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辛さから逃げる

私の兄は、何でもかんでも積極的にやる人だった。
小学生のころからそうで、少し年上の人がやる様な遊びや、有害図書を読んだりしていた。
長じてからも、無断外泊をしたり未成年だとイリーガルな事をして、高校を退学になったりもした。
あれから数十年が経った。
兄と会う機会がたまにあるが、何となく違和感を覚えていた。
その正体は、お酒を飲まないことだと気付いた。
昔の姿からすると、相当な量を飲まなければ辻褄が合わないのだ。
それに気づいた私は、どうして飲まないのか?と理由を聞いてみた。
すると、辛そうな顔をした後、ポツリポツリと話してくれた。

会社の同僚で、よく一緒に飲みに行く人が居た。
彼とはとても仲が良く、いつも明るいお酒だった。
そんな彼が、ある日突然自殺をした。
兄には、彼が自殺をするほどまでに思いつめている事は、見抜けなかった。
ただ、思い返すと辛い状況をお酒に頼っていたように感じた。
それ以来、お酒を飲む気がしなくなり、兄は飲酒をしていない。

彼が自殺をした原因は、私たちには分からない。
お酒を飲まなければ、やっていられないという状況で、むしろそこまでよく頑張れたのかも知れない。
しかしひょっとすると、お酒の副作用である罪悪感や自責の念が、自殺の引き金になった可能性もある。
とは、兄にも言えない。

いずれにしても、飲酒はもう止めよう、と全ての人に言いたい。

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