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【音楽ストリーミングの新時代】アーティストのニーズに合わせたデジタルサービス"FRIENDSHIP." って何?

2019年5月にスタートしたデジタルサービスFRIENDSHIP.が、今月でちょうど1年という節目を迎えるにあたり、良い機会なので「FRIENDSHIP.とは何なのか?」を一度まとめてみようと思います。デジタルリリースを考えているアーティストやレーベル、マネジメントの方々にもFRIENDSHIP.という存在を改めて知ってもらえればと思い書かせてもらいます。何か心に感じるものがありましたら、ぜひご一緒出来ればと嬉しいです。

まずFRIENDSHIP.の構想ですが、実は2017年くらいから頭の中にありました。僕がマネージャーを担当しているThe fin.がロンドンに活動拠点を移したタイミングで、現地の音楽関係者と話をする機会が多くあり、そんな中で「The fin.のUKでのレーベルを探してるんだけど」という話をしたところ、多くの方から「ディストリビューターと組んでアーティスト主導で活動した方が良いよ」というアドバイスを受けたのが最初のきっかけでした。

その当時すでにUKではパッケージが売れなくなり、音楽ビジネス自体がデジタルを中心に回り始めていて、インディーズのリリースサイクルがレーベル主導からアーティスト主導へと変わってました。アーティストを中心として、ディストリビューション、PR、ラジオプラガー、パブリッシング(シンクロ)、ブッキングエージェント、マネージャー(ロイヤー)といったチームを作って動いており、そこから大きくなったアーティストは、ソニー、ワーナー、ユニバーサルなどの3大メジャーやDomino、4AD、Rough Tradeなど老舗インディーレーベルと契約するといった流れのようなものがありました。

日本ではまだCDなどのパッケージビジネスが主流ですが、セールスは確実に減少傾向にあり、特にインディーではパッケージのセールスが減り、予算を割けなくなったレーベルが売れるものを中心に扱うといったケースも増えてきてます。

しかしデジタルというフォーマットを軸に考えると、デジタルには国境がなくCDなどのフィジカルでは届けられなかった人へ、距離や時間の制約もなくリアルタイムにリーチすることが可能です。そして日本で100万回再生されることが難しい楽曲でも、グローバルな視点で見ると世界で100万回再生される可能性のある楽曲もたくさん存在してます。「カッコイイけど売れないよね」という言葉をよく耳にしますが、埋もれてしまうのは絶対に勿体無いですし、そんなカッコイイ音楽たちを世界へ広げていくサポートが出来ないかを日々考えてました。

そしてその考えついた先が、日本でも世界的な潮流にならい、デジタルを軸にアーティストが中心となったインディーレーベルの新しい形に行き着き、デジタル・ディストリビューションとプロモーションが一体となったサービス"FRIENDSHIP."が誕生しました。


まずFRIENDSHIP.とは?

・39の音楽ストア/サービス・187の国と地域に配信
・固定費なしで収益の85%がアーティストへバック
・14人のキュレーターにより音楽をセレクトし、プロモーションまで行う
・海外PR、海外ブッキング、CDやマーチャンなどサポートも可能
・人と人との繋がり(FRIENDSHIP)を大切に

FRIENDSHIP.は、HIP LAND MUSIC内で2019年5月にローンチしたデジタル・ディストリビューションにプロモーションが備わったサービスになります。

録音から配信までは誰でもそれなりに可能になっている状況ですが、ただ出すだけではどうしても埋没してしまい、そこをうまくフックアップできるようなサービスを構築できないかというのが発想の原点です。シンプルに説明すると"良いと思った音楽をセレクトし、責任を持ってプロモーションまで行う"というのがFRIENDSHIP.のサービスの基本となります。

配信プラットフォーム

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現在は39の音楽ストア/サービス・187の国と地域に配信を行ってます。ワールドワイドで配信可能なプラットフォームとしてはSpotify、Apple Musicなどを始め、中国のQQ Music、NetEase、Xiamiなど3大プラットフォームもカバー。また今後では中東のAnghami、インドのJioSaavn、アフリカのBoomplayなどの音楽ストリーミングサービスにも順次配信スタート予定です。

■ワールドワイドサービス
iTunes / Apple Music / Google Play  / Google Play Music  / YouTube Music / KKBOX / Spotify / Amazon デジタルミュージック/ Amazon Prime Music / Amazon Music Unlimited / Deezer / Deezer HiFi / TikTok / Facebook / Instagram / Pandora / Pandora Premium / Anghami / JioSaavn / Boomplay

■日本国内サービス
ドワンゴ / オリコン / OTOTOY / Music.jp / Mora / LINE MUSIC / フェイスワンダーワークス / コナミ / AWA / うたパス / レコチョク / dヒッツ / Rakuten Music / Mu-mo

■中国
NetEase Cloud Music / QQ Music / Xiami

■ハイレゾ配信
OTOTOY / E-onkyo / Mora / GIGA music / Music.jp

■配信予定サービス
TIDAL

キュレーターによるフィルタリング

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アーティスト、DJ、ライブハウス、レーベルオーナー、アパレルショップのオーナー、Webメディアの編集長、ライターなどそれぞれの分野の最前線で活躍する14名のキュレーターがおりまして、公式サイトにSubmitされた配信希望の音源をキュレーターによってフィルタリングし、責任を持って世界に届けたいと判断された音源のみをサポートするというシステムになります。もちろんレーベルやマネジメントに所属しているアーティストのディストリビューションも行っており、同じようにキュレーターのフィルタリングを通してリリースしていきます。

■キュレーターリスト
タイラダイスケ (FREE THROW)
Yuto Uchino (The fin.)
井澤 惇 (LITE)
青木ロビン (downy)
MONJOE (DATS)
奥富 直人 (BOY)
片山翔太 (下北沢BASEMENT BAR)
金子 厚武 (ライター)
溝口 和紀 (NewAudiogram)
亀井 達也 (Hot Buttered Record)
Mizuki Masuda (miida)
Lu Jin (BYNOW/Charisma Tanuki Production)
JE Cheng & Keitei Yang (東京兜圈 Megurin’ Tokyo)

以下の記事は、配信希望の音源をキュレーターのみんなで聴いている視聴会の模様です。その他に配信アーティストとキュレーターの交流会や、配信アーティストを対象にしたInstagramのスタッフを招いたSNS講座、著作権講座などの音楽セミナーの模様も掲載されてます。

こちらはキュレーターのタイラダイスケ(FREE THROW)とYuto Uchino(The fin.)による対談記事になります。

機能とサービス

ではここからは具体的なFRIENDSHIP.の仕組みとサービスについて説明していきます。

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基盤となるデジタル・ディストリビューションにおいては、固定費なしで収益の85%がアーティストバックされます。この15%の手数料内にベーシックのプロモーションが含まれてます

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プロモーションに関してですが、まず音楽プラットフォームへバナー展開のアプローチやプレイリストへのプロモーションを行います。またHIP LAND MUSICと取引のある各種媒体、音楽サイトへのプロモーションも行います。

またFRIENDSHIP.独自のプレイリストでも、楽曲のプロモーションを行っていきます。ニューリリースやレコメンド楽曲を紹介するプレイリスト"Curated by FRIENDSHIP."を始め、各キュレーターの個人プレイリストでも楽曲を拡散していきます。

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その上で、アーティストやレーベル、マネイジメントのニーズにより、TVやラジオなどの個別プロモーションや楽曲の出版管理、海外ライブのブッキング、マーチャンダイズの製造サポート、CDの製造や流通のサポート、審査が必要になりますがFRIENDSHIP.で出資したレコーディングサポートといった各種のオプションが用意され、アーティストはそれらを必要に応じて利用できるようになっております。

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世界各地のエージェントやPR会社などとのパイプを使い、海外ライブ実現のために現地のプロモーターに繋ぐといったことも可能で、海外ライブはFRIENDSHIP.にとって日常業務の延長上にある選択肢のひとつと考えています。

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今年の3月に開催予定でしたアメリカ、テキサス州オースティンで毎年開催されている音楽フェスティバルSXSW Music Festival内で、FRIENDSHIP.、TuneCore Japan、Spincoasterの3社がPRESENTERとなり、“TOKYO”というキーワードを通して、日本やアジアの次世代アーティストを紹介する「INSPIRED BY TOKYO」というOFFICIAL SHOWCASEを主催しました。FRIENDSHIP.からはThe fin.、Wez Atlas、VivaOlaの3組が参加予定でしたが、今後もこのように海外への活動サポートも行えればと考えております。

開催への思いなど、TuneCore Japan野田さん、Spincoaster林さん、僕の3人による対談記事がSpincoasterに掲載されておりますので、こちらもぜひ読んでみて下さい。

このようにデジタル・ディストリビューションの先に、強力なマネジメント機能がバックグラウンドで稼働していることは、HIP LAND MUSICによるサービスならではの特徴であり、また今後はデジタルリリースの先に一緒に原盤を作ったり、将来的にマネジメント業務を行ったり、それぞれのアーティストの意向に沿って臨機応変に活用してもらえるメニューを揃えて、新しいアーティストを積極的に支援していければと思ってます。

どんなアーティストが使っている?

これまで全694タイトル、2143曲をリリースしております。(2020年12月1日現在)

■主な配信アーティスト
avengers in sci-fi 
the band apart 
bonobos
Cody・Lee(李)
DALLJUB STEP CLUB
DENIMS
downy 
evening cinema
FUNKIST
HAPPY
Helsinki Lambda Club
HHMM(日向秀和×松下マサナオ)
James Tillman
Keishi Tanaka
LIGHTERS
LITE
Mark Diamond 
michel ko
Nothing's Carved In Stone
Ivy to Fraudulent Game
odol
Ochunism
Ropes
SEAPOOL
She Her Her Hers
skillkills
The fin.
This is LAST
VivaOla
Wez Atlas
Yasei Collective
YAJICO GIRL
カネコアヤノ
さとうもか
タケトモアツキ
ハルカトミユキ
ユアネス
ユレニワ
んoon
小袋成彬
江沼郁弥
世武裕子
東郷清丸
永原真夏+SUPER GOOD BAND
ゆうらん船
揺らぎ
踊ってばかりの国
and more...

その作品の中から、いくつかPICK UPしてご紹介します。

The fin., 小袋成彬 / COLD

ロンドンに拠点を置くThe fin.と小袋成彬とのコライト作品。実際にロンドンのスタジオでレコーディング、ミックスまで行いリリース。Spotify UKのプレイリストNew Music Fridayや、Apple MusicのPICK UPバナーに掲載されるなど国内外で話題となりました。作品の制作秘話や日本とロンドンの制作や環境の違いなどについて話されているYuto Uchino(The fin.)と小袋成彬の対談記事もありますので、気になった方はぜひチェックして下さい。


Wez Atlas, VivaOla, Jua / Vise le haut

実際にSUBMITページより送られてきた音源をキュレーターが視聴し、全員一致でリリースすることに決めた作品です。Wez Atlasはアメリカ、VivaOlaは韓国、JUAはフランスとカメルーンにもルーツを持つアーティストで、これまでの日本人アーティストとは明らかに異なる視野の広さやセンスが感じられます。先ほども紹介したSXSW「INSPIRED BY TOKYO」にはWez Atlas feat. VivaOlaという形で出演予定でしたが、無名の新人アーティストがデジタルリリースのみで、それも1年以内にアメリカのフェスティバルへ出演できるというのが、今後の海外進出の1つのモデルケースになるのではと思います。またWez AtlasとVivaOlaはアーティストコレクティブ"Solgasa"を主宰しています。

YUI(FLOWER FLOWER),ミゾベリョウ(odol) / ばらの花×ネイティブダンサー

こちらはYUI(FLOWER FLOWER)とミゾベリョウ(odol)によるサカナクション「ネイティブダンサー」とくるり「ばらの花」をマッシュアップ曲です。JR相鉄線「100 YEARS TRAIN」企画で制作された楽曲をFRIENDSHIP.でリリースしました。ラジオチャートではJ-WAVEでは6位、FM802では2位にランクインするなど話題となり、すでにSpotifyやApple Musicなどで300万回以上再生されてます。

その他、音楽&カルチャーWEBメディアSENSAにてFRIENDSHIP.のアーティストが特集された企画記事がありますので、もっと知りたい方はこちらもチェックしてみて下さい。

■FRIENDSHIP.配信アーティスト Movie紹介 Vol.1 

■FRIENDSHIP.配信アーティスト Movie紹介 Vol.2

■FRIENDSHIP.配信アーティスト Movie紹介 Vol.3


最後に

長々と読んで頂きありがとうございました。ここまで色々と書きましたが「いったいFRIENDSHIP.とは何なのか?」ということについて、最後に少しだけ書かせてもらいます。

デジタルは目に見えなく、形がないものになります。どうしてもアーティストとのやり取りもフォームやメールだけになりがちで、実際に一度もお互いの顔を合わせなかったり、声を聞かないままリリースすることも可能になります。人を省こうと思えばいくらでも省けてしまう、それが現在のテクノロジーであり、自分たちもその恩恵を受けながら生きてます。

そんな中、FRIENDSHIP.ではアーティストが時間と労力をかけ作った作品を、責任を持ってリスナーの元へ届けるために、アーティストと必要であれば何度でも直接会って、一緒に話し合いながらリリースプランを考えていき、その作品のリリースとプロモーションを受け持っていきます。その結果ですが、初期の構想ではディストリビューターとレーベルのちょうど中間くらいのスタンスを目指してましたが、実際にFRIENDSHIP.をスタートすると、従来のレーベルの形を超えた新しいコミュニティのようなものが生まれ始めているように感じています。

FRIENDSHIP.を一言で表すと人と人との繋がりを大切にするサービスです。人間としての基本のような言葉ですが、これが全てだと思います。デジタルというフォーマットを使用して、アーティストとアナログに繋がっていくようなサービスを目指してこれからも素晴らしい音楽、新しい才能をサポートしていければと思ってます。






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