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サくら&りんゴ #37 その単語聞き取れません

イ、イレクション。

湖は荒れ模様である
ベッドの中にいてもわかる
暑くて開け放した窓から入る波音が耳に騒がしい
眠れない
風のせいではない
頭の中が忙しすぎるのだ

高額請求の手紙を前に弁護士選びと情報集めに時間を費やしている

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結局私はアマンダとの契約(詳細前回)を反故にし
そしてエステイト部門のスぺシャリスト、弁護士ジェイミーに頼むことにした。昨日、彼とのズームミーティングでさらに事がクリアになってきたのである。

私の権利を主張するためにファミリーローを活用する件については期限が切れていること、そしてその期限を越した場合は裁判所への申請が必要であること。
それはまさに わからない英単語をまくしたてて私より怒っているように聞こえたあのMr.ギルモアの話と合致する。あなた騙されたんですよ!と言う彼の言葉が再び蘇ってくる。
だまされた、と言う部分はともかくとして、Mr.ギルモアが叫ぶように何度も言った “イレクション” と言う意味も判明した。

なんせこの ” イレクション“ 日本人には要注意の単語である
election (選挙、投票)
erection (勃起)
LとRの違いは単語単独では絶対に聞き取れない。発音するときも要注意である。
さて、Mr.ギルモアの、私が聞き取ったところの”イレクション“は文脈からもちろんLの方だろう。しかし調べるのだが、エステイトと関係して出てくるものがない。私の権利に関しての投票?どゆこと?
しかし聞き返すのも勇気がいる。
日本語が母語の者にとってはLを発音しているつもりでも音がRに近くなりやすいことを知っているからだ。
”Mr.ギルモア、今、勃起っておっしゃいました?“はまずいだろう。

わからずもやもやしたままであったところに
ジェイミーの説明で再び”イレクション”が出てきたのである。
そしてそれはFamily Law Act electionsにある権利の選択であることが分かった。
もちろんLの方。
そこには6か月以内に下すべき妻あるいは夫が選ぶことのできる選択肢が書かれている。しかしジェイミーはいったん期限が切れるとその手続きがかなり面倒であること、そして私の場合申請要件を満たしていない可能性もあることにも言及した。
それはアマンダが完全に落としていた部分である。
夫が亡くなった1年半前、このイレクションのことが告げられなかったのは確実で、そしてどちらの選択が私にとって有利か計算して数字を示すことができる人が必要だったこともわかった。
ジェイミーによってMr.ギルモアとの会話が翻訳されて行く気分である。

僕はファミリーローの方は随分前にやっていただけなので、もう一度知り合いの弁護士に確認しますよ。それよりもエステイトローの方はファミリーローよりさらに複雑です。まずは数字を精査していきましょう。

そんなわけでアマンダはクビである。


さて、以前Tax return(タックスリターン)について書いたが、今回もうひとつ判明したのがRSP (Retirement Saving Plan)。てっきり日本の年金システムのようなものだと思っていた。しかしそれは税金を優遇するシステムでもあり、分かっていなかった私は夫のその口座からそれを引き出したばかりに一気に多額の税金を払わなければならない事になっている。
ジェイミーが説明してくれて、今からでも自分のRSP口座を作ってそこに入れなおせるかもと慰めてくれた。

だからあの1年以上かかった銀行の手続きで銀行マンたちから、あなたのRSPは?といちいち聞かれていたのだ。日本のような一定年齢になったら戻って来る積立式の年金だと思い込んでいる私は、こちらではやっていないとすまし顔で過ごしてしまった。

やれやれ困った事ばかりである。
何が私の理解を妨げるのかと分析すればそれは
日本での経験や日本で感覚的に養ってきた基準である。それをベースにこちらで物事を判断するから予想外の方向に進んで行くのだ。と言うより、日本での経験があるがために、それに沿って勝手に脳が判断して、それ以上調べようとか疑問に思う過程をすっとばしてしてしまうのだと思う。

だから若いうちに色々な文化や言語に接することが重要だとつくづく思う。いったん基準や価値観が出来上がると、あとから入ってきたものを今までのものと並列に置くことができない。経験値に合わない物は勝手に脳からはじき出されてしまう。


そう言えば以前レンタカーをしたとき、後ろのナンバープレートの真下あたりに親指の先ほどの穴が開いた。心当たりがあった。高速400を走っていて前のトラックが小石をまき散らしていたのである。
車両保険でカバーできるのか、でも営業車だから修理期間の支払いなどがあるのかと、一気に気分が重くなった。
すると返却時受付のおじさんは、走行距離メーターとガソリンだけ確認してさっさと車を移動させてしまった。申し出なかったことに心が咎めながら、あとで電話がかかって来るのではとひやひやしていた。しかしいったんおじさんが乗ってしまったからには、いつ穴が開いたかもうわからないと、ずるいことも考えていた。

そうしたら今回レンタカーをしたとき、乗る前の車両確認で

破損個所見つけたら言ってください、ゴルフボール大以上の。

ゴルフボール大 @・@

つまりあの小石での破損なんか、ダメージの内に入っていなかったということである。
東京で走っている、小枝がかすったような傷も見えないように磨かれたピカピカの車たちからは考えられない。

私がこのあたりで見かけた最強の車はこれ。

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夫のバンも同じDodgeだったが、これよりはほんの少しだけ綺麗だったと思う。


気づけば
夜明けが近い
空には大量のシーガルたち
並んで一斉に行動するグースと違って彼らは
縦横無尽に飛びまわっている
よくぞ衝突しないなと感心する
渋谷のスクランブル交差点を
歩行速度を緩めることなく通り抜ける人々といい勝負

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彼らは自由に舞い降り、自由に飛び立つ
見ていて気持ちがいいほどに
勝手気ままに

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しかしそんなシーガルたちも時折仲間内で集まっている。


とりあえずジェイミーからの連絡を待つことにする。


日本とカナダの子供たちのために使いたいと思います。