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湖畔だより。その後16 Schitt$ Creek

Aamazon Prime で Schitt’$ Creekの最終回を見た。
カナダのTV ドラマシリーズである。
富豪一家が破産して、田舎町のモテール住まいを余儀なくされるコメディ。
ロケーションが、今私の住んでいるところから遠くないらしく(カナダでの遠くないという距離)、その風景がトロントから近い田舎町、あるある、である。
例えばこんなようなところ。

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写真は、自宅近く。役所やモールがある、メイン通りビーチロードに面して農場がある。Schitt$ ではないけれど。

しかし、このドラマ、コメディなので、理解が難しい。
聞き取れないし、何回も戻して英語キャプションを読むのだが、
なにが面白いのか、分からない事が多い。
たまごっちの話題や、カフェで タラの味噌煮をオーダーするシーンなどは、笑えるのだけれど。

しかし最終回は、泣けた。
キャストたちも、撮影しながら本当に泣いていたのだと思う。

全く知らなかったが、アメリカを含め、このドラマはすごく人気になっていたらしい。そしてよく見るとシリーズは6年前に始まり、6シーズンを経て、今年終了したばかりだった。

6年前と言えば、夫と私が、
カナダと日本を行き来し始めたばかりのころである。
この湖畔の家にはテレビがないし、当時はYouTube用のスクリーンもなかったし、夫はドラマファンでもないしで、私たちはこのコメディドラマを全く知らずにいた。

その頃はまだ、私自身、
カナダとアメリカの区別をつけていなかったような状態で、
つまり、文化的に同じ、北アメリカの英語圏、という“一緒くた”の認識。

全く失礼な話である。
なんせ生まれて初めてカナダに足を踏み入れたのが、その6年前だった私である。
カナダはアメリカの一部ではないどころか、イギリス連邦に属しているわけで、コインにもエリザベス女王が刻まれている。
根本からして違う。

無知であるということは、本当に失礼な事である。

しかし、Schitt$ Creekに出てくるRosebud Motelを見ていると、夫と行くアメリカ旅行でいつも、こんなようなモテールに転々と泊まったことを思い出す。

例えば
モテールの朝食には、決まってパンケーキ焼き器が置いてあったこととか、
それで作るパンケーキは私には大きすぎて、いつも半分以上夫に食べてもらったこととか、
ある時は大学生のフットボール大会か何かで、どこもいっぱい。やっと10件目にして空き室が見つかったこととか、
浴室の壁に大きな穴が開いていて、部屋を替えてもらったこととか、
bedbug(蚤のようなもの?私は遭遇したことがないが)に注意しろと、夫にうるさく言われたこととか。

そうしたら、それから
アメリカとカナダの国境を前にして大げんかしたこととか、
その時iphoneを落としたことに気づいて、またアメリカに再入国しなければならなかったこととか、
そんなことも思い出す。

そうしたら、それから
夫の故郷バモントの山間で見た月が、泣き出したくなるくらいの美しさだったこととか、
その土地の山々の稜線が幾重にもなり、それは哀しいくらいの果てしなさで続いていたこととか、

色々な事が芋づる式にでてきて、最後のドラマのE15を見ながら私は混乱していた。
なんだかまた涙が出てきてしまうのだ。

このE15は最終エピソードの後についている、A Schitts Creek farewellというもので、キャストの素顔やスタッフの話が収録されている。最終回の収録前の読み合わせの段階で、キャストたちがもう泣いている。

彼らの感動の振動に、私は共鳴した弦楽器の弦のごとく、全く違う事象の中に置かれながら、彼らの弦に共振してしまっている。
哀しい涙ではなくて、多分、
Happy ending を見終わって、そこにあったような温かさが欲しいのだと思う。夫のぬくもりが恋しいのだと思う。

カナダとアメリカでは何が違う?

旅先のアメリカで夫に聞かれたことがある。

国境を越えたとたん、きれいな高級車が走っている!
私は笑って即答した。

かつて住んだL.A.で、日本では見かけないガタガタの車を見て驚いていたというのに、今いるあたりでは、こんな車たちも普通に見かけるから(写真参照)、アメリカ側ではどの車もピカピカに見える。

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しかし、そんなことではなくて、なんだろう。
両国の空気感の違いは言葉で表すのは難しい。
でも、強いて言うなら

アメリカはなんかこう、何かを自分たちの力で動かそうとしている。アメリカ人というプライドを持って。そんな空気がある。バモントを旅した時は、住宅地のここかしこで アメリカの国旗が見えた。
一方カナダはリラックスして、自然は自分たちの手で変えられないから、そのまま、色々な事を受け入れて、共に生きていく、そんな感じがある。

でもそれはこの地に来てやっと6年目の
私の肌感覚でしかない。

あるいは
銃のセールが毎週チラシに入っていても

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L.A.に住んでいた頃の安全面での緊張感に比べたら、
安楽である。
殺人犯がどこかに迷い込んだ?と思わせるような真夜中のヘリコプターとサーチライトもないし、
この地域は高速道路を絶対下りないように、と注意されるような場所もない。
暴動があって、curfew(L.A.暴動で日没から夜明けまでの外出禁止となった)を言い渡されることもない。
そんなところは、わたし的には断然カナダ+1のポイントである。

さて、カナダでは二つの国籍を持つことが許されていて、多くの人がそうしている。
Wendie もJenniferもMayaもアメリカ生まれでかつカナダの国籍も持っている。プリスクールのMs.McBはアイルランドとカナダ。私もよくカナダ国籍は取らないの?と聞かれる。

夫はといえば40年住んで、結局カナダ国籍を取らなかった。
何かあると

やれやれ
That’s Canada

と、カナダをコケにしていた。
しかし生涯の半分以上はカナダに住んでいたのだ。

クローゼットの奥に小さな箱を見つけた。
開けると、綿生地のアメリカの国旗が、丁寧に折りたたまれて入っている。

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夫はずっとアメリカ人だけのままでいたかったのかもしれないし、あるいは国籍追加の申請が、面倒なだけだったかもしれない。

Shcitt$ Creekはプライムタイムコメディーショーでエミー賞を受賞した。カナダ人の手で作られたカナダのTVドラマが受賞したということで、キャストたちは一段と興奮している。私も何か、誇らしい気持ちになる。
主人公の家族のお父さんJohnnyと息子Davidが制作を手掛けていて、実際でも親子だということである。

日本とカナダの子供たちのために使いたいと思います。