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自然治癒力こそ病気克服の主役

 皆さんは、医師や薬が病気を治してくれると誤解していませんか。本来、医師や薬に病気を治す力は無いのです。我々が病気や怪我から治るのは、私達自身が生まれながらに自然治癒力を持っているからです。医師や薬に出来るのは、この自然治癒力を補助し引き出す事だけなのです。

 怪我をした時に傷が治るのは、周囲の細胞が細胞分裂して新たに誕生した細胞が傷口を埋めてくれるからです。怪我をすると白血球がやってきて細菌を攻撃し、細菌や白血球の死骸を片付けるためにマクロファージが集まってきます。そして血管は充血して血液量を増やし、白血球やマクロファージを傷口に運びます。また輸送路を確保するために毛細血管も新しく作られます。次に線維芽細胞が傷口に呼び集められて増殖を開始し、膠原線維を作り出して傷跡を埋めて行くのです。こうして様々な細胞が共同して傷口を修復して怪我が治る訳です。したがって、傷口をヘタに消毒するとこれらの修復する細胞がダメージを受け、却って治癒過程が遅れてしまう事になります。また、手術で切った跡を針と糸で縫合しますが、それは傷口を物理的に引寄せて密着させているに過ぎず、こうした原始的な方法で元通り傷口が癒着して治るのも同じ理由で、新たな細胞が傷口を修復してくれるからなのです。つまり、私達の身体自体がこうした自己修復能力を持っており、この自然治癒力が有るからこそ病気や怪我が治るのです。こうした事を考えると、私達の身体には如何に偉大な潜在能力が秘められているか、生命の不思議に驚嘆させられます。

 また、薬も病気を治すもので無い事は明らかです。薬は一時的に症状を抑えているだけで、病気そのものを治している訳では無いのです。抗がん剤も、がん細胞を殺している訳では無くその増殖を止めているだけで、がんが縮小するのは私達自身が持つ免疫力の働きによると言います。抗インフルエンザ薬のタミフルも同様で、インフルエンザ・ウィルスの増殖を抑えているだけで、実際にウイルスを退治しているのは自分自身の免疫力なのです。また血圧を下げる降圧剤や、コレステロール値を下げるコレステロール低下薬も、一時的に数値を下げているだけで、病気を治している訳で無い事は言うまでもありません。つまり、西洋医学は病気を治す力は持っていないのです。

 これを端的に証明しているのがプラセボ(偽薬)効果です。これは有効成分を含まない偽薬に、本物の薬と同様の効果が見られる現象を言います。この現象が知られる様になったのは、第二次世界大戦中、外科手術に欠かせないモルヒネの在庫が尽きた時に、看護兵がモルヒネの代わりに食塩水を注射した事にあります。驚いた事に、食塩水の注射で手術台の負傷兵の容態は落ち着き、手術のショックを回避できたのです。その後も、モルヒネが底をついた時に同様の実験の行い効果が確認されました。狭心症の研究でも、早い段階から治療効果が発見されています。パーキンソン病でもプラセボを服用した時の患者の反応は、本物の薬の時と変わらないと言います。がん治療においても、アメリカでの驚くべき例が以前に紹介した『幸せはガンがくれた』の中で取り上げられています。また薬だけではなく、手術にもプラセボ効果が存在する事が分かっています。

 実はこのプラセボ効果は、製薬会社が新薬を開発する時に大きな障害となっているのです。今日では、新薬の有効性を示す為にプラセボ比較対照試験が要求されますが、臨床試験でプラセボに対する新薬の優位性を証明する事が容易では無いのです。製薬会社にとっては悩みのタネのプラセボ効果ですが、実際の処方薬の薬理効果や医師の治療の大きな割合が、プラセボ効果の恩恵に浴している事は間違い有りません。薬理効果が無いはずのプラセボに、本物の薬と変わらない治療効果が現れるのは、私達の身体自体が自然治癒力を持つからこそ可能なのです。また、患者の心の持ち様により治療効果に大きな違いが出てくるのも同じ理由です。

 病気の治療においては、 私達が生まれながらに持つ自然治癒力こそが主役であり、医師や薬はそれを補助する脇役に過ぎないのです。クリミア戦争に従軍して打ち捨てられていた多くの傷病兵を助け、「戦場の天使」「ランプの貴婦人」「近代看護教育の母」として有名なフローレンス・ナイチンゲールも、「看護の役割は人間が本来持っている回復力を最も発揮しやすい状態を作ること」に有り、「唯一自然こそが患者を癒すのであって、看護婦や医師はそのお手伝いをする」(『系統看護学講座・緩和ケア』医薬書院)だけと考えていたと言われます。彼女は著書の中で次のように語っています。

「内科的治療も外科的治療も障害物を除去すること以外には何もできない。 病気を癒す事はできない。癒すのは自然のみである。外科的治療は手足から治癒を妨げていた弾丸を取り除く。しかしその傷を癒すのは自然なのである。内科的治療についても同じ事が言える。・・・・内科的治療は、自然がその障害を除去する事を助ける働きをするが、それ以上の事はしない。そしてこのどちらの場面においても看護がなすべき事、それは自然が患者に働きかけるに最も良い状態に患者を置く事である。」(『看護覚え書』フローレンス・ナイチンゲール著)

がんの治療においても、 自身の自然治癒力こそが主役である事を知っておいて欲しいと思います。

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