虚誕解脱 Part1(ニルヴァーナイニシアチブ Loop1)
この解説は、以下のAIソムニウムファイルシリーズのネタバレを含みます。
解説をご覧になる前にご自身でプレイすることをおすすめします。
AI:ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ
NAIX
ニルヴァーナイニシアチブは、HB連続殺人事件を中心に物語が展開します。
物語を進めていくと、HB連続殺人事件はNAIXの計画――ニルヴァーナ構想の一部であることが分かります。
ニルヴァーナ構想は、断片的に情報が開示されるものの、結局その全容が明かされることはありませんでした。
とはいえ、情報をつなぎ合わせれば大枠は推測することが可能です。
今回は、ニルヴァーナ構想について考察します。
時雨の所属するNAIXは、シミュレーション仮説を信奉する自称思想団体です。
現世界を上位存在によるシミュレーションとしてみなし、直ちに解脱するべきであるという思想に基づいて活動します。
[補足]分派として、理想の世界であるシミュレーションに留まるべきという理念に基づく宗教団体――%教団が存在します。
%教団に所属する代表的な人物として、法螺鳥が挙げられます。
法螺鳥の不老不死の研究は、%教団の理念に基づいているようです。
NAIXの信奉するシミュレーション仮説は、証明するのも否定するのも困難です。
そこで、NAIXはシミュレーションをゲームと見立てて、そこに設計者の意思が反映されると仮定します。
そして、設計者の想定を越えることで解脱を果たそうとします。
ニルヴァーナ構想
[補足]ニルヴァーナ構想は、フレイヤー以外を対象にしているか否かで2つの階層に分けることが出来ます。
それぞれ第1段階・第2段階と呼称します。
ニルヴァーナ構想は、過去時間の染月閏が古衛迅を殺害した時点から動き出しました。
切っ掛けは突発的なものだったかもしれません。
しかし、閏は、迅の存在を第1段階に利用できると考えました。
閏は、以降シミュレーション世界の破壊者――過去時間のHB事件の実行犯――テアラァとして暗躍します。
第1段階
第1段階の目標は、シミュレーション世界の全人類の解脱です。
それを実現するために、TC-PERGEが用いられます。
TC-PERGEにはざっくりと2つの特徴があります。
1つ目は感染者が奇行を繰り返すようになること、2つ目は高い感染能力があることです。
これを散布することによって、同時多発的にバグを引き起こし、ひいては全人類の解脱に至るとテアラァは考えました。
テアラァは第1段階を決行する聖地を特立競技場に定めました。
NAIXの教義では、縦糸と横糸の交点に綻びが生じます。
そこで、古衛・法螺鳥(と古衛の死体が盗まれたことによって再配置される米治)のHBを、特立競技場を中心に直交する直線状に配置してチャクラの糸による交点を作り出します。
その後、TC-PERGEが実用化されるまで6年の期間を置いて計画が実行されます。
ご存知の通り、第1段階はみずき達の活躍によって阻止されます。
第2段階
第2段階は、フレイヤ―による解脱です。
閏による第1段階の裏で、時雨は第2段階の計画を進めます。
第1段階は、設計者の意図に明らかにそぐわない世界の危機をもたらします。
NAIXの教義に沿えば、それを阻止するために設計者の介入があるはずです。
そこで虚構世界に介入してくる上位存在――フレイヤ―を利用することで解脱を目指します。
当初のフレイヤ―は龍木に宿ります。
しかし、フレイヤ―には上位存在であるという自覚がなく、宿主の龍木として振る舞おうとします。
フレイヤーを利用するには、最初に龍木とフレイヤーを分離しなければいけません。
第2段階の小目標は、フレイヤ―に自身がフレイヤ―であると自覚してもらうことです。
とはいっても、龍木に対して直接フレイヤーであると告げても何の根拠もないので意味がありません。
無分別智――真の理解を得るには言葉ではなく体験が必要です。
フレイヤ―であると自覚してもらうには、上位存在でなければ説明が付かない現象を体験させる必要があります。
第2段階のHB連続殺人事件は、フレイヤ―に無分別智を得させることが目的です。
HBは誰も経験したことのないバグじみた存在です。
最初の古衛の右半身と閏の左半身は、フレイヤ―にそれぞれの半身が6年の期間を置いて配置されるという先入観を与えます。
これは龍木とみずきのフローチャートを追うにあたり、右半身は過去時間のもので左半身は現在時間のものであるという誤解に繋がります。
フレイヤーはそれから真相を知るまでの間、4つのねじれの生まれたトゥルーフローチャートをオリジナルフローチャートと誤認したまま経験することとなります。
フローチャートの過程では、偶然か必然かすぐさま真相に気付くような致命的な破綻が起こらないようになっています。
しかし、いくつもの小さな矛盾がその奇妙な経験をしているフレイヤー自身を少しずつ意識させます。
最終的に真相がママから伝えられると、(プレイヤーもまた同じように)自身がフレイヤーであると確信します。
こうしてフレイヤーの自覚――解脱という小目標が達成されます。
最後の仕上げは、ニルナンバーによる因果律の崩壊です。
時雨は予め龍木にフレイヤーであるか尋ね、ニルナンバーを求めました。
フレイヤーは、世界の時空に縛られない存在です。
現在時間の時雨のホログラムから伝えられたニルナンバーを届けることとなります。
一方、シミュレーション世界はそのような事態を想定していません。
未来から過去への因果律の乱れは、世界に致命的なバグを引き起こします。
最終的に時雨が解脱を果たし、ニルヴァーナ構想の第2段階が完遂します。
フレイヤ―
フレイヤーは、もちろんメタ的にはプレイヤーのことを指します。
一方、その特徴を以下の時雨の用語によって説明することが出来ます。
2月12日 龍木編2章 泡沫 ホログラフィック原理
2月12日 龍木編2章 泡沫 処理速度の問題
2月15日 龍木編5章R1 斯尽 チャクラ
ホログラフィック原理によれば、全宇宙は1枚の平面にエンコードされています。
シミュレーションを行うとき、この平面をそのまま処理するのは現実的ではありません。
そこで、当事者の認識する空間を横糸、時間を縦糸にします。
更に別の可能性を並べて1枚の布とすることで、シミュレーション可能な平面にします。
当事者によるシミュレーションは、1本の縦糸とそれに交差する横糸との交点を順番にデコードしていきます。
つまり、シミュレーションすることが出来るのは1本の縦糸上にある点だけです。
他の縦糸上にある点をデコードしたり、縦糸を捻じ曲げたりすることは出来ません。
複数の縦糸をシミュレーションすることが出来る存在を俯瞰者と呼ぶこととします。
縦糸上にある点をデコードすること自体は、当事者と変わりません。
しかし、俯瞰者は必ずしも順番にデコードする必要はなく、任意の点に戻ることが出来ます。
さて、俯瞰者がシミュレーションする2つの縦糸上の点に、本編のように右半身と左半身がそれぞれ配置されていたとします。
この時、チャクラによって右半身の点と左半身の点が糸で結ばれます。
[補足]整合性を保つために、対となる糸が生じてXのねじれを形作ります。
また、ねじれたことでシミュレーションする縦糸がずれてしまった場合、半身がなくても一定の期間で解消されます。
チャクラの糸が張った状態でシミュレーションを行うと、あみだくじのように2つの縦糸を交互に移動することになります。
このように、シミュレーションのルールを逸脱する存在、整然と並ぶ布の網目――シミュレーションの世界を、点と点を結ぶことでほつれさせる存在がフレイヤ―なのです。
[補足]NAIXのシンボルは、Nonuple-Xです。
Nonuple-Xのひし形はフレイヤ―による布のほつれを象徴し、9つのXは糸のねじれを象徴します。
一方、フローチャートのねじれは4つしか存在しません。
残りの5つは、交差編0章の龍木とみずきの視点移動をカウントしていると思われます。
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