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Gと呼ばれる虫

不潔で有害なものとして忌み嫌われ、その名を口に出すのも文字に表すのも憚られる存続。

Gこと
ゴキブリ
別名コックローチ

娘の家に未開封のブラックキャップがあった。
ゴキブリホイホイより強力なG撃退アイテムである。
箱にはゴキブリの絵が描かれている。

虫大好きの3歳の孫が、これを使えば虫を捕まえることができると思い、頻りに親に仕掛けてくれるよう、頼んでいる。

幸い、娘のうちにはゴキブリが頻繁に訪れることもなく、わざわざ仕掛けるまでもない。

孫の父親は、「このうちにはゴキブリは来ないから大丈夫だよ。仕掛けると匂いを嗅ぎつけて逆に外から集まってくるかもしれないから」と丁寧に説明している。

3歳児はゴキブリが忌まわしい生き物とは思っていない。
純粋にゴキブリという虫を見てみたいと願っているだけだ。
そこに偏見などない。

わたしは、ゴキブリって、汚いし、気持ち悪いから人間に嫌われているんだよ、と補足説明をした。

いや、待てよ…
相手が虫といえども、こんな差別発言をしてよいのだろうか。
汚いから、気持ち悪いからという理由で他者を排除してもよいのだろうか。
教育上よろしくない。


例えばカラスは、ゴミ箱を漁り、凶暴性もあり、農作物に被害をもたらす害鳥だ。
ルックスも如何にも不吉で…と思い込んでいるが、先入観がなければ、漆黒の羽はクールに見えないこともない。

カラスは人間にとって邪魔な存在の筈なのに、鳥獣保護法で守られているという。
カラスを駆除すると生態系が崩れてしまうのだとか。

カラスは生きるために、子育てするために、普通に生活しているだけなのに、人間にとってはそれが迷惑行為になる。

この世界は人間を中心に回っている。
人間が生きるために動物を殺す行為は人間界のルールで許されている。

子どもの無垢な心に触れて、詮無いことをあれこれ考えてしまう。

だからといってゴキブリやカラスと今更仲良くできる気はしない。