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京都の舞妓流、あなたも逃げずにパワハラに対抗できる!

舞妓とは、京都の祇園を中心とした五花街で、舞踊、御囃子などの芸で宴席に興を添えることを仕事とする芸妓の見習い段階の少女を指す。舞妓特有の厳しいしきたりがあり、かなりの忍耐が必要とされる。また、舞妓が日中に、花街や花街以外を出歩くことはめずらしく、多くは変装舞妓(舞妓体験してる人)とも言われている。

今回、紹介するのは『京都花街の芸舞妓は知っている 掴むひと 逃すひと』。著者は竹由喜美子さん。14歳から踊りの稽古をはじめ、16歳で舞妓になり、5年後に襟替えをして芸妓となる。舞妓の仕事は奥が深いが、私たちが応用できるものはないか探ってみたい。

■まずはパワハラの内容を吟味しよう

宴席などで、「もっとジャンジャン飲め」「オレの酒が飲めんのか」「今日は無礼講だぞ。ハッハッハ!」と強引な人を見かけることがある。上司のこのような発言はパワハラである。社内でそれなりの立場であれば留意しなければいけない。

「困ったものですね。お酒の適量は人それぞれですから、無理にすすめてはいけません。こういうふうに言われた場合、ほかのひとに『少しずつ助けて』と救いを求める人がいます。『もうかなりいただきました。そういえば課長が酒豪なんですよ。課長も強いんですから、少し助けてくださいよ』などと上司に返すひともいます」(竹由さん)

「このようなやり方は、基本的にNGです。『こいつ逃げを打っているな』と上司は察知します。温情ある上司で、オレもいっしょに手伝うよ、という対応をしてもらえればいいのですが、そういうとはかぎりませんよね」(同)

京都の花街には、「言い訳は、口答え」という教えがある。どんな事情があろうとも、言い訳は通用しない。「手伝ってください」は禁句である。では、どうすれば、上司のパワハラから逃れることができるのか。

「逃げずに倍返し、あるいは3倍返しをするのがいい、と聞いたことがあります。ある会社の役員のかたが、部下の不始末を詫びに相手先の会社に出向かれたところ、どうしても謝罪を受け付けてもらえないことがあったそうです。『では、どのように対処させていただけばよろしいでしょうか』。すると相手は次のように答えたとのこと」(竹由さん)

「『いまから3か月間、いまおたくがうちから購入している倍の量を購入してよ』と答えたそうです。不始末のお詫びはことばではなく、仕入れで示せと。さてどのような結末になったでしょう」(同)

■相手をギャフンと言わせるには

詫びた側の役員は次のように答えたそうだ。この返し方は、様々なケースで応用がきく。ぜひ、覚えて自分流にアレンジしてもらいたい。

「『承知しました。喜んで購入しましょう。倍というのをそのままでは、お詫びになりません。3倍購入いたします。来月からといわず今月から、いや来週から早速に対応させていただきます』。一瞬おやっという表情をされたものの、3倍の仕入れを約束してもらったのですから承諾され、これで一件落着となったそうです」(竹由さん)

「ところが、翌日、相手先の役員と資材担当のかたが、朝いちばんで謝罪にこられたそうです。急に3倍を供給するだけの在庫はありませんし、生産するにも原材料がないので間に合いません。ほかの会社に納めるぶんを回すしか手がないのです」(同)

その後、なんてバカなことをしたんだ。役員と資材部の責任者から「仕入先をほかに変えられたらどうするんだ!」と叱られたとのことだ。

京都花街の世界で知り得た処世術とはなにか。チャンス、商機、人の心を掴んで離さないテクニックを知りたい人にとって最適な一冊である。

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尾藤克之(BITO Katsuyuki)
コラムニスト、明治大学客員研究員
頭がいい人の読書術」を上梓しました。

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