英語学習の非効率を脱する3つの考え方
「英語ができるようになりたい!」と思っても、日々のあれこれで忙しい中で時間を割くのは大変です。時間や労力は限られているので、できる限り効率的に学習を進めていく必要があります。
これまでたくさんの受講者の方を教えてきた中で、多くの人がやってしまいがちな「学習が非効率になってしまうパターン」が見えてきました。
今回は、そんな失敗パターンを3点にまとめてお伝えします。みなさんが英語学習をより合理的、効果的に進めるための参考になれば幸いです。ではさっそく1つ目から行きましょう。
1. 間違いを気にしすぎない
特に英語を話すときです。言葉を間違ったり、言葉が思いつかずに詰まったりしてしまったときに、多くの人は過度に動揺してしまい、さらに話せなくなる悪循環に陥ってしまいます。
一度、自分や誰かが母語を話しているときの様子をよーく観察してみてください。みなさんが思っているよりはるかに高い頻度で、言い直したり、言い淀んだり、「えー」「あのー」「こう」と言って時間を稼いだりしています。
意識しなければなかなか気づきませんが、私たちは意外と日本語を話すのも下手くそなのです。
なのに、外国語になった途端に急に間違いや詰まりが極度に気になり始めます。1つも間違いを侵さずに完璧に話さなければ気がすまないモードに無自覚に陥ってしまいます。
普段私たちが英語を聞くのは、TEDやニュース、映画、ドラマなどの媒体が多いですよね。かれらは非常にスムーズに話していますが、準備と練習をしているからあれだけスラスラ間違いなく話せているのです。かれらが日常で英語を話すときはもっと詰まったり言い直したりしています。
極度の「間違い恐怖症」に陥ってしまう人は、母語の日本語ですらたくさん言い間違えたり詰まったりしていることを思い出しましょう。母語ですらそうなのですから、外国語で詰まるのは当たり前です。気にしすぎるのはやめましょう。むしろ、聞き手にとっては、間違いを気にしすぎている様子や、何度も言い直して結論が早く聞けないことの方がストレスです。
2. 完璧主義をやめる
完璧主義も英語学習の足を引っ張ります。
単語帳を例に説明していきましょう。
たとえば1500語収録されている単語帳があったとして、1500語全部を100%憶えないと気がすまない人が少なくありません。これは非常に非効率です。
そもそも、1500語のうちの100語でも憶えられたら自分の英語力にはプラスですよね。しかし、完璧主義の人は、1400語しか憶えられていないと100語分マイナスだと錯覚してしまい、残り100語も憶えきろうと躍起になってしまいます。
単語が1500個あれば、記憶しやすい単語もあれば憶えづらい単語もあります。よく出てくるので記憶しておく重要性が高い単語もあれば、あまり出てこないので憶えていなくても困らない単語もあります。
1500のうち1400語を憶えられたのなら、まだ憶えていない100語にこだわらずに別の教材に移行する方が学習はスムーズに進みます。
もし200語憶えた段階でその教材に飽きてしまったら、気にせず次の教材に移りましょう。途中で投げ出してしまったことに罪悪感を感じる必要はまったくありません。1500のうち200を憶えられたのなら、その200語分みなさんの英語学習は進んでいるのです。大拍手です。
「始めた教材はぜんぶ完璧にやりきらないといけない」
という考え方に合理性はまったくありません。
これは他の学習法にも言えます。
たとえば文法書には、よく使われる簡単な文法から、マニアックで頻度の少ない文法まで網羅してあります。英検1級の満点を目指すのでない限り、マニアックな文法を記憶する必要はありません。実用が目的なのであれば、頻繁に使われるものだけしっかり理解しておけば十分です。
リーディング教材などにも同じことが言えます。テキストの中で意味がわからない箇所や、忘れてしまっている単語があっても、あまり気にする必要はありません。テキスト全体の内容や主張が理解できているのであればOKです。枝葉末節まで完璧に理解することにこだわるより、今理解できている箇所をより深く記憶に定着させて使える語彙を増やしていくことに時間を使うほうが効果的な学習になります。
3. 理屈ですべてを理解しようとしない
正直この記事はこれが書きたくて筆を起こしたようなものです。
言語を理屈ですべて理解しようとするのが非効率なのは、次の2つの理由からです。
①そもそも、言語の規則をすべて明確なルールとして記述することはできない
②英語が「使えるようになる」ために理屈の理解は必ずしも必要ではない
1つずつ説明していきます。
①言語をすべてルールに落とし込むことは不可能
言語は非常に複雑です。例外もたくさんあります。ある程度は規則や傾向として説明することはできますが、すべてをルールとして明文化することはできません。実際、言語学者が束になってかかっても、いまだに英語の文法的規則を説明しきることはできていないのです。
それに、理屈を問い続けてもどこかで必ず「そういうものだから」と受け入れるしかない壁にぶち当たるのが言語というものです。
「黄色くて細長い果物をなぜ"banana"と呼ぶのか」と言われても、「いや、バナナはバナナだから…」と答えるしかないですよね。
②理屈の理解は必ずしも必要ではない
ほとんどの方の英語学習の目的は、英語で意思疎通ができたり、英語をつかって仕事で活躍したりすることだと思います。
「英語の規則を説明できるようになること」は、あくまで学習を進めるための手段の1つであって、目的ではありません。
関係代名詞のルールや仕組みを言葉で説明できることより、関係代名詞が使われている文章を読んで意味を理解できることの方が重要です。
関係代名詞の文法問題が解けることより、話すときにサッと関係代名詞の構造が使えることの方が重要です。
ルールを理解することで記憶しやすくなったり、実践的な英語力の向上につながるのであればルールを理解すれば良いですが、実用のために理知的な理解は絶対に必要というわけではありません。
実際、ネイティブは細かい文法の仕組みを説明できません。
逆を考えるとイメージしやすいと思います。私たち日本人は日本語を難なく使いこなしていますが、「私は」「私が」といった助詞「は」「が」の使い分けを文法的にきちんと説明できる人はほとんどいません。私もできません。なんとなく感覚を掴んでいるだけですが、それでも話せるのです。言語を使うために、理屈は必ずしも必要ではないのです。
曖昧さに耐えられるか
要領の良い学習者の方ほど、文法や語彙について質問するときの目的意識がはっきりしています。「仕組みを理解した方が憶えやすい」と感じたときに適切に質問してくる印象があります。
逆に、なかなか上達しない学習者の方ほど、「理解できた〜」という一時的な満足感のために質問されることが多いです。
たとえば
「"same"と"identical"の違いはなんですか?」
といったような質問をされる方がいらっしゃいますが、ほとんど無意味です。なぜなら、両者の違いを理屈で知っていたとしても、実践の場でそれを瞬発的に思い出したり使い分けたりすることはできないからです。それに、多くの方は回答を聞いてその場で理解するだけで、翌週には憶えていません。
上達の早い方は、「まあ、なんかニュアンスの違いがあるんだろうなあ」「今はわからないけど、学習を進めていけば分かるかもなあ」と思いつつ、sameやidenticalが文脈の中で使われているインプットを何度も反復し、両者の違いを感覚にインストールしていきます。結果、言葉では違いを説明できないかもしれませんが、両者を適切に使い分けることができるようになっていきます。
疑問を持つなという話ではありません。要領のいい学習者も「sameとidenticalの違いはなんだろう」という疑問は持ちます。問題は、疑問を持ったときに、疑問が解消されない曖昧さに耐えられないことです。ときには「今はよくわからないけど、とりあえず憶えよう」と合理的に割り切って前に進むことが大切です。
まとめ
ということで、非効率な英語学習を脱するための3つの考え方を紹介しました。まとめると
①間違いを気にしすぎない
②完璧主義をやめる
③理屈ですべてを理解しようとしない
この3つを意識することで、学習効率は大きく向上します。
肩の力を抜いて、ときには「まあいいか」と合理的に割り切りながら心を軽くしている方が、結果的に習得は早くなります。
貴重な時間を割いて最後まで読んでくださりありがとうございました!みなさんの英語学習の成功を祈っています!
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