kazutomi

理工系の私大准教授を経て独立し、現在は研究執筆などを行なっています。政治・経済・社会の…

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理工系の私大准教授を経て独立し、現在は研究執筆などを行なっています。政治・経済・社会の難しい問題を解きほぐして誰にでも分かるようにすることで、問題の解決に貢献したいと思っています。元気で豊かな明るいこの国の暮らしを取り戻しましょう。日本租税理論学会会員。博士(工学)

最近の記事

カネ思考の呪い

私は理論屋なので、いつもは経済の理屈ばかり話してるんですが、このノートではもうちょっと感覚的な話をしてみたいと思います。一番伝えたいのは、私たちがみなカネ思考に陥っているために、貧しくなる選択をし続けている、みたいなことです。 無意味な対立日本の社会について、あるグループ間の経済的な対立が言われることが多くなったように思います。早くから言われていたのは、いわゆるブラック企業で、経営者が従業員をこき使う的な話です。従業員はできるだけ給料がほしいけれど、経営者は逆に人を安く使い

    • 消費税は中立か?

      消費税制度では、仕入に対しては税額控除があり、人件費支払等にはそれがないため、企業は人件費支払よりも仕入を選択しやすいだろう、つまり消費税は企業の経済活動について中立ではないだろう、と私は考えています。 これに対し、仕入に税額控除があるのだから、例えば仕入への110円の支払は賃金への100円の支払と同等であり、この2者を比べると最終的な利益は同じなので、企業の行動は変わらない(つまり中立である)という反論をもらいました。本稿では、この2つの見方の対立について検討し、やはり消

      • 理系のための「消費税は完全に企業によって支払われている」ことの説明

        普段、一般の方々や経済分野の人々向けにこれ↑を説明しているのですが、形式的手法が通じなかったりしてなかなか伝わらずつらい思いをしているので、気をとり直すために理系的な言い回しで説明するノートを書いてみます。理系な人は世の中に半分くらいいるんじゃないかとも思うし、その多くに伝われば状況も改善に向かうかも、という期待を抱いたりもしています。 税とは 税の支払いとは税の主目的は、政府の経費を賄うことである。具体的には、政府が、自らが必要とするものを市場(しじょう)で買うために、民

        • 「消費税」と認知バイアス

          認知バイアスとは、人間が共通に持っている、物事を判断する際のくせのようなものです。そのせいで誰もが、特定の物事に対して、同じような判断をし、それはときに非合理です。 このノートでは、消費税が「消費」税に――つまり消費者が払っているように――誰の目にも見えるのは、この認知バイアスのせいだろうということを説明します。 簡単な認知バイアスの例認知バイアスを体感してみましょう。次の質問に直感的にパッと答えてみてください。 ・アイスクリームと飴玉は合わせて110円です ・アイスク

        カネ思考の呪い

          消費税は「別の財源」ではありません。

          消費税は高齢者や子供からも税を取り、所得税や法人税とは別の財源であって社会保障に役立つと思われています。 でも残念ながらそれは誤解です。消費税は法人税(そして事業所得税)と同じところから税を取っていて、財源として別ではありません。このノートではそれを説明します。 税ってどんなもの? 政府が税を取るのは、政府が何かを買うとか、それを給付された人が何か(医薬品とか)を買うのに使うためです。 いま仮に、老人には医療費が100%保険で給付されるとし、若者は100%自己負担だとし

          消費税は「別の財源」ではありません。

          消費税の負担についての、とある会話。

          長い文は読むのが面倒くさい、という人のために。 「いま消費税がなくて、ある商品の価格が100円だとする。」 「はい。」 「10%の消費税が導入されて、すべての商品が10%値上がりしたとする。消費者は値上がりした商品を買う時に、その値上がり分を消費税として負担するんだよな。」 「そうですね。」 「さっきの商品の価格は110円になる。これをひとつ買う消費者は、10円を税として払うことになる。」 「そうです。」 「消費税がない時に110円のお金を持っていた消費者が、消

          消費税の負担についての、とある会話。

          消費税のおかしさをファミレスのドリンク券で理解する

          消費者は〈値上がりによる資産の目減り〉を〈消費税の負担〉だと誤認するのだ、と以前に説明しましたが、資産の目減りとか実質的な価値とかがピンとこない方のために、もう少し感覚的にわかりやすい例で説明してみます。 物の「お役立ち度」 私たちがなぜ物を所有するかというと、その物が何らかの意味で自分の役に立つからです。米を所有するのは、それを食べると生きていけるからで、好きなアーティストのCDを所有するのは、それを聴くのが楽しいから、とかでしょう。 そのように所有している物が手元から

          消費税のおかしさをファミレスのドリンク券で理解する

          お金の価値は1つの数字で表せない――専門家が見る「間接税」の錯覚

          消費税は間接税と言われているけれど、「間接税」は錯覚であって実際には存在しない、ということを、こちらのノートで説明しました。その重要な意味は、消費税は所得税や法人税と同一の財源だということです。消費税を強化したところで、社会保障も財政収支も改善しません。私たちが消費税で苦しんでいるのは、まったくの無駄なのです。 同様の内容を専門家に伝えたところ、次のようなやりとりになりました(実際には専門用語を使っています)。 私:ある商品(リンゴとする)の売り手に10円の税が課され、リ

          お金の価値は1つの数字で表せない――専門家が見る「間接税」の錯覚

          「間接税」は錯覚です。

          「直接税(直税)、間接税(間税)という分類は、租税の分類の中で最も古く、財政学のいまだ存在しない時代に現れ、租税体系のいまだ構成されない時代にその起源を有し、その後も財政学において論争されてきた。しかし、従来の説明をもってしては、矛盾と不明確な点があるにもかかわらず、実際を支配し、慣用されている。」――― 高木勝一(編著)『租税論』、八千代出版(2011年)、10~11ページ このノートでは、「間接税」というものは現実には存在せず、そう見えているだけのものだと説明します。そ

          「間接税」は錯覚です。

          違法ダウンロードを検討されている議員の先生方へ

          お疲れさまです。いつもありがとうございます。違法ダウンロードの問題について、2点ほどご意見申し上げたく存じます。 ・議論がまとまらない主原因は、議論の筋道が自由主義から外れているためと思われます。 文化庁の報告書などを見るにここまで、著作権を守るためにはどの種のダウンロードまで許容されるべきかという視点で検討されており、そのダウンロードの正当性を理由付けられるかどうかで判断しようとしているように見受けられます。そのため、ある種のダウンロードが十分に理由付けられず正当性に疑

          違法ダウンロードを検討されている議員の先生方へ

          間接税が間接税に「見える」ワケ

          消費税やガソリン税などの間接税は、買う人が負担すると思われていますが、実はそれは錯覚です。左側の絵は錯覚を起こす有名な図で、水平な線の長さは同じです。同じだと言われても、どうしても下の方が長く見えますよね。横についているヒゲのせいです。 でも、右側の絵のように縦に線を引くと、それが物差しになって、同じ長さだとわかります。このノートでは、この縦線のように、間接税の錯覚を払拭できる物差しを与えてみます。 間接税とは商品を売る人に税を課したとき、売る人は商品を値上げして、買う人

          間接税が間接税に「見える」ワケ

          なぜ「ダウンロード権」は人権なのか

          著作権法の改正による違法ダウンロード範囲の拡大に対し、さまざまな方面から激しい反対が起きています。その反対の多くは、「適用範囲が広すぎるためにネット利用が萎縮すること」を理由にしているようです。 しかしこの反対理由は、問題の本質を少し外しているように思えます。国民にとって、真に問われるべきことは「ダウンロードする権利を、著作権がどこまで制限していいか」ではないでしょうか。「著作権という権利をどう守るか」という視点からは、この本質は見えないと思われます。 そして、ダウンロー

          なぜ「ダウンロード権」は人権なのか

          給料がもっと欲しければ消費税に反対しよう。

          あなたが今の給料に満足いかず、転職も簡単でないなら、まずは消費税に反対した方がいいでしょう。一見、無関係に思えるでしょうが、消費税はあなたの給料を上げさせない元凶です。 事実。消費税が導入されてから給与は下がり続けている。グラフを見れば一目瞭然です。景気による変動はありますが、給与上昇が鈍り、さらに下降に切り換わったのと、消費税導入や税率引上げの時期は一致しています。 企業は消費税を節税するために人件費を削る。企業が納める消費税額は原理的に 納税額=(年間の売り上げ−年

          給料がもっと欲しければ消費税に反対しよう。

          輸出戻し税は益税ですよね。

          改訂版の出版のため、このノートは公開を終了しました。新版は以下からご利用いただけます。 https://www.amazon.co.jp/dp/B07DBZDH9Y/ (以下、旧版の最初だけを掲載します) 「輸出戻し税は益税だ」という印象論に対して、消費税の計算方法に従っているから益税ではないとする説明があります。このノートでは、その消費税の計算方法こそが益税を生み出していることを説明します。ポイントは以下の通りです。 ・税とは国民から政府への財産の移転で、還付はその

          輸出戻し税は益税ですよね。