【詩のようなもの】幽霊船

海原に立ち込める霧の中
幽霊船が向かって来る
人影はなくボロボロの帆が
微かに風に揺れている
静かに真横を進む時に
甲板に無数の黒い影が現れる
人の形をした影は
こちらに向かい両手を差し伸べて
うめき声のような
泣き声のような
悲しい声をあげている
やがて幽霊船は過ぎ去って行く
あの何とも言えない悲しげな声だけが
いつまでも耳に残っている
驚きも恐怖もない
薄れ行く意識の中でふと思う
この船もあの様になるのだろう?
遭難してどのくらい経つのだろう
ほとんどの船員が餓死してしまい
残ったのは自分一人
今のは死ぬ前の幻だったのだろうか
やがて自分もあの幽霊船に乗るのだろうか
いや この船自体がすでに幽霊船だ

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