「三菱の至宝展」に行ったら三菱創業四代のことが知りたくなった番外編②陶磁器が持つ景色のはなし

魯山人によれば、「陶器には、その具わっている慶長以後に見られる貧弱な美的価値と、それ以前の作と見られる思想的高踏なる芸術陶器の両面があるということを知らねばなりません。」のだそうです。さらに魯山人は徳川中期以降に作陶された作品に関して、「極めて低級な美を盛るに過ぎない大量的なもの」と一蹴し、慶長以前の作品は「名巌のような、松樹のような、琅玕(ろうかん:美しい竹の意)のような、梅花のような、その美しさに打たれる」と、何やら抽象的で感覚的なことを言っています。

 いきなり魯山人になりきるには厳しいものがあるので、ここでは陶磁器鑑賞にしばしば登場する「景色」という概念をご紹介します。景色とは「器の見どころとなるような表面の変化」のことです。かいらぎ、釉のなだれ、焦げ、火間など、焼成によって生じる要素から、割れ、欠け、継ぎといった破損・修復によって生じる要素まで、陶磁器の表面に現れるあらゆる要素が景色になりえます。完璧に完成された器ではなく、火間があったり、継いであったりする器を美しいと判断する価値観は日本ならではのものです。みなさんもオリジナルの景色を陶器の中に探してみてはいかがでしょう。

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