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『エレガントな毒の吐き方』中野信子

タイトルに惹かれて衝動買いした本です。

『エレガントな毒の吐き方』
中野信子 著


わたしは家庭内ではなかなかの毒舌家です。
そして、エレガントという言葉に
強い憧れを持っています。

実はこの本、京都のイケズに学んで美しい毒を吐きましょうというのがテーマです。

サブタイトルは、
脳科学と京都人に学ぶ
「言いにくいことを賢く伝える」技術
です。

Noと言わない京都人。
Noと言わずにNoと伝える技術。

イヤ!ダメ!

Noをやんわりと伝えることができたら理想的ですね。

婉曲に伝えて気づいてもらえたらよし。
わからないお人は野暮な田舎者と嘲笑して憂さ晴らし。

おお、怖!
京都人は我々を試しているのでしょうか。


 イケズというのはその相手の言語リテラシー、言語の運用レベルを知るための物差しなのだそうです。最初に小手調べでイケズを投げかけてみることで、その人がどれだけイケズを察知できるのか、はたまたあまり気にしないでスルーするタイプなのかを確認するといいます。

p.7 はじめにより抜粋


京都人が、相手にわからないように嫌味を言うのは、防衛手段なのだ。
嫌味だと分かる相手には自粛を促し、分からない相手は嘲笑の対象にするという方法で、自分たちこそが評価の基準だという構造をつくっておく。相手が権力者であったり抗えない武力を持っていたりする場合に備え、いざというときには言い逃れできるように、必ず、少なくとも二重の意味にしておく。
(中略)
次に誰が権力を持つかも分からない。だから、どこにも敵をつくらず、誰とも仲良くしすぎない、というのは生き延びていく上での基本だった。そうやって編み出されてきたのが京都風の言い回しなのだ……。

p.23〜24「あいまいさ」を賢く戦略的に使いこなすより抜粋


なるほど、長らく日本の都であった京都の歴史が背景にあるようです。


憧憬と警戒心がない混ぜになったような京都人に対する複雑な気持ち。
わたしの中にもあります。


いかにもの京都らしさを前面に出さず、関西人独特のユーモアも交えて、気配りのある婉曲表現ができる素敵な京都の方も知っています。
京都の人に限らず、偏見を持つのはよくないことだと思います。

とはいいつつ、以前、『京都ぎらい』という本を読んだことがあります。

この本を読んで、京都の中にも「洛中」「洛外」の格差があることを知りました。


さて、『エレガントな毒の吐き方』を読了して、いろいろ考えました。

東京の人は…と一括りにしても、生粋の江戸っ子は僅かですし、東京はアメリカ合衆国と同じ、地方出身者のサラダボウルです。
いろいろな地方からやってきた人たちは価値観も多様。
黙っていたのでは理解し合えません。
伝えたいことはストレートに伝えなければなりません。

京都の人も、平安京の時代からの住人は稀でしょうから、ひとことに「京都人とは」と定義づけることは難しそうです。
しかし、京都の土地柄というか、カラーはたしかにあるのかもしれません。

本文にも具体例が挙げられていて、興味深かったです。

お隣の植木がこっちにはみ出しているとき。

お隣のピアノの音がうるさいとき。

子どもが公共の場で大騒ぎしているとき。

どんな言葉で伝えるのが正解なのか。

言外の意図を汲み取る能力が求められます。
常に言葉の裏を読む。
これは頭の体操?

裏の裏を読んでいたら、
結局表に戻って益々混乱しそう。
メンタルやられそう。

わたしのような不調法者には、敷居が高過ぎます。

そろそろ帰って欲しいときのぶぶ漬けや、先の大戦といえば、応仁の乱を指すという、ステレオタイプなエピソードには、京都の人も些か怒りを感じているといいます。

いろいろややこしそうな京都の人。 そして土地柄。

京都は、たまに旅行に行くぐらいが丁度いいようです。

著者の中野信子さんは、テレビでもお馴染みの脳科学者です。
脳科学の観点からの考察あり、
「困った」「イヤだ」を賢く伝えるレッスンあり、京都出身のお笑い芸人ブラックマヨネーズとの対談など盛りだくさんです。
軽めで読みやすい内容です。


最後に目次の一部を引用してみます。

「褒めている」ように見せかける

「(遠回しな)質問」で、相手に答えを出させる

自分を下げる「枕詞」を入れて、断る

オウム返しで質問を受け流す

証拠のない第三者を引っ張り出す

知っておくと便利な4つのキラーフレーズ

褒められて居心地が悪いときは「受け入れて、流す」

「笑い」に持ち込む

「依存」「下心」「利用してくる人」を撃退するには

相手のイケズを正しく読み取る


何となく雰囲気を感じていただければ、幸いです。

著者は代々江戸っ子ということもあり、京都人と東京人の比較を中心に論じられていますが、他地方の出身者としては、自分は果たしてどっち寄りなんだろうと考えさせられました。

















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