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【映画】波紋

てっきり真面目な映画だと思っていたら……

始まってみると、笑いが随所に散りばめられている。

劇場で、同列に座って観ていた同年輩と思しき女性がクスッと笑う。
わたしも同じところでクスクスっと笑う。
どちらかというと、ブラック寄りの笑い。

あらすじは、手許にある新聞の映画評から一部抜粋してご紹介します。

 住宅街にある一軒家で夫の修(光石研)と高校生の息子拓哉、それに要介護の義父と暮らす主婦の依子(筒井真理子)。ところが震災と原発事故が起こり、放射能汚染の不安が広がる中、夫が突然失踪してしまう。
 歳月が経ち、息子は九州の大学に入るが卒業後も当地で就職し、義父は介護施設に入居して亡くなり、今や依子はひとり暮らし。大型食料品店でレジのパート仕事をしながら新興宗教「緑命会」の勉強会に通っている。そんなある日、修が帰ってくる。

2023.5.26
日経新聞夕刊『シネマ万華鏡』より


夫の修が出て行った理由はよくわからない。
震災や原発事故に心が乱されて、衝動的に出ていったのか。
趣味のガーデニングの水やりの最中に突然姿を消す。

数年ぶりに帰って来た修は年齢以上にやつれて薄汚れているように見える。

不在の間に実の父は亡くなり、自慢の庭は一変している。

リビングには怪しげな祭壇。
家中に堆く積まれた水のボトル。
異様な光景だ。

ワンオペ介護、病気、新興宗教、クレーマー、困った老人、ご近所トラブル、障がい者差別……。

映画はさまざまなな問題を投げかける。
更年期を迎えた主人公にいちどきに降りかかる難題。

お為ごかしに近づいてくる新興宗教の幹部。

意気投合した掃除のおばさんに誘われて始めたスイミング。
水をイメージしたシーンが印象的だ。

波紋と波紋がぶつかり合い、本音を語り合うシーンがところどころに挿入される。

ラストシーンの雨の中でのダンス。

再びひとりになった依子は何を思い舞っているのか。


主演の筒井真理子の表情は、時に能面に見えたり、般若に見えたり。

脇役はキムラ緑子、柄本明、木野花、江口のりこ、平岩紙、安藤玉恵と実力派(曲者)揃い。
息子役は磯村優斗。


この作品は問題作でありながら、エンターテイメントです。



お時間のある方はご覧ください。
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※新宿シネマカリテで7/13まで
 絶賛上映中




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