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魔々勇々1巻 先の展開のネタバレなし感想【コミックス派の人も大丈夫!】

※2月22日追記
◆まとめの手前に、おまけ部分についての感想も加えました。

コミックス派の人がネタバレを避けて感想を漁るのが難しい世の中です。
この記事は魔々勇々1巻の内容についてのみのレビューです(今後更に面白くなる!くらいは言いますが)。
安心して記事を読んでください。

ジャンプ本誌勢なのでもっと先の展開も知っていますが、改めて1巻掲載話を通して読むと味わい深いものがあります。
各話のリアルタイム感想は末尾にリンクを貼るので、1巻の総合的な感想を「第1話がすごすぎる」「キャラの魅力」「心情描写」の3つの魅力から語っていきます。
おまけページ感想は最後にまとめて。

◆魅力1 第1話がすごすぎる

※ジャンプ+で見られる第1話と2ヶ所ほど台詞が変わっているコマがあるのでコミックスを買って探してみましょう

ボイコミまで見て改めて思いましたが、第1話の完成度が高すぎる。
①勇者コルレオ、魔王マママのいる平和な世界に突如現れた勇者エヴァン、魔王エンドの文字どおり別次元の圧倒的異世界感と強者感は、壮大なファンタジーを予感させるのに十分です。
②そんな世界観の中、独特なコマ割と心を鷲掴みにされるような表情に最低限の文字を加えた緻密な心情描写は、第1話にして「この漫画でしか読めない」という貫禄があります。
個人的には、②の心情描写という一点においてはジャンプ連載陣の中でもNo.1だと思っています。

圧倒的な強さと引き換えに人間性を失ったかのように見えたエヴァンが見せる、人間臭い弱さ。
「生まれてこなければなどと 二度と言わないでくれ」という言葉を、悲しみのあまり強い口調でいえないマママの心情を台詞の小ささやコマ割で強調する表現の妙。
これらの繊細な心理描写を、
・異形の魔王とそれに殺される主人公コルレオ
・そのコルレオに思い出させてもらった勇者の志を自らの命と共に吹き込み蘇生させるエヴァン
というダイナミックな展開の中で描き出す。

なんだこれは。
気軽に立ち読みしたジャンプで俺は何を見せられているんだ(当時の感想)。
最終ページのタイトルコールで鳥肌が立つほどの感動を覚えたのは私だけではないはずです。
ややジャンプ離れし、電子版の定期購読をやめていた私は定期購読を再開しました。
今でも英断だったと思っています。

1話がすごすぎて、1巻掲載話全体を見通すと①の壮大なファンタジーの強さがまだ出し切れていない側面もあるかもしれませんが、それは裏を返せば後述するとおり魅力3の心情描写がその分がっつり出ているということに他なりません。
安心してください。2巻以降も1話で引き込まれた人をがっかりさせるような漫画ではありません。
2巻の更なる加速に度肝を抜かれること間違いなしです。

◆魅力2 キャラの魅力

キャラの魅力の引き出し方が恐ろしいほどにうまい漫画です。
1話でマママ、エヴァンが出てくる時点でキャラの魅力はストップ高なのに、そのマママを一度フェードアウトさせたかと思えば「生きがいになってくれませんか?」などという洒落にならないインパクトの台詞を引っ提げて現れるエリシアというヒロイン。
明るいドジっ子のように見せて、登場時点から想像以上に重い過去を持つことをほのめかし、それでも俯かない姿は少年漫画のヒロインそのもの。
そしておまけページがかわいすぎる。コミックスを買って本当に良かった。
この先も新たなキャラが登場するたびに楽しませてくれるんだろうと1巻の時点で確信できます。

確信はしたものの、まさかその巻のうちに「罵り系アイドル魔王」という、属性だけでおなか一杯になりそうなキャラまで出てくるとは誰も予想できなかったのではないでしょうか。
1巻最終話で登場し、師匠的な貫禄を見せつつ、アイドルという属性にぴったりの綺羅綺羅星という紋章術まで見せてくれたミネルヴァは、通常7話で終わりがちなジャンプコミックス1巻に8話まで収録されていることを納得させてくれるパワーがあります。

・コルレオ:レベル1

ここまでコルレオ単体には触れていませんでしたが、私がこの漫画で一番好きなキャラはコルレオです。
勇者といえばRPG。そして、RPGの勇者は普通最初はレベル1です。
コルレオも同様に、昨今の漫画では考えられないくらい弱いところ、まさにレベル1から物語が始まります。
なんとコルレオは1巻では「殴る」「蹴る」「投げる」以外の攻撃をしていません。
必殺技を撃たない主人公。

では何が魅力かというと、自分の弱さをさらけ出すことに躊躇がなく、どんなときでも相手を理解するために対話の姿勢を崩さない善者性、そして武力としての強さがなくても他者を守るためならばどんな敵にも立ち向かえる勇者としての心の強さです。
弱い時からこういった芯がしっかり通っているからこそ、このコルレオが強さの面でも成長したときに、どんな活躍を見せてくれるのかを楽しみにできるのです。
「俺は戦った事ないからすごく弱い」エリシアの心を開き、信用できなくてもまずエスカバに対話を求める姿勢は、強さとは関係ないコルレオの美点です。

◆魅力3 心情描写

第1話での心情描写については既に語りましたが、以降も表情やモチーフ、端的な台詞を使った心情描写は、本質的なメッセージは読者に伝えつつ、一部を読者の想像に委ねるという絶妙な塩梅で提供されます。
個人的には
・3話のサブタイトルにもなった「蛇口と雛鳥」をモチーフとして使用したコルレオの巣立ちの心情描写(各話感想で真面目に考察しました。)
・5話でエリシアが敵と向き合う決意をしたことを、「ありがとね」の台詞を敵の目玉に重ねエリシアの視線がコルレオから敵に移ったことを明示することで伝えた一コマ
・7話の体の痛みだけではなく信頼を裏切られた心の痛みも合わせて一言に乗せる「痛い」という台詞と表情
あたりが大好きです。

・コルレオの決意

第3話までかけてじっくり描かれたコルレオの旅立ちの決意。
私はこの3話でどっぷり魔々勇々にはまりましたが、アンケート至上主義のジャンプ連載で派手な必殺技を使わずにコルレオの内面にフォーカスしたこの展開はかなりリスキーでもあります。
しかし、この骨太なプロローグにはそのリスクを取るだけの価値があったと思っています。

平和な世界に育ち優しい心を持つコルレオ。
震えたり怯えたりする姿から、この主人公は本来争うこと、戦うことが苦手なこと伝わってきます。
しかし、戦う術がないせいで身がすくみ、一度は逃げ出しかけてしまった経験を経たからこそ、「守る」ためには強さがなければならないことをコルレオは学びました。
争いを好まず、なるべく対話で解決することを望みながらも、大切なものを守るための強さを求める勇む心は、勇者が持つにふさわしいものです。
1話でエヴァンに認められた時点では実感できず、2話で魔人の少年に感謝されて得た勇者としての実感をマママの負傷で折られ、3話のパンネロの問いに決意と共に「勇者です」と答えるまでのコルレオの心情描写はこの漫画でしか読めない唯一無二のものだと思います。

◆おまけ部分

Xで呟いた内容に加筆修正。なので突然ここまでと文体が変わります。

あまりに充実したおまけページ。この部分ちゃんと林先生に原稿料出てる?出ててくれ!むしろ出す!

おまけ部分の内容を詳しく書くと売上を妨げる可能性があるので、なるべくどんな内容か言わずに感想だけを語ります。
片手にコミックスを持ちながらだと分かりやすいかも。

・おまけページ①(1話後ろ)

コルレオ、苦肉の策で赤面させられてるの笑った。思えば表情は豊かだけど無愛想だなコルレオ。最初に笑うシーンが楽しみになったぞ。
こいつ真面目だからもしや平和になるまで笑わないんじゃないか…

・おまけページ②(2話後ろ)

マママ、ファーの来歴もコルレオのための努力も、あらゆる方面の不器用さが出てていじらしすぎる。
「コルレオの勇者性」って言葉がマママの紹介文から出てくるのが尊い。親子の絆が熱い漫画だ。
あと絵!童顔魔王母に劣情を抱かせようとするな!もっとください!

・おまけページ③(3話後ろ)

パンネロさん、やっぱいろいろあるのね。
マママとハロハロ主役の長編過去回想絶対やってくれって改めて思った。

・おまけページ④(4話後ろ)

紙の本じゃないとここのありがたみが分からないと思う。紙も買って良かった。
エリシアが絶望の中もがいて逃げていたことが見開きで伝わる。
おまけですら発揮される林先生の演出力

・おまけページ⑤(5話後ろ)

普通に笑っちゃったしかわいいし。なんかそういうやり取りって普通心に留めておく気がするんだけど念入りに確認しちゃうのがまた…
6話の真顔の火力が上がったぜ

・おまけページ⑥(7話後ろ)

視線動かしてるだけなのにこのページの栄養価高すぎだろ。ありがとうございますありがとうございます。
本編では描かれないところでずっとこんなことやってると思うと微笑ましい。

・おまけページ⑦(8話後ろ)

上下段に分けたキャラ紹介がもはやおまけページっていうか一つの芸術作品になってる。
造形の禍々しさを見つめることに一点集中させて見下ろすエンド、一顧だにせず遠くを見るエヴァン、白と黒のコントラスト、そして紹介文の内容。完璧すぎる。

・おまけページ⑧(⑦の後ろ)

ちょっと俺コルレオ説教してくるわ

・おまけページ⑨(⑧の後ろ)

ジャンプGIGAに載ってましたね。
新たな世界で学ばなくちゃいけないことがある中、なんでまず小粋なジョーク集を読もうと思ったの?とか、大体小学生が喜びそうな内容のものに「なるほど…」って真面目に言ってるところとか、笑えるポイントが多いんだこれが。

・そで(折り込み作者コメント)

漫画の表現力が突出している林先生が「絵」への想いを語っている純粋さになんだか胸が熱くなった。
絵を描くことが大好きで大好きでたまらない気持ちが伝わってくる素敵な作者コメント。

◆まとめ

先の展開に触れたいと思いながらも、なんとか1巻の内容だけしか触れずに書き上げました。
本編の面白さに加えて、充実したおまけページまである魔々勇々1巻、楽しみにしていた甲斐のある最高のコミックスです!一緒に楽しみましょう!

◆読み足りない人へ

1巻全体という総合的な視点での感想ですので、掘り下げたい方は以下も是非。
いろいろ書いてます。よろしければどうぞ。

・過去話感想

本誌でリアルタイムに読みながら書いた感想です。
1巻書影だけの感想もあります。

第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話 第7話 第8話
◆特別編 1巻書影を語る

・ネタバレ若干あってもいいなら…

先の展開に触れられないので、今回の記事は「もっと語りたいことあるのに!という」本誌勢としてはもどかしい記事になりました。
多少のネタバレがあってもいいから、先の展開も含めたレビューが読みたい方にはこちらの記事を。

期待が高まり、2巻が待ちきれずジャンプ既刊を電子で買うことになること請け合いです。

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