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UIターン支援策は限界だから、次は「Oターン人材」獲得の時代だと思う。

地方創生という言葉が使われるようになってしばらく経ちましたが、依然として各地の課題は山積したままで、財政的な面から見ても予断を許さない状況になってきているように思います。

そのなかでも特に各地方自治体が力を入れているのがUIターン支援ではないでしょうか。

なんとかして我がまちに住んでほしい!お願いだから帰ってきて!
(で、なんなら結婚して子ども産んでほしい)

そんな思いから、相談窓口を設置したり、情報発信をしたり、様々な金銭的支援を講じている自治体がほとんどではないかと思います。

なかには自然減や社会減を上回る移住者を生み出している地域もあると思いますが、一部を除けばこうした施策の多くはあまり上手くは行ってないと見受けられます。

成功事例もありますが、その割に状況が依然として好転しないのもその地域性に起因していたり特定のキーパーソンによって実行されているため、再現性ないからなのかもしれません。
(参考にはなるけど結局マネてみても上手くいかないというやつですね)

最近、UIターンや人口対策に関して行政の皆さんとお話することが多いのですが、結論から言うと、今のやり方のUIターン支援に心血を注ぐのは若者の価値観とずれており、コスパも良くなくて、地域によって圧倒的に不利なので見直した方がいいと思っています。

今回はその理由と、代わりに今後注目されるであろうOターン人材についてお話します。


理由①減り続けるパイを取り合っている構図

「人口が右肩下がりで減り続けているからね」といったら元も子もないのですが、現状の各自治体の施策を見ていると、似たり寄ったりな魅力を訴えて、どれだけ厚遇で移住者を呼び込むかという面が目立ちます。

海外からの移住者、ベビーブーム到来などといったパイの絶対数が増加している状況下にて取り合うならまだしも、当然そんなことはあり得ません。

年々目減りしていくパイを各自体で、下手したら同じ県内で、競り合いながら移住者を取り合う状況です。

各地方の中核都市(札幌、福岡、仙台、名古屋など)の影響も小さくありませんし、1つの自治体がこのまま独自で続けていても限界なのではないでしょうか。

各自治体のUIターン支援のゴールがどこかは分かりませんが、もし住民票でとらえる人口増加ということなら、前提を変えた方がいいと思います。


理由②UIターン後のことを充分に考えられていない施策

恐らくUIターンのターゲットの多くは20代~30代の消費世代をねらっていると思いますが、この受難の世代を考えれば、UIターンした後のことをもっと考えた方がいいと思います。

ようはバランスの問題で、魚を釣るための餌や釣り竿の数ばかりに力を入れていて、釣った後のその地域の環境という名の水や餌となるような支援が、充分にできているだろうかということです。

20~30代の世代は、かつてのように年齢に伴って給料も上がりにくく、進学を機に流出した世代の多くが、奨学金の返済をしながら働いているケースが多いです。

地域が嫌いになって地元を出て行き帰ってこない層も一定はいると思いますが、なかには賃金格差や戻った後の環境に不安を感じ、地元に戻りたくても戻れない方もいると思います。

ちなみに私も奨学金返済の問題が大きく、今の働き方に踏み込む覚悟ができるまで、Uターンできずにいました。

仮に金銭的な不安が解決できたとしても、何年も離れてしまって浦島太郎状態になった地元、もしくは縁もゆかりもない地域に移住するというのはどれだけ高いハードルかということです。呼び込む相手の立場になれば分かることですが。

移住された方のブログやUIターンに関する記事を見ていると、移住した先の地域に馴染むことができず結局東京に戻ってしまったというケースも少なくないようです。

呼び込む施策ももちろん必要ですが、力を入れるべき施策は、移住者に限らず地域にご縁を持った人を大切にする施策(=地域での関係満足度の向上)なのではないでしょうか。

理由③対象者が「地域」を自分事にできないやり方だから

つまり、UIターンを行う自治体の支援策のほとんどが、サービス提供者と顧客という関係をつくってしまっているからです。

この状況だと、来てほしいと思っている相手は決して地域の未来なんか自分事になりません。

下手すれば「で、○○町は私たちに何してくれるの?来てほしいんでしょ?」といった感覚すら引き起こしかねないと思います。主導権は完全に向こう側。

でも、果たしてそれでいいんでしょうか。私はちょっと違和感を覚えます。

Iターンはご縁がないと難しいですが、少なくとも故郷であるUターンについては、「帰ってきて!」と嘆願するかのような関係性は不健全であり、「すぐに移住しなくてもいいけど、若者にとってのこのまちがどうなったらいいかを一緒に考えよう」といった視点で、対象者を顧客ではなく、地域の当事者にする施策がもっとあってもいいのではないでしょうか。

最近は奇しくも地域への愛着を持った若者も増えてきていますが、やはり地域の顧客ではなく当事者となってもらうためには、地元を出ていく前の関係づくりが肝になると思います。

時々発信もしていますが、だからこそ人材育成・教育×地域づくりがいま最も投資すべき事業と考えています。

これらの理由から現行のUIターン施策については限界であるからこそ、これまでの人口対策の前提を変え、満足度や関係人口の増加に寄与する「コミュニティ」に力を入れ、不足しがちな地域でのプレイヤーの輩出にもつながるOターン人材を増やす重要性を提唱します。


Oターン人材とは?

調べた際にOターンいう言葉が先にありましたが、ここでいうOターンは一度地域に転職したものの、ワケあって再度都心部に再転職するものではありません。

1.「関係人口」として観光以上移住未満で住まいのある地域以外の複数地域に関わり、
2.「拠点」となる何らかのコミュニティを回遊するように行き来し、
3.情報・事例・人脈を運んで流通させ、そのコミュニティや地域を醸す人材

とここでは定義したいと思います。

Oターン人材は、住んではいませんが、その地域の問題解決を当事者として関わってくれて、そこに存在するコミュニティの成長に不可欠な情報・事例・人脈を、複数拠点を行き交いながら届けてくれる人です。

家賃などの生活コストは最低限ですが、コミュニティとの関係づくりに伴う交際費は出し惜しみはしないのでお金を落としてくれますし、新たな関係人口(もしかしたら将来的な移住者)になり得る見込みのある素敵な人を外から連れてきてくれます。
下手したらその地域の地元の若者や経営者より頼りになる存在です。

そしてOターン人材は、外で情報・事例・人脈を他家受粉させながら、仕事をして得た外貨ともいえる報酬を本拠点(住民票がある地域)に税金として一部を収めてくれます(笑)

この、外貨の獲得先が東京など大都市圏だったらかなりすごいと思いませんか。
(私はこの点はまだ十分には貢献できていませんが)

これまでだと法人単位で考え、すぐ企業誘致による工場や支社を招こうとしていたと思いますが、経済規模の縮小や人口減少を前にすると日本はもうそんな時代ではないと思います。

確かに一定の雇用は生まれますが、どこもかしこも大企業の子会社や工場ばかりになると没個性化するだけでなく、起業創業のマインドを失いベンチャーが生まれず、肝心のその地域の中小企業や人材も育たなくなります。

それでいうとOターン人材は、自分たちの利益拡大を目論んだ稼ぎ先として地域を捉えるのではなく、その地域の人たちを成長させる視点を持ち、同時にその地域の人並みかそれ以上に当事者意識をもった存在…

ITの発達によって個人がさまざまな点から出来ることが増えた現代で見れば、経済的価値だけでは測れない、外から1社を誘致するよりも大きな価値を生む一騎当千な人材も現れはじめています。

これからは企業誘致よりも容易であり、より効果的な優秀なOターン人材の個人誘致が鍵となるのではないでしょうか。


今後の人口対策の方向性

市町村レベルではなかなかいないと思いますが、都道府県レベルでは少ないながらもOターン人材は各地にいると思います。
(ちなみに私は新潟が本拠点とし、石巻、仙台、宮古、最上と時々東京を回遊しています)

こうした存在と、各自治体の方や地域のコミュニティが出会うことからがスタートだと思います。

ちなみに、先日あのカヤックが地域の移住スカウトのマッチングに使えそうなサービスでSMOUTというのを出していましたね。

そして、Oターン人材に拠点にしてもらうことが地域の人材やコミュニティの成長にもなりますが、この流れこそが10か0ではない関係人口のグラデーションになり、ゆくゆくは移住者増加になると考えます。

ミレニアル世代の若者のなかには、持ち家はリスクであり、身軽でいたいという価値観を持った方も少なくありません。

しかし地域の人のなかには、「住んでない奴はよそ者だ!」と捉える価値観もあると思いますが、まちづくりの役者を揃える視点でいえば、果たしてそれでいいのでしょうか。

一度関わってもらったら終の棲家だ!と囲い込むような考えもナンセンスです。

拠点としての居心地の良さや魅力を高めていけば、関わっていくうちに自然と本拠点にしてくれる若者が現れるのと思います。

住まいを用意し、引っ越し資金を用意し、子育て支援をして…というのももちろん必要です。

しかし、もう少し長い目で見ること、そしてUIターンのゴール=住んでもらうということを手放して考えてみると、妙案が浮かぶかもしれません。

私も旅をするように生きていたいので、新たに関係人口ならせていただける素敵な拠点は常時募集中です、ぜひご連絡をいただければ!(笑)

数多あるnoteのなか、お読みいただきありがとうございました。いただいたご支援を糧に、皆さんの生き方や働き方を見直すヒントになるような記事を書いていきたいと思います。