【小説】手紙(仮題)
【まえがき】
以前にここでコメント募集した小説を11月末の目標で書いております。たぶん、締め切りは無理っぽいけど……100枚目標で現在20枚程度。まとまった部分だけ公開します。
タイトルもまだ仮題なので、これからタイミングを見て完成させていきます。
小説「手紙」
2年後に届いた手紙。丸みを帯びた筆跡は彼女だった。
手紙を持つ僕の指が震える。吹き抜ける夜風はまだ夏の熱気を含んでおり、否応なく彼女が失踪したあの日を僕に思い出させた。
夏休みがあと三日で終わろうとしていた日に、ミクは何の理由も告げずに姿を消した。スマートフォンや日記、学校のノートにも手掛かりらしいものはなかった。
どうやら僕と母親の環さんが見ていたミクは、彼女のほんの一部だったらしい。あの笑顔の裏にあった彼女の悩みなんて、何一つわかっていなかったんだ。
噂レベルでの話でもかまわないと、ミクの姿を追って僕たちは追いかけた。三十年前にも学校で同じような事件があったとか、違法なドラッグが校内で流行っていたとか。でも、どれも根も葉もないデマばかりだ。彼女の影すら掴めなかった。
外野であるマスコミやSNSは心配なんてしてない。ただ面白がっているだけだ。毎日のように何かしらの事件との関連性があるのではと騒ぎを垂れ流すだけだった。
特にミクの通う高校は格好の的だった。わずか半年の期間に生徒の自殺や失踪が相次いだのだから、無理はないのかもしれない。
僕たちはそれからも必死に彼女を探し回った。でも、事件なのか、誘拐なのかさえも未だに分からない。確実なことは、僕たちが家族を失ってしまったということ。
選択肢にも入ってなかった東京の大学を父が強く勧めたのも、僕を心配しての事だった。大学の授業に追われて平穏に過ぎる日々。でも、僕の中でミクを忘れた日はなかった。
あれから二年。突然届いたこの手紙に僕は戸惑っている。だって本当に彼女なら、僕や環さんに会いに来るはずだ。手紙じゃなく電話やスマホにメッセージがくるのが自然なはずだ。
中を開けなければと焦るほど、嫌な汗が手紙を湿らしていった。それは期待でもあり、不安でもあった。
冷静に考えようとするほどに、いろんなことが頭に浮かんで考えを乱す。
あのうるさい大家がポストを片付けろなんて言わなきゃ良かったのにとか。なんでバイト帰りの真夜中に集合ポストを開けたんだとか。どうしてミクは僕に手紙をくれたのかとか……
そうやってどれくらいフリーズしてたのだろう? アパートの二階で物音がして、僕は思わず我に返った。警戒して周りを見回したが、取り越し苦労だ。こんな夜中に誰がいると言うのか。
とにかく落ち着いて考える時間が必要だった。僕はガレージに停めてある愛車のロードスターのドアを開けると、隠れるように身体を滑り込ませた。
【終わりに】
最終的にここで公開するかも決まっておりません。
まだまだ書き始めたばかりなので、コメントなどいただけると励みになります。