どこかのだれかの日々の記 布寺童ミキ その1

随筆:文学の一ジャンルで、自然や人生などに関して、見聞や感想・批評などを、筆のおもむくままに記述したもの。

三省堂 全訳読解古語辞典 第四版


2041年4月8日

姉さんへ

 今日は高校の入学式でした。前の手紙でも書いたけど、これで晴れて私は姉さんの後輩になれました。正門の桜、あの頃より小さくなった気がします。私が大きくなったからかな。毛虫もいなかったよ。用務員さんに聞いたらここ数年で良い虫よけが出たんだって。あの時にそれがあれば私はあんなに泣きじゃくらなくて済んだのにね。でもこれから、少なくともあの桜では私みたいな子が毛虫たちの餌食になる事はないと思うと少し喜ばしいです。

 制服は姉さんの頃に比べて少し変わってたよ。今年から変わったんだって。新しい制服もカッコ良くて可愛くてオシャレで、友達は皆喜んでました。私としては姉さんとお揃いになれなくて少し寂しいけど、もうそんなお揃いを着る年齢じゃないもんね。高校生だから。どう?えらいでしょ?姉さんの制服は今も大事にしまってあるよ。父さんも母さんもあんまり家に帰ってこないから、私がたまに干したりしてます。姉さんが好きだった私服はあの時姉さんと一緒に向こうにやっちゃったから今この家にある姉さんの服は制服とかあんまり着てなかった服しかありません。これはいつか考えが変わる時まで保管していようと思います。もう増えることはないからね。私が大きくなったら着ようと思ってたけど、いっぱい運動していっぱいご食べていっぱい寝てたらいつの間にかサイズが合わなくなっていました。まさかここまで大きくなるとは……自分でも驚き!姉さんって意外と小さかったんだね。水曜日に体力測定があって、その時に身長を測るみたいだから、また報告するね!

 そういえば校舎も変わってたよ。とは言っても新しい棟が増築されただけみたいだったけど。姉さんが「敷地の端の方にあって大変!」ってよく言ってた部室棟がそこに入ってるみたい。明日から部活見学が始まるから、始まったらまた行ってみるね。

 じゃあ、また何かあったらお手紙書くね。お姉ちゃん

 P.S.
 知らない先生も結構増えてたけど、姉さんのいた頃から居て姉さんの事を覚えてる先生もまだ何人かいたよ。そしてなんと!なんと!姉さんの同級生でよく遊んでたナッちゃんが先生になってました!すごいよね!今日はあんまり話せなかったけど、またいっぱいお話しようと思います!

妹より



2041年4月23日

姉さんへ

 今日は部活を決めました。最初は姉さんと同じ吹奏楽部にしようと思って体験入部をしたんだけど、どうやら私には姉さんみたいな才能はなかったみたいです。だからスッパリ諦めて写真部に入る事にしました。何故なら写真部には姉さんみたいな崇垂先輩がいたからです!崇垂先輩は顔も声も姉さんとは違うのに姉さんっぽいのです。不思議!まあそれは後付けの理由で、本当は昔から写真に興味があったからです。母さんも父さんも仕事柄、記録写真みたいな面白みのない写真しか撮らないから、「だったら私が!」というワケなのです。幸いちょっと型落ちだけどカメラは何台か家にあるし、VWでも綺麗な写真撮れるしであとは技術を身に着けるだけというワケなのです!姉さんの写真を撮る事はもうできないけど、その分だけ母さんや父さん、爺ちゃんに婆ちゃんにおじさんやおばさん、ユキにヒロにみっちゃんにトモくんとか皆の写真をいっぱい撮るよ。忘れないように。

 ちなみに崇垂先輩とは委員会も一緒です。というか委員会を決める方が先だったから、そっちで崇垂先輩と出会って声をかけられて写真部に行ったって流れが正しいです。そういえば姉さんってどの委員会に入ってたんだっけ。あんまり家で委員会の話をしてた記憶がないような気がします。今度ナッちゃん先生に聞いてみます。もし委員会が一緒だったらなんだか面白いね!

 そういえば、私の身長をまだ言ってなかったね。私、布寺童ミキはなんと!172㎝でした!そりゃ姉さんの服が小さく思えるワケだね。姉さんは160ちょっとだったもんね。ちなみに体力測定の結果もすごかったんだよ。去年まで色々と運動部を掛け持ちしてた事もあってか、学年でもトップクラスの成績でした!だから運動部からのお誘いも色々あったんだけど、全部断って吹奏楽部に行ったけど……結果は上に書いた通りでした……。学力テストの結果は体力測定の結果ほどではなかったけど、そこまでダメでもありませんでした。ただ、姉さんが行った大学にはまだまだ足りません。ただどうやら何故か写真部の先輩たちは皆学力が高いので困ったら教えてもらおうと考えています。なんで写真部に集まってるのかは、また今度聞いてみようと思います。

 じゃあ、またお手紙書くね。お姉ちゃん



※この文章はフィクションです。実在の人物・団体・名称などとは一切関係ありません。

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