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物語における語り手の正体 第2弾

以前書いた「物語における語り手の正体」の続き、応用編です。語り手の正体をさらに分類するのでちょっと難しいかもです。

前回、語り手には物語世界の外から語る語り手。物語世界に所属しながら語る語り手の2つの種類があることを述べた。

1 物語世界に属する語り手

2 物語世界に属さない語り手

小説を読む時も、映画を見るときも我々は物語の聞き手という役割に徹する。そこでは語り手が聞き手に向けて物語を語る場が自然と生まれる。これを語りの場と呼ぶ。語りの場は語り手が聞き手に向けて物語を語る物語行為が行われる場ということだ。我々聞き手が存在することで語りの場が成り立つと思えば、聞きがいがある。


物語世界の内部にまた一つ物語が存在する場合において語りの階位が生まれる。

物語の登場人物が過去の話を語ったり、ホラー映画の冒頭で登場人物がトイレの花子さんの噂話を語ったり、名探偵コナンで犯人が分かった後、殺人の動機を語る時(犯人の過去の話)

これらのシーンは物語世界の中で物語(語られる出来事)が語られている状況。外枠を持つ物語世界の中にある埋め込まれた物語だ。


語り手が語る物語世界に所属する登場人物が物語を語る。物語の中に埋め込まれた物語が生まれることで、語りの階位が生じる。これについて分類していくと以下のようになる。

1  物語世界に属する語り手が、埋め込まれた物語に属しながら、埋め込まれた物語を語る(例:名探偵コナンの犯人)

2  物語世界に属する語り手が、埋め込まれた物語には属さずに、埋め込まれた物語を語る(例:都市伝説や噂話)

3 物語世界に属さない語り手が埋め込まれた物語に属しながら、埋め込まれた物語を語る。

4 物語世界に属さない語り手が埋め込まれた物語に属さずに、埋め込まれた物語を語る


1、2について

物語世界に属する語り手(登場人物)が登場人物に向けて、埋め込まれた物語を語るので、物語世界の中で語りの場が生まれる。語り手の語る物語の中で語り手が語っているので、語りの階位が生じる。それと同じ要領で聞き手の階位が生じている。聞き手が受け取っている物語世界の内部にさらに聞き手がいるということだ。つまり段階的になる。


3、4について

物語世界に属さない語り手(神の視点を持つ語り手)が埋め込まれた物語を語る場合、神の視点を持つ語り手は物語世界に介入しないので、物語世界内において語り手によって語られる埋め込まれた物語の聞き手の役割を持つ存在はいない。では埋め込まれた物語の語り手の聞き手は?それは我々読者だ。聞き手の階位が生じることはなく、物語の聞き手も埋め込まれた物語の聞き手も最も外に位置する読者が同時だけがこなす。

1、2、3、4 どれにおいても我々読者は外枠の物語の聞き手であり、埋め込まれた物語の聞き手であることに変わりない。


紙芝居を生業とするおじさんも子供たちが1人も見てくれないと、やりがいなんてないし、お笑い芸人だってコントの観客が0人だったら辛すぎる。ベストセラーを生み出す小説家には敵わないけど、我々読者がいたからベストセラーになった。受け取り手がいないと物語は語られないまま終わってしまう。

ページを捲ると物語が始まる。冒険が始まる。

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