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#番外編ショートストーリー
4.据え膳食えないヘタレ罪 #絶望カプ
「うぉー! 何で繋がらねぇんだ!」
降車客一位で改札を通過、家までダッシュ。すぐに息が上がる。最近とみに体力の衰えを感じてはいたがそれにしても鈍りすぎだ。
円と約束した夜に急な残業。なんとかお役御免になって職場を出てから電話をかけ続けること十数回。メッセも送ったが繋がらないし返事もない。
残業だと伝えたとき、円は既に俺ん家の最寄駅に着いていて、買い物まで始めてくれていたから先に一人で家に行っ
1.愛妻弁当罪 #絶望カプ
「えっ先輩、手作り弁当!?まさか彼女!?…と俺を焦らせてどうせお母さん作でしょ。いつの間に実家帰ってたんすか」
「母ちゃんじゃねーよ」
「あー、俺なんて家の飯とかいつから食ってないか…記憶にございません」
後輩は今日も昨日もカップ麺。たぶん明日も。それは俺も然り。
「武士の情けじゃ、ほれ」
「チキン南蛮!ありがとう先輩のお母さん!」
「母ちゃんじゃねぇ!」
3.肉じゃがLINE罪 #絶望カプ
「先パァーイ、朝が来ましたよ。職場で目覚める朝、三日目とか…。泣ける」
「心配すんな俺も三日目」
「ああ、マイ布団が恋しい…干したことない湿っぽい布団だけどそれでも」
「布団くらい干せよ。つか仮眠室行けよ、ここのソファで寝るよりマシだろ」
「嫌です。…ここだけの話、絶対あそこなんか出ますよ」
「ここだけも何も有名な話だよ。だからみんな仮眠室行かずにここで寝るんだよ」
「あ、先輩LINE
5.セフレ、ダメ、ゼッタイ罪 #絶望カプ
刃物を持って暴れた女の事情聴取。原因は痴情のもつれ。『結婚前提でつきあって』いた相手の浮気現場に鉢合わせ、逆上。揉み合った末に、現場にあった包丁で恋人及び相手の女性を刺すなどし、殺人未遂の現行犯で逮捕。
「で、被害者の女性こそ男の本命で、被疑者の方が浮気だったってオチか」
「まあ、あるあるですね。男がアホっすよ。セフレ作るならちゃんと相手選ばないと」
「相手選びの問題かよ。二股はダメだし、
6.他の女が選んだネクタイ罪 #絶望カプ
警察組織というのは実に体育会系の超縦社会であって、上司の命令は絶対。つまり「見合いしろ」と言われれば断ることなどできないのだ。
庁内でも有名な鬼課長、その娘御の見合い相手にこの俺が抜擢されてしまうなんて、まっこと迷惑千万恐悦至極にございますよ。
しかし、課長のお嬢さんがかわいらしい女性で正直驚いた。「父がゴリラなら娘ももれなくゴリラ。いくら出世が約束されてても……。あー、俺じゃなくてよか
8.同じ刑事じゃ意味ない罪 #絶望カプ
「まぁ、先輩のポテンシャルの高さにはうすうす気づいてましたけどね、俺は」
「なにがだよ」
「しらじらしい! 円さんのことですよ!」
後輩の進藤が、手にしていた果物ナイフを俺に向けたのでややひるんでしまった。あの事件以来、実は先端恐怖症気味なのだ。汚点かつ弱点なので誰にも言ってないけど。
「な、名前で呼ぶなって。馴れ馴れしいだろ」
「先輩、ちっちゃ! 心、せまっ!」
「なんとでも言え。
9.刑事だけどテンパリ罪 #絶望カプ
「おー、行った行った!」
子どもたちの飛ばした紙飛行機が、それぞれ放物線を描いて空を切る。球拾いならぬ紙飛行機拾い役の俺は、松葉杖を支えに芝生や植木に不時着したそれを拾って回る。
「やった! オレのが一番飛んだ!」
「エータ、その飛行機の折り方教えてよ。くるすさん、折り紙一枚ちょうだい」
「おう、マオ、何色にする?」
散歩道の脇にあるベンチで、腕を吊ったパジャマ姿の少年と車椅子の少女
10.コーコーセー的イベント罪 #絶望カプ
「先輩、なんですかあれですか友達多い自慢ですか」
進藤が俺の左足を見て言う。
缶ビールとグラスの焼酎をぶつけあう。今夜はちょっとした前祝いなのだ。
「……お前性格歪んでるよな。みんなから俺への暖かいエールじゃないか。確かにまあ、人徳とも言えるがなー」
足の怪我が治るまで、独身寮に仮住まいしている俺の部屋。仕事着のスーツから半パンに履き替えるとギプスが目立つ。
明日、ようやくギプス
11.新しい生活様式はガマン罪 #絶望カプ
新しい生活様式というものが取り沙汰されている昨今、俺の生活にも新しい変化があった。
ただし、マスクとか外食とかそういう話ではなく、それはごくごく俺だけの、俺オンリーの新しい生活様式。
「ただいま」
「おかえりー。早かったね」
そりゃすげえ勢いで報告書を終わらせたからな、とかいうのはわざわざ言う必要ないだろう。
俺だけの新しい生活様式その一、『帰ったら円が台所に立ってる日が結構ある
12.デキる刑事は事件を呼ぶ罪 #絶望カプ
銃のスライドを引いて、装填を確認する。合わせた背中の向こうで同じ動作をしているらしい進藤がため息をついた。
「せんぱぁい……、マジでいくんすか?」
「ここで行かないでどうするよ」
「マトリに任せましょうよぉ」
「マトリが到着するまで三十分はかかる」
確かにこんな展開は予想していなかった。
俺たちが追っていたのは数日前に起きた三千万円強盗容疑で逃走中の犯人で、まさか犯人がマトリが追