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マネーフォワードが「SaaS×Fintech戦略」で実現する3つの打ち手

みなさんこんにちは、マネーフォワードビジネスカンパニーCSOの山田です。

前回のnoteでは、2023年3月に開催した「ビジネス事業に関する戦略発表会」の前半にお話した「コンポーネント型ERP戦略」について、改めてnoteでもお伝えさせていただきました。

今回は、その後半にお話した、「SaaS×Fintech戦略」について書いていきます。


SaaSの提供を通して見えた課題

マネーフォワードでは、2013年より、バックオフィスSaaS『マネーフォワード クラウド』の提供を通して、バックオフィス業務のクラウド化や、業務効率化を支援してきました。

個人事業主や中小企業、士業事務所向けからサービス提供を開始しましたが、現在は中堅企業、上場企業まで幅広くご利用いただけるサービスに成長し、導入事業者数(課金顧客数)は26万を超えています。

マネーフォワードは、ユーザーによりよい価値を届けるため、継続的な機能開発とサービスラインナップの拡充を行ってきました。

しかし、ユーザー体験の最適化を実現するためには、SaaSの提供だけでは解決できない課題も見えてきました。

その一つが、「すべての業務がクラウド上でシームレスに完結する」という体験の実現です。

例えば、請求業務の場合、クラウドによって請求書の受領から会計処理まで自動化・効率化することが可能になりました。しかし、その先の送金や振込業務まではシームレスに行われていないのが現状です。

取引先への振込のためには、銀行の窓口まで出向いたり、インターネットバンキングにログインし直したりする必要があります。

インターネットバンキングから送金する際には、経理担当者が振込データを作成し、インターネットバンキングにアップロードするといった手間が発生します。

これらの作業は、手間がかかるだけでなく、データ作成時のミスによって送金先や金額を誤ってしまうなどのリスクもあり、経理担当の方にとって非常に負荷の高い業務になっています。

その他にも、今は企業にとって決済や資金調達などの手段が限られています。

例えば、設立まもない企業は、法人カードの審査に通らない、カードを作成できても利用額の枠が小さく活用できないといった課題があります。

また、融資審査申し込みの書類や手続きのハードルが高いために、資金調達ができないといった課題もあり、これらが、企業にとって事業成長の足枷になっています。

こうした課題に対して、私たちはSaaSのデータを利活用できる特性を活かし、いかにより良いユーザー体験を提供できるかということにチャレンジしていきます。

SaaS×Fintechによって実現したいこと

近年、政府による後押しもあり、多くの企業でバックオフィス業務をデジタル化・クラウド化する動きが進んでいます。

これまで請求書や領収書を紙で保存していた企業も、インボイス制度の施行や電子帳簿保存法の改正により、データで保管するケースが増えています。

紙からデータでの管理になることで、債権・債務などの情報がSaaS内に蓄積しやすくなりました。

『マネーフォワード クラウド』では、請求書や領収書の受領から会計処理までを自動化していますが、蓄積したデータの活用によって、さらにその先のFinance機能までをシームレスに実行できる世界を実現したいと考えています。

特に、非金融企業が自社サービスに金融サービスを組み込む「Embedded Finance(=組み込み型金融)」の領域に注力していきます。

SaaSの中にFintech機能を組み込むことによって、SaaSユーザーに向けた新たなFintechサービスの提供を実現していく取り組みです。

例えば、先述した取引先への振込も、企業間送金のFintech機能をSaaSに内包できれば、システム上でワンクリックでシームレスに支払まで完了することが可能になります。

また、SaaSとFintechをかけ合わせることで、これまでのスキームでは難しかった決済や資金調達も実現できるため、ユーザーの事業成長における多様な選択肢を提供したいと考えています。

具体的な取り組み

ここでは、SaaS×Fintech戦略における具体的な取り組みを3つご紹介させていただきます。

①マネーフォワード Pay for Business
②オンラインファクタリング
③送金プラットフォーム

これらの3つの打ち手で、企業の決済、資金調達、送金における課題を解決したいと考えています。それぞれについて、ご説明していきます。

①マネーフォワード Pay for Business

SaaS×Fintechでの機能第一弾として、『マネーフォワード Pay for Business』を提供しています。

『マネーフォワード Pay for Business』は『マネーフォワード クラウド』のデータを活用したFintechサービスです。

決済手段である、個人事業主・法人向けの事業用プリペイドカード『マネーフォワード ビジネスカード』は、2021年9月のサービス開始から約一年半で、発行枚数は20万枚を突破しました。

2022年7月に、「あと払い機能」をリリースしました。

「あと払い機能」は、『マネーフォワード クラウド』上の会計データや入出金情報をもとに、最短10秒で与信を判断し、利用限度額を算出しています。

これは、SaaSのデータを活用して、より利便性の高いFintechサービスを提供できた一例と考えています。

設立間もない企業や中小企業、資金調達はしているが赤字が続いているスタートアップなどでは、法人用クレジットカードの審査に通らず、法人カードを作れないケースがあります。実はこれは創業時に当社も直面した課題です。

その点『マネーフォワード ビジネスカード』は、与信審査不要でカードを発行することができ、「あと払い機能」をご活用いただければ、事前チャージ不要で最大10億円の利用限度額内でのお支払いが可能になります。(※)

(※)『マネーフォワード クラウド会計』、『マネーフォワード クラウド会計Plus』、『マネーフォワード クラウド確定申告』のいずれかをご利用の上(無料登録でも可能)、「あと払い機能」で口座振替を行う際の口座を連携した上でご利用いただけます。

特に、海外サービスなど、オンラインでのカード決済しか支払手段がないケースや、サーバー代の年間利用費、広告宣伝費などの高額決済のケースなどでお使いいただくことができます。

また、『マネーフォワード クラウド経費』と併用いただくことで、経費精算を効率化できるので、経費精算のプロセスの改善にもご活用いただければと思っています。

②オンラインファクタリング

決済に続いて、資金調達の分野でも、サービス提供を進めています。

先日、『マネーフォワード クラウド会計』と、グループ会社のBiz Forwardが提供する、中小企業向けオンライン型ファクタリングサービス『SHIKIN+』との連携を開始しました。

SaaSにファクタリング機能を組み込むことで、スムーズな資金調達を実現します。

(発表会資料より)

以前からマネーフォワードグループでは、株式会社マネーフォワード ケッサイと、Biz Forward(マネーフォワードと三菱UFJ銀行様との合弁会社)にて、オンラインファクタリング事業を提供しています。

これまで、オンラインファクタリングを利用する場合、審査をする際に様々な書類を提出する必要がありました。また、入出金明細の提出に、通帳のスキャンデータをアップロードする作業も手間になっていました。

今回、『マネーフォワード クラウド会計』と『SHIKIN+』との連携により、入出金データや仕訳データ、資産表データをもとに与信審査の申込が可能になります。

今後は、与信審査の申込だけでなく、入出金管理までシステム上で完結することを目指しています。また、『マネーフォワード クラウド請求書』等のほかのプロダクトへの機能搭載も予定しています。

③送金プラットフォーム

さらに、『マネーフォワード クラウド』上に、送金機能を組み込むことで、システム上でシームレスに送金まで実行できるプラットフォームの開発を進めています。

冒頭で触れたように、これまではシステム上で送金や支払業務を完結することは難しく、送金用データの作成・アップロードといった手作業が発生していました。

そのため、『マネーフォワード クラウド』に送金機能を内包することで、こうしたバックオフィス業務と決済業務との分断を解消し、支払まで一気通貫したサービスの提供を実現していきたいと思っています。

(発表会資料より)

その第一弾として、近いうちに『マネーフォワード クラウドBox』と『マネーフォワード クラウド給与』に送金機能の組み込みを予定しています。

『マネーフォワード クラウドBox』は、受け取った請求書をアップロードすると、内容をOCRで読み取って、証憑を電子帳簿保存法に対応した形でクラウド上に保存するサービスです。

『マネーフォワード クラウドBox』上に保存されたデータを活用することで、例えば、支払先の口座情報などを読み取って、送金プラットフォームにデータ連携し、ワンクリックで振込を実現するといったことが可能になります。

『マネーフォワード クラウド給与』においても、システム上で振込先の口座情報と紐付けて送金プラットフォームにデータ連携することで、そこからシームレスに給与振込が実行できます。とくに従業員規模が大きい企業にとっては、振込業務の手間を大幅に解消することが期待できます。

その他にも、『マネーフォワード クラウド債務支払』など、支払予定のデータを持っているサービスはたくさんあります。 順次連携していくサービスも拡充していきたいと考えています。

また、送金方法については、銀行振込に限定する必要はないとも思っています。

BtoB決済は、今の日本では銀行振込がメインですが、諸外国を見てみると、カード決済など、振込以外の多様な決済手段が増えています。

給与に関しても、デジタル払いが認められるなど、多様化が進んでいますので、今後対応を検討していきます。

請求書カード払い

請求書カード払いは、請求書を発行した売り手がカード決済に対応していない場合でも、買い手はカードで支払いが可能になるというものです。

銀行振込の場合は、支払い期日までに振込が必要ですが、クレジットカード払いにすることで、クレジットカード払いのサイクルに則って引き落とされるので、支払いまでの期間を延ばすことができ、資金繰りの改善につながるというメリットがあります。

先日、マネーフォワードケッサイより『マネーフォワード 請求書カード払い for Startups』をリリースしました。

今後は、送金プラットフォームにも、『マネーフォワード 請求書カード払い for Startups』のサービスを組み込んでいく予定です。

(発表会資料より)

具体的には、受領した請求書をシステム上にアップロードすると、送金プラットフォームからカード決済が可能なリンクが発行され、そこからカード情報を入力することでカード決済が実行される。そのようなイメージを考えています。

『マネーフォワード pay for Business』『マネーフォワード ビジネスカード』と組み合わせることで、カード番号などの入力も不要で、ワンクリックで決済まで完結することができます。

今後は、様々なFintechサービスともコラボレーションしながら、よりシームレスな決済体験を実現していきます。

給与デジタル払い

給与デジタル払いが今年4月1日から解禁となりましたが、こちらも対応していきたいと考えています。

現状、給与の支払い方法は、多くの企業で銀行振込を採用しているため、外国人労働者の方など、銀行口座を開設するハードルが高い方を雇用することが難しいという課題がありました。

また、振込は月に1回が基本でした。これは、銀行口座への振込手数料が都度かかることから、一ヶ月分を一度にまとめているためです。

給与デジタル払いが実現することで、銀行口座を持たない方にも支払いが可能になるため、企業は多様な人材を採用できます。

同時に、より手数料の安い支払方法を選択できるようになれば、日払いや週払いといった柔軟な支払いも可能になります。

『マネーフォワード クラウド給与』が給与デジタル払いに対応することで、給与計算から給与振込、さらにスマホ決済までがシームレスに完結する体験が実現し、日本全体のキャッシュレス化の推進にも貢献できると考えています。

今後に向けて

『マネーフォワード クラウド』は、会計、請求書の受領・発行、経費精算などの経理財務領域、人事労務領域、法務領域、その他バックオフィス業務の幅広い領域をカバーしていることが強みです。

こうしたサービスに溜まったデータを活用し、Fintechサービスとして還元することで、多くのユーザーに付加価値を届けていきます。
これまでのユーザーはもちろん、Fintechサービスをきっかけに『マネーフォワード クラウド』を使っていただくといった流れも今後作っていけたらと思います。

さらに、マネーフォワードグループ全体でシナジーの創出も推進します。

サービス間のデータ連携や、サービス提供を通して得られた技術やノウハウを組み合わせることで、新たな価値提供を生み出していきます。

今回、SaaS×Fintechのさまざまな取り組みについてお伝えしましたが、これらはあくまで手段で、私たちが追求したいのはユーザー体験の向上です。

ユーザーの業務変革につながるサービス提供を通して、「ビジネスを前へ。働く人をもっと前へ。」進め、日本全体の成長に貢献していけたらと思います。

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