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これで合計20年以上食ってきた!企画書の作り方1【ゲームの作り方】

現在作成中のインディーゲーム『ドリフター・ビザール』が内部的な部分の制作に入りまして、今週はお見せできるような進捗がありませんでした。なので、今週はゲームの企画&企画書の作り方について解説した動画を公開しました!

ゲームと言ってはいるものの、これまで自分がコンテンツ制作会社や広告会社、独立後など、様々な形で作った企画&企画書を踏まえての解説なので、特にゲームに限った話ではありません。WEBサイトの企画や書籍企画、広告配信の企画など、これまでジャンルが異なってもぼくは基本的に同じ作り方をしてきました。

企業に提案し承認された実際の企画書ぜんぶ見せます!ゲーム企画書の作り方解説」でも書いたのですが、基本的に絶対に承認される企画というのはありません(と、ぼくは思っています)ので、この通りにやれば絶対おもしろいゲームができる or 企業からOKもらえる…なーんてやり方ではありません

また、このやり方をやるべきと主張するつもりもなく、基本的に企画は作りたいように作り、企画書も書きたいように書くのがよいと思います。だって、クリエイターによって芸風も違えば、会社によって文化も違うし!

まあただ、他の人がどういう風に作っているか参考になるというケースもあるだろうと思います。このやり方でコンテンツ制作会社4年、広告会社8年、独立して9年…と、合計20年以上、企画提案を行ってきたので、多分そこまで悪いやり方じゃなかろうと思って。公開した次第。

で。そしてこの記事では、動画の内容を補足していきます

企画書作りはコミュニケーション…というかプレゼント!

で。まずぼくは、企画書はコミュニケーションだと思っています。一番近いコミュニケーションは、おそらくプレゼント

プレゼントを選ぶのって結構難しくないですか? いやそりゃ、どうでもいい相手に贈るのであれば簡単ですよ? 無難なモノを適当に選んで贈れば、そこまで喜ばれることはないものの、不満に思われることもないでしょう。

でも、大切な人に心から喜んでもらうためのプレゼントって悩みますよね。だって、たとえば、相手が好きなジャンルのモノをプレゼントするとしましょう。でも、好きなジャンルのものだったら既に持ってる可能性高いですよね? 

じゃあ意外性のあるものを…って考えると、今度は喜んでもらえるかどうかがわからない。相手が気に入ってくれるかもしれないけど、興味を持たない可能性も少なくない。それどころか、気に入らないものかも…?

要するに、誰に贈っても絶対に喜ばれるプレゼントなんてないわけですね。この点で企画書に似ているなーと思うわけです。

ただ、相手が好きなジャンルのものを贈るにしても、意外性のあるものを贈るにしても、そもそも相手の好き/嫌いを知らないことには、選びようがありません

逆にいえば、相手が欲しいけど、まだ持っていない…そんなモノを知ることができれば、高い確率で喜ばせることができそうですよね?

ぼくの企画書づくりの根幹がコレです。そして、上に書いた「プレゼントを贈る相手」をターゲットユーザー、「相手が欲しいけど、まだ持っていないモノ」のことをコンセプトと呼んでいます。

なぜこの企画書の作り方でOKがもらえるのか?

ぼくのこの企画書作りにおいて、説明の流れはこんな感じ。

ターゲットユーザーの欲しがっているものと人数を説明した後、コンセプトの説明。

「ぼくのこの企画書つくりにおいて」とか偉そうなこと書いておいてなんなんですが、たいていの企画書にターゲットユーザーコンセプトはあります。なのでターゲットユーザーとコンセプトを書くことが特別ではありません。

ただ、企画提案で合否を左右する最も重要なポイントはこの点だろうと考えていて、最も力を注ぎます。ゲームの企画でいえば、ゲーム内容そのものよりも、ターゲットユーザーとコンセプトの方が重要だと考えています。

誤解をなくすため、補足しますが、「ゲーム内容が重要でない」とは考えていません。ゲーム内容は、お客さん(=プレイヤー)の満足度という観点からみると、最も重要なポイントでしょう。でも、企画提案で合否を左右するという観点からすると、優先度が下がります。つまり、観点の問題です。

これまたプレゼントで考えるとわかりやすいのですが、大切な人を喜ばせようとしてプレゼントするようなものって、商品クオリティ的には高いですよね。喜ばせようとするんだから、当然です。

でも、プレゼントの結果、相手の期待や好みと合わなかったり、既に持っていたり…といった形で思ったほど喜ばれない…なんてケースもあります。顔は笑っていて、一応「ありがとう」って言ってくれるんだけど、なんかテンション低いぞ…みたいな…な!

話を企画の話に戻すと、企画承認者側からすると、ターゲットユーザーの欲しがっているモノとコンセプトが一致しなければ、どんなに企画本体の内容がよかろうとも、意味がないということなワケです。

ターゲットユーザーの欲しがっているモノを調べる

じゃあどうするのか? というと、ターゲットユーザーの欲しがっているモノを知るしかありません

ではどうやって知るのか…というと、いろいろ方法はありますが、お金をあまりかけずにできる方法には次のものがあると思います。

・ヒアリング
・マーケティング調査のデータ
・雑誌の発行部数/WEBサイトのアクセス数
・Twitterなどのアンケート機能での調査
・月間検索回数

ヒアリングで調査する

もし身の回りに、ターゲットユーザーと近いタイプの人がいたら、その人に聞いてしまうのがいいでしょう。ヒアリングというヤツです。

ヒアリングする時のコツは、相手が何に価値を持っているかを聞くのがポイントです。単純に「●●が欲しい」という情報だけを聞くのではなく、何故それが欲しいのか、を聞きましょう。

たとえば、「もっと簡単な対戦格闘ゲームが欲しい!」というターゲットユーザーがいたとします。では何故「簡単な対戦格闘ゲームが欲しいのか?」が重要です。

「連続技を出したいのに難しくてできない、自分も連続技の爽快感が味わいたい!」なのか、「自分は負けるのがイヤだ!絶対に勝てるゲームがイイ!だから対戦相手が必ず自分より弱い格ゲーを遊びたい!」なのかでは、随分差があります。前者の場合は、連続技のシステムを見直すという形で対応できそうですが、後者の場合、マルチプレイの対戦ゲームではなく、ソロプレイのゲームを考えた方がいいかもしれません。

マーケティング調査のデータを探す

実は、ネットで「●● マーケティング 調査結果」などと検索すると、●●に関するマーケティング調査データが結構引っかかります。有料の場合もありますが、無料の場合も。とりあえずお金をかける前に、無料の情報を探して読んでおくと、無駄な調査をせずに済みます。

雑誌の発行部数/WEBサイトのアクセス数

ターゲットユーザーが欲しがっているモノを見つけるのは簡単ではありません。が、ターゲットユーザーの人数を把握するというのも、なかなか骨があります。これが店舗の候補地を探すとかだと、候補地の側で通行量を調査するなどといった方法があるのですが、「●●ジャンルのファン」のように、精神面に根差したターゲットユーザー数をカウントするのはなかなか難しい。

この時に、ターゲットユーザーの人数を把握する方法のひとつが、関連ジャンルの雑誌の発行部数や、WEBサイトのアクセス数を把握することです。

雑誌やWEBサイトの多くは、広告を収益源としています。そして広告が収益源ということは、企業に広告を出してもらわなければなりません。で。広告を出してもらうためには当然、営業が必要になります。「ウチに広告を出しませんか…? ウチに広告を…!」という営業ですね。

この営業の際、雑誌やWEBサイトは媒体資料というモノを作ります。この雑誌(WEBサイト)は何人くらいの人に読まれていて、性別比率や年齢比率はどうなっているのか…などが書かれているんですね。そして、広告を出す企業はこの媒体資料を見て、「この雑誌に広告を出せば、うちの会社のターゲットユーザーに近いお客さんに商品を知ってもらえそうだ…」などと考えるわけです。

なので、この媒体資料を見れば、雑誌やWEBサイトが対象としているジャンルにどれくらいのユーザーがいて、性別比率や年齢比率がどうなっているか…などが一目瞭然。もちろん、「ジャンル内の全ユーザー数=雑誌の読者数」なんてことは恐らくありません。けど、ジャンル内にどういうユーザーがいるのか、傾向を概ね把握できるでしょう。

「そんな媒体資料なんてどうやって見るんだよ!」と思うかもしれませんが、「雑誌名 媒体資料」などで検索すると意外と引っかかります。

また、媒体資料がない場合、「雑誌名 発行部数」で検索すれば、少なくとも発行部数は把握できるでしょう。

Twitterなどのアンケート機能での調査

もっと細やかな質問を行って人数傾向を把握したい…という場合は、Twitterのアンケート機能を使うのがオススメです。

本格的なマーケティング調査のように精度の高い調査は行えませんが、大体の傾向を把握する程度なら、Twitterなどのアンケート機能でよいように思えます。

Googleの月間検索回数

あるジャンルのユーザー数を把握するという上では、Googleの月間検索回数も参考になります。

Googleの月間検索回数は、「Google広告」内にあるキーワードプランナーで調べることができます。Google広告はGoogleに対して広告を出すためのサービス。キーワードプランナーは、どの検索キーワードで広告を出せばいいか調べる際に使うツールです。「お、この検索キーワードは月間30万回も検索されているのか…!じゃあ、広告を出してみようかな」なんていう風に使うわけですね。

調査することで何がわかるのか?

実際に調査すると何がわかるのかというと、たとえば、「脱出ゲーム」という単語は、キーワードプランナーで調べると月間1万~10万回検索されています。「脱出ゲーム 無料」などという単語でも検索されているため、おそらく脱出ゲームが遊びたくて検索しているのでしょう。

当たり前だろ!と思ったかもしれませんが、脱出ゲームが遊びたくて脱出ゲームを検索するというのは、結構イレギュラーです。どちらかといえばゲームは「龍が如くがプレイしたい」だとか「FGOがプレイしたい」といった形で、個別タイトルもしくはシリーズに対してファンがつくものであり、RPGやFPSといったゲームジャンルに対してファンがつくものではないからです。

これは、恐らく脱出ゲームの特性が影響しているのでしょう。多くの脱出ゲームは数時間程度、長くても1日あればクリアできます。そして、謎解き…要するにナゾナゾクイズがメインなので、一回クリアすると、二週目を楽しむことが難しい。だって答え知ってるわけだからね…!

このため、脱出ゲームファンは、短時間でクリアし、次の脱出ゲームを求めて検索しているのでしょう…と推測ができます。

ちなみに、以前クロスワードパズルの雑誌などを調べた際、おおむね発行部数は3万部前後でした。ということは、謎解きやパズルといったものを日常的にプレイする人…謎解きファンは、日本に3万人~10万人くらいの規模でいそうです。

これで人数が把握できたので、あとは、謎解きファンが何を求めているのか?

ヒアリングしたり、Twitterなどで謎解きファンにアンケートを行うことで、欲しいモノを把握すれば、コンセプトが見えてくるわけです。


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