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断熱材入れDay 3: ハンターズアイ

仕事から戻ってヘロヘロになっている同居人に鞭打って、ぶっ倒れそうなくらい重いドライウォールを二人で動かした。

断熱材入れ最終章。
今回は南側半分から西にかけて。その横にはバスルームがあり、ついでサムパンプと呼ばれる地下排水用の開口部がある。

当たり前だろ?そこに湖があるんだから

また浸水していると言うと間髪入れず夫が返してきた。とりわけ雪解けの時期にはウォークアウトと呼ばれる、外に続く低い部分が浸水する。このサムパンプを頻繁に稼働させなければならなかった。

この辺りの家には大抵サムパンプがある。それらは水位が上がると自動作動し勝手に排水してくれるらしい。というのは、夫が何を考えていたのか サムパンプの排水管がまだ仮のもので、今も機械任せにすることが出来ない状態。
夫の手作りの家はそこここで“一般的”でなかった、というか、ないことがわかって来た(やっと)。
夫は色々な事を実験していたのである。

排水工事をする夫

2011年3月。東京で運営する英会話教室の講師が突然米国のチャーター機で日本脱出をした。新しい講師が急遽必要となった。

事のいきさつ↓

そんなわけで、夫が工事をしていたサムパンプの現場から10000km離れた東京で私は、トンずらした講師の代わりを探していた。

相変わらず夫と私は同じスピードで太陽の周りを回っていて。夫が追いつくことも私が追い越すこともない、何の接点もなかった頃のこと。


さて、断熱材入れ。
ドライウォールを動かしたあと、木板をのけるとテトリス状に合わさった発泡スチロールボードが出てきた。

ぴったり合わさって、三段ぐらいはクリアできそう

この裏側に断熱材を入れる壁が続いている。
地下でテトリスを楽しんでいたらしき夫にクスッとしながら、ボードを移動させてゆく。軽いのでポイポイと調子良く。すると

バタバタダダダダ
発泡スチロールの山が崩れ落ちた。
危うく下敷きになるところだった。

そういうことか

難を免れ私は思った。なるほど、夫のひとりテトリスの理由はこれか。
やたら積み上げてもつるつる表面で滑る落ちるだけ。。。
やれやれと崩れ落ちたテトリスピースを並べようやく壁に辿り着く。

英語講師を探すサイトで見つけたのは、まじめな人柄のカナダ人。インターネットでのマッチングシステムが一般化されつつあるころ。トンずらしたアメリカ人講師と違って彼は、震災の日、普段の何倍も時間をかけようやく仕事先の英会話学校に到着。やった~間に合った~と手をあげたら
みんながどうやって帰宅しようって時になんできみは来たんだ?
そうオーナーに言われたらしい。東京でおびただしい数の帰宅難民を出した日である。

後に彼が、夫と私の結婚届にサインをしてくれる人になろうとは。

さて断熱材
幾度かの浸水で湿ったものもあり、私は手袋の手で慎重により分けた。
そしてついに
ジャジャーン!

断熱材入れ終了!パチパチパチ!

しかしこのテトリスの断片どうする?

天井を見てごらん、

夫が言った……ような気がする。
見上げるとそこにはテトリスの断片と同じ発泡スチロール板が。

まったくキミは注意力がないんだから

そんな夫の声も聞こえてくる。

天井に入れる断熱材だったか・・・


Pay attention(注意を払え)
夫にしょっちゅう言われて、素直でない私はいつも腹を立てていた。
が、ある時気づいた。

夫のスカウティングについて行った時のことである。
スカウティングとは春先、冬のディアハントのエリアを調べに行くのだ。

足跡からどんな動物が行き来しているのか
木の幹がこすれていないか(牡鹿が角の間をこすりつけた跡)

些細なサインを見逃さない
目に見えない変化に気づく
いったん林に入ったら常に回りにアンテナを張って突然の出来事に対処する。ちょっとした見落としが命取りになったりするわけで。
鹿だけでなく グース、ダック、ベア。生涯に渡って続けてきたハンティングでそんな注意力を夫は身に付けたのかもしれなかった。

そういえば夫とハンティングをしてきた同居人。私があることについて、どうしてわかったのと聞いた時である。

まあね、いつも注意を払ってるからね

そうだった。彼はオムツの頃から夫のハンティングについて行っていたのだった。見落としてはならない物事を夫からきっちり教えられたに違いない。

過保護に育った私はそんなセンサーを発達させる機会も無いまま、ぼんやりとした大人になった(笑)

断熱材入れ最終章、訂正Day 3 終了。次は天井?
これはちと無理かなあ
いくら軽いと言っても、自分の背丈以上の発泡スチロール材を頭上に入れることが出来るか?

マスク、サングラスそしてキャップの防護スタイルのまま天井を見上げる私であった。


日本とカナダの子供たちのために使いたいと思います。