フェムテックはブームで終わってしまうのだろうか?今後のフェムテックに思う事
「フェムテックは今後どこに向かうのだろう?」
これは1年前、フェムテックの展示会に行った時に感じた思いです。
当時のレポはこちら
文末に
と記載したのですが、結局1年経った今でも何も変わらないままだなというのが正直な感想です。なんなら少しずつブーム終焉に向かっているのでは?と感じることさえあります。
フェムテックブームは一過性?
2018年、大丸梅田店でirohaさんが期間限定でポップアップショップをオープンされました。
「性」を堂々と扱うお店が、期間限定とはいえデパートに出店する時代になったのだと、非常に衝撃を受け、同時にこれから何かが始まるかもと非常にワクワクした思いを胸に抱いたことを今でも覚えています。
そのワクワクした予感は的中し、2019年~2020年頃にかけてフェムテックブームが日本にやってきました。
・これで女性のヘルスケア支援が変わる
・困りごとを解決する商品が出てくる
・女性が抱える様々な課題への理解が進むだろう
フェムテックブーム当初は、私自身もこんな思いを持って大きな期待を抱いていました。フェムテックブームをキッカケに女性のヘルスケア支援が取り上げられるようになり、それ伴い、社会の理解も進んでいくかのように思われました。
しかし、残念ながらフェムテックの盛り上がりは極々一部だけにとどまり、地方でフェムテックの話をしても、「フェムテックって何?」という反応の方が多いのが現実だったりします。
そしてそのような反応を示すのは決して男性でだけではありませんでした。フェムテックターゲット層である10代・20代の女性からも似たような反応が返ってきたのです。
地方までフェムテックが浸透せずに、一部に限られたブームとして収束してしまうのではないか?と今は感じています。
今のフェムテックには一時期ほどの勢いはなく、リアル店舗の閉店の話を耳にすることもあります。
フェムテックに怪しげなビジネスが乗っかる現状
私がフェムテックブーム期待したことのひとつに、企業がフェムテック事業に乗り出すことで、怪しげな女性のヘルスケア商品が無くなっていってほしいという思いがありました。
女性のヘルスケア分野は、フェムテックブーム以前から、怪しげなスピリチュアルや根拠の乏しい自然派ビジネスが蔓延していた分野のひとつでした。このスピリチュアルや自然派志向から、反医療が生み出されていたこともありモヤモヤした思いを抱えていました。
その中でも子宮系と言われるビジネスは、フェムテックブームが来る前から存在したビジネスのひとつです。妊活・不妊治療のご相談者さんの中にもこれらの民間療法に時間を費やしてしまっている人も少なくありませんでした。
しかし、残念ながらフェムテックブームで怪しげなヘルスケアビジネスが淘汰されることはなく、逆にこのフェムテックブームに根拠の乏しい商品やサービスが次々と飛びついていきました。
本来期待していたような画期的な商品やサービスが生まれることはほとんどなく、気が付けば、子宮・腟・骨盤などを謳う根拠の乏しい商品がフェムテック分野を占めるようになっていました。
「妊活には腟ケアが必要」なんてことを堂々と謳っている商品を見かけることも少なくありません。結局のところ、フェムテックブームが怪しげな商品にお墨付きを与え、余計に当事者を混乱させる市場になってしまったのではないかと感じています。
フェムテックブームに乗っかりたい企業
フェムテックの黎明期を過ぎたころから、企業もフェムテックブームに興味をもち参入が増えてきました。
ただ残念なことに何か新しい商品やサービスが開発されたのではなく、サプリメントや肌着、化粧品類など既存商品をフェムテックと銘打っただけのものがほとんどでした。このフェムテックブームには乗っかりたいが、開発費用はかけたくないという企業の思惑が見え隠れしていました。
目新しさもなければ、ワクワク感もない…そんな商品がフェムテック分野にあふれかえるようになっていました。正直なところビジネス目的だけで、本気で女性のウェルビーイング向上を考えている企業は少ないように感じます。「売り上げが上がればいい」それが本音なのかもしれません。
フェムテックに関しては、経産省が音頭を取ったこともビジネス優位になってしまった原因のひとつなのかもしれません。「フェムテックをビジネスでどのように活用するか?」というようなセミナーも多く、正直消費者が置いてけぼりになっているように感じることも少なくありません。
と同時に消費者のフェムテックに対する興味はますます薄れてしまっているのかもしれません…
フェムテックの難しさ
法規制の問題
フェムテックは本来テクノロジーを活用して、女性のヘルスケア課題を解決するというものでした。しかし、テクノロジーの開発には時間がかかります。そして日本の場合は、フェムテックが医療に関わる分野のため、法規制にどのように対応するかという問題もあります。
日本の場合、診療・治療は医師でないと行えない分野です。そのため、実際のところフェムテックだけで解決できることは多くありません。そのため、わざわざ高い費用をかけてフェムテックの商品を選択するより、医療機関にかかってしまった方が確実です。
そのような視点から企業が参入に消極的になってしまうのは仕方ないのかもしれません。
ターゲットが不明瞭
結局のところ多くの人にとって「フェムテックって何?」これが本音なのかもしれません。
フェムテックという言葉だけが独り歩きしてしまった結果、消費者にはほとんど中身は伝わらないままここ数年が過ぎてしまいました。そのうえ、フェムテックと名乗れそうであれば、何でもかんでもフェムテック市場に参入させてしまった結果、ターゲット層や商品層が広くなり、結果的に全体がぼやけてしまったようにも感じます。
そして何より、2018年、2019年頃にあった、フェムテックに対するあの尖った期待感はすっかりと消えてしまいました
もう少しターゲットや商品を絞り、あくまでも「テクノロジー」に拘った市場開発をしていれば、もう少し違う未来があったのではないかとも思うと少し残念な気持ちになります。
まとめ
フェムテックが話題になった頃、「フェムテックを通して医療と女性のヘルスケア課題を繋げるキッカケが作れるか?」と思ったこともありましたが、それは難しそうというのが今の正直な感想です。
気が付けば、フェムテックという言葉が「怪しげな商品」の代名詞になりつつあり、遠巻きに見ている消費者も多いのではないかと思います。
怪しげなイメージがつき、避ける消費者が増えれば「フェムテック」市場から撤退する企業も出てくるでしょう。このままでは一過性のフェムテックブームで終わり、「フェムテック=怪しいもの」というイメージだけが残ってしまう、そんな気がしています
それが結果的に女性のヘルスケア支援の後退につながってしまうことだけは避けてほしいと願わずにはいられません。
女性のヘルスケア支援に関する熱意が完全に終焉してしまう前に、フェムテックという広い括りではなく、月経・PMS 妊活・不妊治療 更年期 など分野ごとにターゲットを絞り、適切な医療情報と共に誰もがわかりやすい言葉で伝えていく必要があるのではないでしょうか?
「フェムテック」という言葉にとらわれるのではなく、本当に必要な女性のヘルスケア支援は何かを今一度考えなおすタイミングに来ているのだと思います。