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オランダ駐夫生活:卒業

本日をもって、1年3ヶ月に及ぶ駐夫(駐在員妻に帯同する夫)生活を終了ことになりました。

働き方や家族の形を含めた生き方の多様性が叫ばれる昨今、私の様に夫という立場で妻側のキャリアを優先し、海外駐在へ帯同することは珍しくはなくなっており、ブログやSNS等でも駐夫さんを名乗られているアカウントはちらほらと拝見しますが、それでも尚まだまだ事例としては少ない様にも感じるので改めて私の経験を綴らせていただき、特に今後駐在員と帯同家族となれる夫さんや妻さんに少しでも参考になる様な記事になればと思っています。

辞令は突然に

駐夫になる可能性について私が知ったのは振り返ること数年前、妻とお付き合いを始めた頃に二人の将来像について語り合った時期に戻ります。

おそらく私自身はコンサルティング企業での出世を目標にしていると話をした覚えがありますが、一方で妻は「将来海外、特にオランダに駐在することが目標」と話をしてくれ、私は間髪をおかずに「めちゃくちゃいいやん!もしそうなったら一緒についていくべ!」と伝えたことを覚えています。

しかし、当時はコロナ禍があったこともあり、あまり駐在の話は進んではおらず「いつか叶えばいいな〜」程度で考えていましたが、婚約し入籍を控え、二人暮らしに向けた引越し準備を始めた頃にオランダ駐在の可能性を会社から妻に伝えられました。その際もあくまで可能性くらいの話だったので、頭の片隅に置きつつ新居へ引越をし、そして半年後の結婚式の準備を始めました。

結婚式を1週間前に控えたある日に突然、翌年初頭からのオランダ赴任が言い渡されました。さらには帯同家族の有無含めて返事を1週間以内に欲しいとのことでした。
「いやいや、1週間後結婚式やし、そんなこと考えている余裕ないよw」
ということで、せめて結婚式が終わってからの1週間後に返信をすることを会社側から了承を得ました。

ドタバタながらなんとか結婚式を終えたのも束の間家族会議を行いました。
論点は簡単に2つ
1. 妻が駐在赴任をYesとするか?
2.自分(夫)が帯同するか?

1に関しては、妻の目標であったのでYesであることは議論の余地もありませんでしたが、2に関してはやはり相当に難しい論点でした。

私自身は当時それなりに仕事に対してモチベーションを高く持っており、社内でも居心地の良いポジションを築いていたこともあったため、頭を悩ましましたが家族、親友、先輩への相談を経て最終的には帯同することを決意しました。

強く心に思い描いたのは「こんな機会はおそらく一生に一度しかない」という気持ちでした。

退職 or Not

帯同することに決心したものの、イコール退職に結びつくことはありませんでした。というのも、今の世の中多種多様な働き方があり、また当時スタートアップで勤務していたこともあるのでより柔軟な働き方が可能であることも考え、勤務先の社長に相談することになりました。
社長からの返事としては、「リモートでもいいから退職せずに続けてくれ、なんならオランダ支社立ち上げてみるか?」と冗談混じりながらも会社の継続を提案いただきました。

その様な柔軟で社員の生き方を尊重する会社には非常に感謝をしましたが、一方でせっかくオランダに行くのだから、何か新しいチャレンジをするべきではないか?そして、昔から何となく頭の片隅で思い描いていた海外MBAへ進学を考え始めました。

それ以外にも、オランダからリモートベースで仕事を続けるにあたって超えなければならない障壁がいくつかありました。
1.  労働が認められているVISAか
2. 税金はどの様に処理をするのか
3. 1年以内にMBA合格するまでに勉強受験を十分に確保できるか?

VISA的な面で問題なく労働は可能とのことでしたが、税金周りでやや懸念も大きかったこと、勉強時間を確保したいなどを踏まえて、結局はオランダへの帯同を機に退職することを決意しました。

ただし、さすがに1年近く仕事をせずに勉強だけに集中することで、これまで培ってきたスキルを失うこと、自宅でコミュニティなく過ごす孤独への対処も踏まえて業務委託として仕事を継続することになりました。

移住後の生活

紆余曲折ありがらも2023年5月にオランダに移住を開始しました。
オランダ移住後は、第一義に「MBA受験」ついで「家事」「旅行」「仕事」ということで駐夫として本来求められているであろう「家事」よりも「MBA受験」を優先した半人前駐夫でした。

MBA受験

受験のあれこれについては、別記事に触れているため割愛しますが23年5月~24年3月までの約10ヶ月の猛勉強・準備を経てなんとか第一志望のビジネススクールから合格をいただけました。
https://note.com/kbita/n/n71fdfdc5c8b4

家事

元々1人暮らしを3年ほどしていたこともあるので、それほど苦になることはありませんでしたが、特に料理については二人暮らしをしてからする機会がほとんどなかったためある種のチャレンジでした。また、当然ながら日本と同じ食材や調味料が安く手に入ることもできないため(近所に日本食材店はありましたが、頻繁に買い物をすることはありませんでした)、現地のスーパーで購入できるものを最大限活用しながら普段の食事を作っていました。
その甲斐あってか、様々な料理を1から作ることにもチャレンジできました。
(うどんやピザなども小麦粉から作ったこともあります、もちろん勉強の息抜きとしてですが)
その他の洗濯物や洗い物については、特に英語の勉強踏まえてシャドーイングをしながらこなしていました。

家事面での一番の苦労というと、水回りのトラブルになります。
シャワー、洗面台、トイレ、キッチン詰まりとタンクから水漏れなどオランダに来てから様々なトラブルに見舞われました。
特に、3日間*トイレが使用不可となった際はさすがに苦労しましたが、近所のカフェに借りながらなんとか凌ぎました。*当初はPlumber (配管工)が当日に来る予定が気まぐれで3日後に来ることになったため

旅行

受験勉強をしながらも息抜きや気分転換として合間を見てオランダ国内(Delft、Den Haag、Rotterdam、Utrecht、Maastricht、Alkmaar、Texel island)、オランダ国外(Belgium、France、Germany、Luxembourg、Czech、Slovenia、Slovakia、Norway、Croatia、Monaco、Austria、Switzerland、Montenegro、UK、Hungary)を観光・旅行しました。
※MBA合格後に訪れた地域・国も含む

もちろん、まだまだ行きたい国は沢山残っていますが、質、量共にオランダ、ヨーロッパの生活を全力で楽しみました。

多くの方々との出会い

また、その他に移住後に日本人中心のフットサルコミュニティに所属し、適度に運動していますし、何よりそこでの出会いが私たち夫婦にとっても非常に大きな糧になっています。妻の様に駐在員としてオランダに移住された方はむしろ少数派で、個人事業主をされている方、現地雇用されている方、自らビジネスを立ち上げられた方、ワーホリの方、大学生など様々な理由でこの小さな国に移り住み生活をされている方との交流を通じて、彼ら彼女たちがある意味レールに敷かれた人生ではなく、自ら自分やその家族の人生を決断している姿は刺激的で心から尊敬できるものです。

フットサル以外にも他の駐在家族との出会いやオランダの両親と呼ぶべき素敵なご夫婦など交流の幅が広げることができ、間違いなく日本にいる時にはできなかった方々との出会いを多く経験しました。やはり、日本から遠く離れている場所だからこそ日本人同士で助け合うことができる環境であると実感しました。

苦悩

以上の様に、勉強を中心に生活しつつも非常に多くの地域、国への観光・旅行や素敵な方々との出会いがあり、とても楽しい駐夫生活ではありましたが、それなりの苦悩も抱えていたことは事実としてあります。

NoteやBlogで駐妻さんの悩みを検索すると下記の様なことが記載されていました。

・仕事をしていないと、自分には価値がないように感じる
・夫のお金をどこまで使って良いのかわからない
・自分の収入がないことが不自由に感じる
・現地で仕事をしたいがビザの面はクリアしていても、夫の会社による制約がある
・今まで働いていたので、専業主婦のコミュニティに入っていけない
・キャリアについて話ができる人を見つけられない
・予想もしなかった別の都市、国へのスライド移動が決まり、自分の人生が夫の会社に振り回されているように感じる
・ある程度長期間の滞在(3〜5年)ということで退職してきたのに、1年足らずで帰国することになり、むなしく感じる
・休職制度を使って帯同しているが、この期間に何をしておけば良いのかわからない
・SNSで同僚や後輩が昇進していくのを見るのが辛い
・夫の活躍を羨ましく感じ、つい自分と比較してしまう
・これまで対等だった夫との関係が、家事の分担等を含めて変わってきたことにモヤモヤする

(出典)「セレブ」で「優雅」は遠い過去、令和時代の「駐在妻」の悩みとは? 

この投稿に対して素直に「すごく、よくわかる!」というのが実際に駐夫を経験してみた感想です。また、決して男女差別や古い固定観念ではありませんが、それでも「男性でありながら、妻の収入に支えられて生きていること」「仕事で忙しい妻や友人達に対して、家事・勉強で忙しい自分」という違いから劣等感と焦燥感に駆られることも少なからずありました。

それでも、私は前述した通りMBA受験、そしてMBAへの進学という目標がありましたので、あまり大きく気を病みすぎることもなくオランダ生活を楽しむことができたと思っています。

他の方々も目標を見つけることはとても難しいと思いますが、何かしらのゴールや意味合いをもって駐在への帯同を楽しんでもらいたいと思います。

オランダを離れる時

そんな楽しくも、悲しいこともあったオランダ生活ですがついに本日MBA進学のためオランダを離れることになりました。
(まさに今オランダアムステルダム発のEurostarに乗りイギリスロンドンに向かっています)

オランダ到着直後や、MBA受験に勤しんでいるころは当然志望校のあったイギリスへ、そして日本に帰国することもある意味は楽しみにしていたことはありますが、オランダを離れることになった今、そして渡航のための数ヶ月の準備期間の間に一気にオランダに対する愛着を持ち始め、いまではこの国を離れることに対して寂しさを覚えています。

自分自身でもまさかここまでとは思っていませんでしたが、自然豊かなオランダの風景や近所の公園、オランダ名物の食べ物、移民に対しても快く受け入れてくれるフレンドリーな国民性、オランダで出会った多くの方々を踏まえて自分がこの国の一部として生きていることを実感し、離れがたい気持ちがあります(といっても、もうそろそろベルギーにつきそうですが笑)

いつか戻ってくる

その様な寂しい気持ちを持っていますが、私はこれから長年の夢であったMBAに進学するための道中で、イギリス行きもワクワクしていることは嘘ではありません。これから出会える同級生や乗り越えるべきチャレンジの数々を考えるときっと、これまで経験したことがないほど楽しい1年になることは間違いありません。もともとはMBAを経て日本へ帰国後、コンサルティング業界に出戻ることを考えていましたが、今のところはその様な気持ちはほとんどなく、それよりもむしろどうにかしてこのオランダないしはヨーロッパでの生活を続けられないかを考え始めMBA卒業後はオランダを中心に就職を目指していこうと考えています。

あるフットサル後の飲み会で友人との会話にて
私:「私たち夫婦は駐在終了後のプランがなく、皆さんみたいに計画的に自分の人生を決断し、実現している姿に感銘をうけます。
友人:「私からみたら、奥さんは駐在で、旦那さんはMBAを取得する予定で、二人ともオランダ/海外生活が好きなので、むしろ戦略的に自分たちの生活を楽しみ、希望の生活に向けて準備を進めているじゃないですか?

その言葉を聞いて、「確かに客観的に見るとそう見えるのか」と心の底から納得をしました。
自分ではあまり計画にはなかったMBA後のオランダ/ヨーロッパ就職ですがMBAを取得することでそのチャンスが広がることは確かにその通りです。
むしろMBA取得を目指す方の多くは①Location(国・地域)②Industry(業界)③Function(役割・職種) のいずれかもしくは全てを変えることを目標にしていると言っても過言ではありません。

その様な背景も踏まえて、私はイギリスでMBAを取得し、必ず就職でオランダに戻ってくるんだ!という気持ちを持って臨もうと思います。

それでもイギリス生活が楽しすぎて、イギリスに残りたいと思えることもあるかもしれませんが、これまで40近くの国に訪問し、唯一オランダが今後も住み続けたいと思えた国であり、その様な国に出会えることは滅多にないので「オランダよりもイギリスがいい」と思えたらそれはそれで幸せなことだと思います。

自分の道を進む

駐妻さんのBlog等で「私は駐在員夫の妻以外の何者でもない」「この帯同の数年間は私個人としての時間はまるで止まっていた」といった悲しい投稿を見たことがあります。前述した様に私自身それなりに駐妻さんの気持ちを理解することができましたし、苦悩に悩まされることもありましたがそれでも、妻が私を尊重してくれたこと、私自身が自分の目標に突き進めたことで「帯同していた時間=止まっていた私の時間」となることは全くありませんでした。しかし、一方で妻を支えるという使命感も持っていたことで自分よりも妻を優先することもありました。勉強に集中していたタイミングで、夕食を作る時間がやってきたこと、土日はできるだけ妻と色んなところにでかけようと言った具合に自分自身も心から楽しんでいたので、不満など微塵もありません。それでも、MBAに進学するということは、まさに「自分だけのための、自分の道」を進むということになるのである意味数年ぶりのその様な自分本位の生活を味わうこと時になるので、それもまた特別な1年と捉えて楽しみつつ、責任を持って過ごそうと決意しています。

最後に

最後になりましたが、本当にオランダでの駐夫生活は様々な経験をすることができました。今後望んでも同じ様な1年を過ごすことはなかなか叶わないとは思うのでこの様なチャンスをくれた妻には改めて感謝をすると共にこの1年を楽しくカラフルなものにしてくれた様々な出会いに対しても感謝を告げてオランダ駐在夫編を卒業とさせていただきます。

これからはイギリスMBA生として様々な挑戦をしながら、成長していきますので引き続きNoteを更新していきたいと思います。これからも読んでいただけると嬉しいです!

それでは、以上ありがとうございました。








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