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『Perfect Days』

映画のPerfect Daysを家内と一緒に観てきた。
カンヌ映画祭などさまざまな賞を受賞した作品だ。残念ながらグラミー賞にはノミネートされながらも受賞を逃した。

映画タイトルである『Perfect Days』を無理に日本語訳する必要はないと思う。無理やり訳せば、”完璧な日々”、”満たされた日々”ということだろうが、それらの訳は、なんかしっくりとしない。感覚や経験が必要な単語を訳すのは時には難しい。

例えばこの映画の主人公である平山さんの数少ない楽しみの一つが、『木もれび』の写真を撮ることだ。英語にこの『木もれび』にあたる単語がない。その意味をどれだけうまく説明されたとしても、実際の”木もれび” の経験に勝るものはない。これが”Komore-bi”なのだ。

映画タイトルである『Perfect Days』は、1972年にアメリカの歌手Lou Reedが発表した『Perfect day』。
映画の中でもイントロとして、主人公の平山が朝の仕事に行く際にカセットテープの音源でこの曲が流れる。この音源があらためて聞くとなんともいえない響きなのだ。

映画全体のストーリーは、なんともないストーリーだ。あるかもしれないし、ないかもしれない話だ。役所広司演じる東京都内で公衆トイレの清掃をしている主人公が、朝起きるところからはじまって、夜寝るまでの出来事が淡々とながれる。

トイレの掃除人という仕事をもくもくとこなす主人公。単調な日々は同じように思えるが、けして一日たりとも同じ日はない。その一日一日を心底楽しんでいるというのがこの映画のコンセプトである、このタイトルにつながったのだろう。

この感想を書いている私も、もしかしたら社会から外れたひとりなのかもしれない。映画『寅さん』と同じ渡世人。それでいながら少しの自由を心底楽しむ、そんな人生も良いのかもしれない。


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