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「まちづくりは人づくり」という言葉の本当の意味。

7/26熱海のまちづくり会社・machimoriが手掛ける教育研修事業の企画、越境学習型企業研修プログラムのモニターに参加してきました。

熱海といえば昭和の慰安旅行や企業の保養所で栄えたまち。バブル崩壊以降の衰退を経験し、10年ほど前からエリアリノベーションによる民間主導の稼ぐまちづくりが行われた結果、熱海銀座商店街の1階空き店舗が全て埋まり、観光客だけでなく多くの移住者や関係人口が集まり活気を取り戻したまちです。

※詳しくは熱海の奇跡をどうぞ

依然として空き家や高齢化など、日本の課題先進地の状況を有する熱海をフィールドにした人材育成事業がGeNSEnであり、以前から気になっており3月にも視察をさせてもらいました。

熱海市は人口3.5万人。毎年300万人ほどが観光で訪れているそうですが、動員の繁閑差が大きく、平日の日中や秋冬の誘客を見込んで新たにビジネスニーズを取り込むことが目的だそう。

人材育成・研修事業を提供する企業向けにモニタープログラムを行い、関係者で可能性と課題についてディスカッションしてきました。

当日は地域人事部アライアンスネットワークでも繋がりのあるESUNEの天野さんのファシリテートの下、machimori市来さんにレクチャーとまち歩きガイドをしてもらうという贅沢な時間でした。

以下はモニタープログラムに参加しての気づきと雑感↓

・エリアリノベーションによる活気づいたまちとその裏にある廃墟や空き家が混在しており、光と影のコントラストが明確になることでギャップアプローチとビジョンアプローチの双方が発想できる。課題だらけで未来の兆しが感じられない地域では両方の視点は難しい
実際に市来さんたちがリノベーションを始めた当初は、地域の方に賛同はおろかやめておけと言われる始末だったそう。後にその方は自分が言ったことを覚えてなかったらしい)

・一度衰退を経験しそこから持ち直したことで、地元の方々もまちの未来を諦めておらず、老舗旅館や干物屋が新規事業としてお店を出すなどの動きが起こっている。稼ぐまちづくりは起業だけでなく企業内起業も生み出す。

・その上で新しい人が出店し、雇用も創出。地元の人と外から来た人が共存共栄し、若者受けとレトロ。新しいものと文化が融合しお互いのサービスの相乗効果が生まれている

・他の地域の商店街のように利己的だったり、自分勝手ないわゆるヤバい人がいない。熱海は観光を主とする商人のまちなので、オープンな文化と商いの基本である人間関係を重視し、来る人が自然と選別されるようなコミュニティの力学が働いている様子

・いいお店が多いからこそ顧客満足度高い。いいお客さんが次のいいお客さんを連れてくる。紹介からファンが生まれ、交流人口から関係人口へ、出店や移住の流れができている

地域の人は熱海が好き、誇りを持っている一方で満足はしていない。スーパーやアパートなど家族で暮らすという観点で言えば課題があり、隣接する自治体まで行かないとないお店も多い

オーバーツーリズムの影響も出ており、ピーク時は渋滞が慢性化し住民のストレスになっている。一連のエリアリノベーションで地価が上昇したことで賃料が高くなり、商売でなければ熱海のまちなかで活動しにくくなってきている。創造的余白が減っているのかもしれない

などなど。詳しい人と歩くことでまちを切り取る視点が変わるし、関わる人の声に耳を傾けることで課題や可能性の解像度が上がること。書籍やネット情報では伝わりにくいこと、現地・現物・現人に触れることの大切さを再認識できました。

参加してみて思ったこと

今回のプログラムで、まちづくりのスタート期はどんなに小さくてもいいから目に見える成果や変化が大事ということにも気づけました。

初期の変化の手応えがまちの変化への機運を高め、地域に希望をもたらし、未来志向のよい流れを生み出すのでしょう。

しかし、それだけでも足りない

まちづくりによって人が変わり得る土壌を作ったら、そのまちを次代へと継承し発展させていくための人づくりが欠かせません。

むしろまちづくりで稼げるようになっただけでは、まちは持続可能にはならないということも熱海の事例から学びました。

「まちづくりは人づくり」という言葉もありますが、この言葉の本質は①まちづくり→②人づくりという取り組む順番を表すのと同時に、人が変わればまちも変わるという相関関係性を表す言葉ともとれるのではないでしょうか。

まちづくり界隈ではよく風の人と土の人が必要と語られます。

風の人は一言でいえば”よそもの”
情報や人脈という種子を運ぶ役割を担い、地域に蒔かれた種はその地で暮らす土の人(=地元の人)の手によって育まれていく考え方です。

今回の越境学習プログラムでいえば、研修として訪れる社会人にとってはもちろん、受け入れる地域側にとっても得られるものがあるよう設計されているmachimoriの皆さまは素晴らしいです。

個人としても学びのフィールドとしてまちの特徴や傾向を見る視点、越境学習の仕掛け、プログラム構成などは今後に活かしたいと思います。

熱海2回目でしたが、静岡の素敵な皆さんとの縁が生まれ、モニタープログラムに参加されてた皆さんとの繋がりもあったりと楽しい時間でありました。

お付き合いある行政や企業の皆さん、今度熱海でフィールドスタディやりましょう。

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山本 一輝
数多あるnoteのなか、お読みいただきありがとうございました。いただいたご支援を糧に、皆さんの生き方や働き方を見直すヒントになるような記事を書いていきたいと思います。