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蝉時雨

蝉がひっくり返って
そのまま動かなくなった

落ち葉を掴んで
掛け布団のように自分の上に載せた

しばらくすると
よろよろと反転して
ゆっくり歩き始めた

枯れ草にしがみつき
自分の重みで
また白い腹を見せる

次の瞬間には
地を這うような低空飛行

最後の一秒まで
力を振り絞る

悪あがきのように

葬送曲は蝉時雨

断末魔の
無言の声が聞こえた