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がん患者は、苦痛に悶え苦しんで死ななければならないのか?

「がん=壮絶な痛みを伴った死」は時代遅れ

 皆さんは、 がん患者はベッドの上で苦痛にのたうち回って死ぬものと思っていませんか。私も、知人からそのような話を聞く事があります。しかし現在ではそれは例外で、時代遅れの考え方となっているのです。私の両親もがんでしたが、最後は眠る様に亡くなっています。以前に引用した、日本在宅ホスピス協会会長の小笠原文雄医師も次の様に述べていました。

「ほとんどの痛みは取る事ができます。もし持続的深い鎮静を行わなくてはならないほどの耐え難い苦痛を患者に与えているとすれば、その時点で提供されている緩和ケアが不十分なのでしょう。・・・・在宅でも 緩和ケア病棟でも、医師や看護師・チームのスキルがあれば、概ね痛みのコントロールは可能です。持続的深い鎮静を行わなくても、最後まで穏やかに過ごす事ができるはずです。」(『これを知れば日本で「安楽死」を望む人はい なくなる』iRONNA)

 また、聖路加国際大学臨床教授の保坂隆医師も著書の中で次のように書いています。

「今はすぐれた鎮痛薬もありますし、緩和ケアの技術やノウハウも昔とは比べ物にならないほど進んでいますから、今時痛みで悶えるなどという事はまずないでしょう。私の勤めている病院(聖路加国際病院)の緩和ケア科でいえば、肉体的な痛みは99%以上はコントロールできると自負しています。 ・・・・「がん=壮絶な痛みを伴った死」という考え方そのものが、時代遅れで現代にそぐわないもの・・・・」(『がんでも、なぜか長生きする人の「心」の共通点』保坂隆著)


 近藤誠医師も著書の中で次のように述べています。

「慶応病院時代、事実上の緩和ケア医を務めた僕の経験から言えば、病床でのた打ち回って死んでいく患者などは一人もいませんでした。実は、がん終末期の一部の患者が痛みに苦しむのは手術や抗がん剤に原因があるのです。・・・・肺がんや食道がんの切除手術では、胸部や腹部を大きく切り裂きます。切除手術では神経も切ることになるので、手術後にいわゆる神経障害性の痛みが出てきます。この痛みに対して、モルヒネがあまり効かないのです。抗がん剤で言えば、治療後に出てくる末梢神経の障害があります。この障害により痺れや痛みを感じる患者は多く、この痛みに対してもモルヒネはあまり効果がありません。・・・・
過酷な手術や抗がん剤治療に起因する痛みがないのであれば、がん終末期の痛みでのた打ち回ったりする事はありません。」(『がん患者よ、近藤誠を疑え』近藤誠著)


 つまり手術や抗がん剤などで無理な治療さえしなければ、 末期がん患者が悶え苦しんで死ぬなどと言う事は無く、 痛みが出たとしても99%は緩和ケアでコントロール可能なのです。ですから「持続的深い鎮静」の前提となっている「耐え難い苦痛」自体が、今日では存在していないのです。それが存在すると言うなら、ただ単に緩和ケアのスキルが未熟なのか、治療自体が間違っている可能性が高いのです。

医学的妥当性のない「持続的深い鎮静」

 終末期セデーション(ターミナル・セデーション)として実施される「持続的深い鎮静」は、死に直面した患者の「耐え難い苦痛」を取る事を唯一の目的に「安楽死」させる処置ですが、現在ではその前提となる「耐え難い苦痛」自体が存在しない訳で、医学的にはほとんど必要性の無いものになっているのです。つまり、今日では「持続的深い鎮静」に医学的妥当性は全く無いのです。

 このことは、病院によって「持続的深い鎮静」の実施率に 7~68%と大きな幅が有る点に如実に現れています。病院間の重症患者の偏りや医療技術の差を考えても、実施率に10倍もの違いが 出るなど有り得ないからです。つまり70%近い異常に高い実施率の病院では、本来数%程度しか妥当性の無い「持続的深い鎮静」を、医学的必要性とは無関係に実施しているとしか考えられないのです。こうした施設は「持続的深い鎮静」を「安楽死」ビジネスとして実施している可能性が極めて高いのです。当然ですが、こうした病院では入院患者が次々と死亡退院して行く事になります。近藤誠医師は、食欲もあり普通に歩けた胃がんの 82歳の患者が、キリスト教系のホスピスに入って 1週間程であっけなく亡くなったケースを紹介しています。

「呼吸が少し苦しくなったので本人が不安になって、早めにホスピスに入ったらすぐに、酸素吸入や点滴のチューブをつけられた。入院の数日前に、レストランのコース料理を完食できたのに、入院翌日に友人がお見舞いに行ったら、トイレに行くにも車椅子で介助が必要な寝たきり状態になっていたそうです。それから一気に衰弱して、一週間ぐらいで亡くなってしまったと。昔から「あのホスピスに入ると患者がすぐ死ぬ」と噂される施設がいくつかあって、この問題は闇が深いです。」 (『世界一楽な「がん治療」』近藤誠著)

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