにして、木の苗を育てている。

仕事が終わってゆっくり浸かる銭湯の一番風呂。
毎日足を運ぶ居酒屋での一杯。


朝になればまた、決まりきった日常が始まる。
目覚まし時計に叩き起こされるわけではない。
誰かが表を掃く竹箒の音で目覚める。
布団を畳むと、階下の流し台で歯磨きと洗面。
髭の手入れは少し念入りに。

仕事用の青いつなぎを着て車に乗り込む。
その前に、アパート前の自販機でいつも買う缶コーヒーはBOSS。
車の後ろには掃除用具が所狭しと積まれている。
腰には仕事用の鍵の束。
あちこちのトイレを回る。

住んでいる古びたアパートは昭和遺産といってもよい佇まいだ。

スカイツリーの見える街から、毎日渋谷方面へと仕事に向かう。

どうせすぐ汚れるんだから…
同僚のそんな言葉を無言で受け流し、鏡を使って裏側まで隈なく磨き上げる。

その姿は、とても神聖な仕事をしている人のように見える。

淡々と生きているつもりでも、
日々の出来事、
誰かとの出会いに
心が揺らぐときもある。

ラストシーン、役所広司さんの微笑みも涙もすべてが入り混じったような無言の演技に、この映画の真髄を見たような気がした。

自分に嘘をつかない
日々を疎かにしない

生きることの意味を
考えさせられる映画だった。


*こちらの透明トイレが出てきます



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