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【読書録】一人は個人、二人だと親友で、三人なら仲間だ。 - 2019年3月号

日ごとに冬の空気が和らいで道端の草花も芽吹き、日暮れの時間も少しずつ遅くなってきました。もうすぐ春がやってきます。けれど、いつからでしょうか。春を迎える喜びよりもまたこの季節が巡ってきたと、ため息ならず“くしゃみ”をするようになったのは。

花粉です。花粉の季節がやってきました。もうダメです。無理。死にたい。

部屋から一歩も出ずに本を読んで生きていたいと、この季節は切に思います。けれどそうも言っていられないので、今日も鼻をムズムズさせながら生きていますが、集中力を欠くのが困りもので読書にもイマイチ身が入りません。早いとこ花粉症を撲滅してはくれないでしょうか。

ホントにね。

そんなわけで、ここ最近読んだ本のまとめ記事です。


『そしてぼくらは仲間になった』/ 著・小嶋陽太郎 他

5人の若手作家さんが「三人組」をテーマに短編小説を書いた、『ズッコケ三人組』シリーズ40周年記念企画の一冊。小嶋陽太郎さん、髙森美由紀さん、福島直浩さん、虹山つるみさん、向井湘吾さんが寄稿されています。小嶋陽太郎さんの作品が読みたくて買った本でしたが、どの作家さんの作品も面白くてすごく良い本でした。

一人は個人、二人だと親友で、三人なら仲間だ。

本を開いて最初に見えたその文章がすごく素敵です。私は本を読まない子どもでしたから、『ズッコケ三人組』も詳しくは知りません。けれども、三人の仲間が生み出すそれぞれの物語は面白いですし、三人組に対する作家さんたちの愛情も感じられる一冊でした。

また、クラスメイトや学校の友達だけではなく、ネットを介したオンラインゲームの知り合いとか、VR世界のAIとか、今の時代に子供たちが出会うであろう、色々な姿の三人組が書かれているのも面白いところです。時代が変われば三人組の姿も変わっていくのかもしれませんが、一番大事なところは、きっと変わらずに残り続けていくのでしょう。


『甘々と稲妻 12』/ 著・雨隠ギド

2013年から連載が始まった雨隠ギドさんによるマンガ『甘々と稲妻』、その最終巻がついに発売されました。アニメ化をきっかけに追い続けてきましたが、本当に良い作品だったと思います。最終巻の成長したつむぎの姿に、あんなにも小さかった頃が遠い昔のように感じられて、積み上げてきた幸せな時間に胸が溢れて、なんだか涙が流れてしまいました。

すごく温かくて、ご飯はおいしそうで、家族や友人たちの絆に心が優しくほぐされていく作品でした。本当に、素晴らしい作品をどうもありがとう!

アニメ2期、やれないかな? 見たいな。


『コンビニたそがれ堂 猫たちの星座』/ 著・村山早紀

村山早紀さんの『コンビニたそがれ堂』最新刊、今回は最初から最後まで猫づくしの猫特集な一冊です。家族の幸せを願うちいさな子猫、人々に幸せを届けた人に寄り添う老いた猫、大切な人を待ち続けた雪のような猫、そして人生をともに暮らした友人であり、大切な家族のぶち猫。猫と人の数だけある物語はどれも喜びに満ちる幸福なものでした。

人の死も、猫の死も、避けては通れぬ悲しいものです。けれども共に過ごした大切な時間が無くなるわけではありませんし、これからも人と猫はどこかで寄り添いながら生きていく関係にあり続けるのでしょう。そんな願いがこの本には込められているように感じられました。これは、追悼と祝福の物語なのだろうと思います。過ぎゆくものも、これからやってくるものも、等しく愛せる人間になりたいものです。

それにしても、「おはぎさん」って猫の名前がカワイイすぎてひとり悶絶してしまいました。おはぎさん、おはぎさん、可愛い……。


『誰も教えてくれないデザインの基本』/ 著・細山田デザイン事務所

フロップデザインのフォントキャンプさんの記事を読んで興味を持った本。デザインに関する基本的な項目がわかりやすくまとめられており、かつ、この本自体が非常に素晴らしいデザインで制作されています。入門書として最適なのは間違いありません。作例も非常に多く、参考になる部分がたくさんある本でした。

デザインに興味がある人はもちろん、デザインなんて考えたこともない人にこそ読んでもらいたい一冊かもしれません。それだけ私たちの身の回りには、たくさんのデザインが溢れているのです。必読の書とも言うべき一冊。


『本屋さんで待ちあわせ』/ 著・三浦しをん

三浦しをんさんの読書エッセイ集、2012年に単行本化されたものが最近文庫化されたようです。たまたま本屋さんでこの本と目が合い、面白そうだったので買ってみることにしました。

収録されているエッセイは新聞や雑誌に掲載されたもので一編が数ページ程度と短く、とても読みやすいつくりになっています。軽妙に踊る語り口が、どこかうきうきする楽しさをエッセイに味付けしており、読んでいてとても楽しい本でした。本の面白いところを的確に、そして分かりやすく紹介されていく文章力も素晴らしいです。

特に日本の古典や歴史ものは普段あまり読まないので、『東海道四谷怪談』など非常に興味深く読むことができました。これからはこういった本にも手を伸ばしてみましょうか。と言うかそもそも、三浦しをんさんの本を今回初めて読みました。『舟を編む』とかの作品は以前から知っていましたがたまたま未読でしたので、これからは少し手を伸ばしてみようかと思います。

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