【読書ノート】日本の地方政府――1700自治体の実態と課題(中公新書)2019.

4月に出て以降積ん読していた曽我謙悟さんの『日本の地方政府――1700自治体の実態と課題』(中公新書)読了。日本の地方政府(具体的には都道府県と市町村)がテーマ。界隈において評判が大変よろしく、期待を裏切らないおもしろさ。具体的には2つが理由

理由1 とてもよくまとまっている

地方政府は掴みづらいと印象があった。市役所・区役所や都庁、中央政府に勤務している友人等何人かいるけれども、行政組織相互の関係や仕事の内容に関する大局観をいまいちつかめずにいた(『まち・ひと・しごと創生総合戦略』の位置づけなど)。本書はかなりコンパクトにこのあたりを接続してくれ、まさにここ数年のかゆいところに手が届く1冊だった。具体的には以下のような内容が書かれており、過去の話が長すぎないのも好感を持てた。

第1章:地方政府においては、首長が強く各議員が個別利益に動くという政治的力学
第2章:地方政府における、住民・民間参加の拡大
第3章:人の移動の観点からみる、負担と受益の関係(ズレ)
第4章:地方政府間の役割分担と連携(都道府県と市町村のタテの関係、同一水準内のヨコの関係)
第5章:地方分権改革の下、中央と地方の政府の役割(カネの分配)

個人的には、市・県・都・中央省庁のキャリアや相互関係や総務省の地方交付税と、事業官庁の個別補助金の関係が興味深かった。

理由2 課題の所在や解決の方向性についてトピックも含め提示されている

終章でかなり簡潔にまとめられており(めも:終章がかなりおもしろいのでまた再読しよう)、以下のような示唆があった。
・地方議会の意思決定を支える地方における政党の必要性
・地方政府間の均質性を解決する大都市構想(都構想等)
・東京から地方への再分配となっている地方交付税のありかた
#2章はやや住民の話と民間の話および各論感が強かった
大阪都構想や、市町村合併、ふるさと納税などかなり各論ベースで世論に上がりやすい分野だけに、大局観をもって構造的な課題と解決の方向性は大変参考になった。

地方自治が民主主義の学校であれば、ある意味本書は民主主義の先生だったのかもしれない。

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