公園のブランコ

ある朝、いつも遊んでいる小さな公園に行ってみると

いつも一番に駆け寄っているブランコが無くなっています。
周りをキョロキョロ見回すと、
砂場も
滑り台も
鉄棒も
みんな無くなっています。

あるのは…バンダの絵が描いてあるベンチ一つだけ

そこに近所のいっくんと言う男の子がしょんぼり座っています。
いつもは元気いっぱいで、鉄棒をぐるんぐるんと逆上がりして、
砂場ではおもちゃのバケツにお水を汲んできれいなどろだんごを作っては
自慢げに「はい!」と私にくれるいっくんです。
いっくんのお家は街で1つしかないお風呂屋さんです。
夕方、学校から帰って暗くなるまでいっくんはこの公園で遊んでます。

時々
私がブランコに乗っていると
「押してやるよ!」と言って力いっぱい!思いっきり押すので、
「いっくんこわいよぉ。」と、私が声を上げると、
いっくんは少し優しく押してくれます。
そして、私が少しづつ慣れてくると
「もっと!もっと強く、もっとたかく。」
「落ちるなよー!」と、二人で楽しく笑いながらお空に向かって私の背中を押してくれます。
いっくんは本当に優しい男の子です。

いっくんは、私を見つけると、少しプイっとそっぽを向いて顔をゴシゴシ擦っています。
「全部無くなっちゃったね。」と、私が言うと
「うん。」、それだけ言ってまた、顔をゴシゴシします。

そして、
立ち上がって
「ボクのせいかな?」ボソッと言います。
私もあわてて
「ううん。私が転んで突き指しちゃったせいだよ。」と言いました。

そして、二人で黙ったまま、公園を出て
「バイバイ。」と小さく言って別れました

それから…いっくんとはもう遊ばなくなって、街で見かけるいっくんはどこかよそよそしくて
私はもう声をかけることが出来なくなりました。


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