英アームの米ナスダック上場の影響と今後の展望
先日、ソフトバンクグループ傘下のアームが9月に米ナスダック市場に上場するとの記事がありました。
アームとはどんな会社なのか、これまでの経緯や今後の展望について書いていきたいと思います。
まずは記事の要約です。
記事の要約
アームとは
そもそもアームという会社はどんな会社なのか。
アームはイギリスのケンブリッジに本社を置く半導体設計大手の企業です。
アームの特徴は、半導体の設計図を半導体メーカーに提供し、そのライセンス費用をもらうビジネスモデルで収益を上げている点です。
つまり、自社では半導体の製造は行わず、アームが提供する設計図をもとに各半導体メーカーが製造する形となります。
アーム社の設計をもとにしたCPUは、スマートフォン向けでは世界シェアの約9割を握るとされています。
また、最近では、ゲーム機の「Nintendo Switch」や、アップル社の「Macbook」への搭載も始まっており、業界トップのCPUシェアを持つインテルに迫る勢いの会社です。
2016年にソフトバンクグループが買収
アームは2016年にソフトバンクグループによって買収されており、現在はソフトバンクグループ傘下の企業となっています。
当時の買収金額は約3兆3000億円となっており、これはかつてソフトバンクが行ってきたボーダフォン買収の約1兆7500億円や、スプリント買収の約1兆8000億円を大きく上回る金額となりました。
米NVIDIAへの売却頓挫
2020年にソフトバンクグループは、アーム社の全株式を米大手半導体メーカーのNVIDIAに売却すると発表しました。
しかし、NVIDIAがアームの技術を抱え込めば、事業への影響が計り知れないことを懸念した複数の大手半導体メーカーの反発にあい、売却計画は白紙となりました。
今回の米ナスダック市場への上場とその影響
アームの売上高は22年度に28億ドルと、ソフトバンクグループが買収した16年度から7割近く伸びており、アームの収益力は高まっています。
今回の上場の時価総額は600億ドル(約8兆6000億円)超が見込まれており、年内の上場が実現すれば、ソフトバンクグループにとって、ほぼ売却済みの中国アリババ集団の株式に代わる重要資産になる可能性があります。
今後の課題と展望
今回のアームの上場後も、ソフトバンクグループはアーム株の大半の保有を継続し、AI戦略の中核に据える見込みです。
ソフトバンクグループがファンドを通じて資本関係を結んだスタートアップ企業は約440社ありますが、これらの企業群とアームの連携による相乗効果について、今のところ大きな成果は出ていないと感じています。
今後、アームの半導体とソフトバンクグループが持つAIやロボティクスの技術を組み合わてシナジーが生まれるような構想が描ければ、世界に大きな影響を与えるイノベーションが生まれる可能性があると思います。
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