偶然の縦糸 1
あなたの横いい?
そう言って笑顔のレノアが私の隣に座った。
キッチンのそばの丸テーブル。
お手伝いに入っていたカナダ・モンテソーリプリスクールのランチタイムのことである。
私はモンテソーリのカーサクラスに入っていて(3歳から6歳)レノアはトドラークラスのパートタイムの先生だった。
私はまだカナダ・オンタリオの運転免許を取っていなくて、夫に車でこのプリスクールまで送ってもらっていた頃である。
その丸テーブルで持参のランチを食べながら私は緊張していた。入れ替わりでランチタイムにやってくる先生たちの雑談に私は入れないでいた。
古い農家を改装した園舎。キッチンの床は人の出入りの都度ぎしぎしと鳴る。その床の上で椅子を引きながらレノアが聞いてきた。
Hana's Suitcaseって本を知ってる?
ハナ・・?
と私
今度持ってきてあげるわ。日本人女性の話よ。
そういってレノアは明るい太陽のような笑顔を見せてくれた。
そのとき
この一冊の本が
私たちをずっとつないでくれることになろうとは
思いもしなかった。
あれから5年。
私たちが出会ったプリスクールはパンデミックのロックダウンで休園となりその後人手に渡ってしまった。
人の縁とはほんとうに不思議だなと思う。
でもそれは全くの偶然ではないのだ。
今思い返すといくつもの偶然が大切に紡がれてきたことがわかる。
レノアがある日私の隣に座ったという一本の偶然の縦糸。
それに次の偶然の横糸が通され、そしてまた縦糸が編み込まれ、そうやって私たちはつながってきたことが見える。
さて偶然の横糸は
次回に
そして明日は六回目の結婚記念日。
夫ジェイはいないけど。
鉄婚式って、もしジェイがいたら何をプレゼントしてくれるだろう。
大体想像はつく・・・けど。(笑)
日本とカナダの子供たちのために使いたいと思います。