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ファクシミリって、FAXのことなんだけどさ

「まだFAX使っているんだ」と言われるようになった昨今ですが、その歴史はとても古く電信が発明されてまもなく電話が発明されるよりも早く発明されました。

ファクシミリ

電信って何のことだかもうわからないかもしれませんが、大雑把に言えば文字をコード化された信号に直して無線または有線で遠方に送ることで、ファクシミリは画像を何らかの信号に変換して同じように送る仕組みです。今で言えばテキストファイルを送るか画像ファイルを送るかみたいな違いです。

画像ですから情報を取り込む装置も大変ですし、情報量が多いので電信に比べれば送るのに時間がかかるのは想像できると思います。このため情報を送るという意味では、電信の方が遥かに効率が良くアルファベットをコード化するだけで済む欧米諸国では、どうしても画像をおくる必要があるときのみに使われる特殊なもので、電信を効率よく送ることが出来るテレックスというサービスのほうが一般的でした。

日本では漢字がコード化されるのはだいぶ後になってからですし、電信であってもカナ文字で送る必要があり、電報も基本的にはカナしか使えませんでした。このため手書きの漢字がそのまま画像として送れるファクシミリは特に書類をやり取りする必要のあるビジネスシーンでは重宝され、ネットが普及する以前はオフィスには必需品となっていました。

はじめてFAXを使うようになったのは1980年頃ではないかと思います。当時のFAXはアナログ回路のカタマリですから受信したデータをその場で直ぐに出力する必要があり、インクリボン切れを嫌って感熱紙を使っていました。ロール紙として用意されている感熱紙に受信データを目に見える形にして、1ページ毎に派手なカッターで切り離されて出力されていました。大きさはレーザープリンタくらいのサイズだった気がします。もちろん通信が自由化される前ですからFAXを使いたければ電電公社にサービスを申し込んで、専用の電話番号をもらって公社認定の機器を設置してもらうのです。確かキヤノン製だったと思います。

FAXでデータを送受信するプロトコルはGで始まる数字で表され、最初の機種はG1/G2の選択スイッチがついていて送信時にどちらをつかうか選べたと思います(受信は自動切り替え)。ここまではアナログ的な処理でしたが1980年に制定されたG3と呼ばれるデジタル技術を活用できるプロトコルが使われるようになり(普及には数年かかったかな)、画像も精細化され送信にかかる時間もそれなりに短くなったので、この辺りから急速に普及しました。家庭向けにミニファックスというローコストなA5を送受信できる装置もありましたね。

FAXを送る時に聞こえてくる「ピーポージャー、ビリビリ」という音は、このプロトコルのネゴシエーションをしている音で、プロトコルが決まると音が聞こえなくなり送受信が始まるわけです。通信が自由化されるとFAXも手軽に導入できるようになり、パソコンなんか無くても手軽に文書を送受信できる装置として企業でも家庭でも使われるようになりました。

普通は文書なり画像なりを送りたい側が、装置に紙をセットして電話番号を入力して、その番号に接続されている装置に送るのですが、ポーリング受信という機能があって、かけた先にある装置に蓄えられているデータを相手に送らせる機能があります。これを使って情報を取り寄せるというサービスが、それなりに使われた覚えもあります。商品一覧を取り寄せ、最後に付いている申込書に記入して送り返すと、商品が注文できるという、まだインターネットどころかパソコン通信も普及していない時代から、ネット通販のようなサービスがあったのです。

家庭向けには専用の番号を用意するのは負担が大きかったので、通話と自動的に切り替える機能も一般化し、留守番電話とも統合された装置が増えました。パソコン通信が始まると通信とFAXは親戚みたいものですから、モデムにはFAX機能も含まれるようになり、パソコンでのFAX送受信も出来るようになりました。通信がデジタル化されてからもアナログなプロトコルのFAXは廃れることはなく、IP通信の上にアナログな信号を流して今でもFAXは生き残っているわけです。

ひとつの電話線の上に通話や通信を載せて切り替えて使うわけですから、思った以上にいろいろな設定や調整は難しく、FAX固有のいろいろな機能をきちんと使いこなすのも面倒なものがありました。送る方はまだ良いのですが受ける方は、どのタイミングでどう切り替えるように設定するかで、うまく受信出来なくなってしまうことも多く、なかなか手間がかかりました。

という訳でFAXは電話が通話するものから、いろいろなサービスを提供する通信という世界に(少なくとも日本では)最初に踏み出したデバイスなんだと思います。インターネットの普及ですっかり影が薄くなってしまいましたが、いろいろなサービスが開発され、きちんと使えるようにするにはアレコレ設定が必要だというのも、ここから始まったような気もします。もう何が大変だったのかを知っている人も少なくなりそうなので、そういった苦労話もそのうち書いてみますか。

ヘッダ画像は、以下のものを使わせていただきました。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Philips_magic2memo_Fax_machine.jpg
CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=106781

#ファクシミリ #FAX #ファックス  #通信 #プロトコル #通信サービス #電話

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