サくら&りんゴ #38 高額請求に驚愕・続き
それ、理不尽ですよね
I tried being reasonable, I didn’t like it
夫が好きだったクリント・イーストウッドの言葉である。うまく日本語訳ができないけれど、道理にかなおうとしたが、俺は気に入らないんだ、みたいな?(いい訳教えてください!)
夫は私へも含めて、色々な事に腹を立てることが多く、矛先がこっちに向くと私へのその怒りはunreasonable 理不尽だ!と私も怒って返した。そうしたらこのクリントイーストウッドの言葉である。
さて、高額請求をされたためお願いした弁護士ジェイミーから、さっそくメールが来た。相手の弁護士とのやり取り内容をシェアできる範囲で送ってもらおうとしていた矢先でメール着信音。こんな風に着々と進めてもらえると安心である。
相手の弁護士の最初のメールで、8月末までに返事をくれとあったからである。
先日のズームミィーテイングでジェイミーは、金額の計算に1年半もかけておいて、追加料金$274833 ( 23910471円、今日のレートで)支払うか家を売るか二週間以内に回答しろとはね。。。と言って、私も思わず日本語で、ですよね~と強く同意した(心の中で)。おまけに家を売る場合は10月末までに出て行けと。これこそunreasonable。理不尽。大体払えたとしても、経済的に東京ベースの私はオンラインでカナダの銀行に送金しなければならない。オンラインとなると例えばある銀行は1回に300万円、月に500万円までと制限がかかっている(一応調べた)あるいはこの感染下で帰国して送金しろと?隔離期間が続いているとすれば2週間x2の日数計算が頭に入っているわけもなく。そんなことは関係ないと。
やっぱりどう考えても理不尽である。
1年半前向こうが示唆した数字を鵜呑みにした私が甘かったと。しかしジェイミーの予想ではかなり数字のコントロールがされていると言う。本当にどうなっているのかと思う。
数字と言うものは示されると、きっぱりと正しいように見えるが、その背後はひどく曖昧である。
相手に送った彼のメールには、
私のクライエントに8月末までの返事とリクエストがありますが、回答するには、もちろん、しばらくの時間がかかります。
すると間もなく向こうの弁護士からのメールシェアで
あとどれくらいかかるということでしょうか、こちらも会計士を留めておかなければなりませんので。
と、すぐ返信が来ていた
まったくヤな奴!
It’s unreasonable, I don’t like it!!!
である
さてジェイミーとの契約時には、弁護士料はエステイトから支払い可能と判断していますので、あなたが払う必要はありません。とあった。
そう言うことも知らなかった。
よく考えるとジェイミーの示唆は理にかなっている。向こうの弁護士もその方法で計算書を出してきているからだ。
アマンダからは何もなかったけれど。あまりに広範囲でその弁護士の専門以外の把握がかなり難しいのだと思う。もし彼女に引き続き頼んでいたら、それはそれで数字ではない違うアプローチがあったのかもしれないけれど。
会計がかなり複雑なので数字を会計士と一緒に精査していくとジェイミーからのメールは締めくくられていた。
この二週間、頭の中が忙しくなりすぎて疲れ切っている。こんなに理にかなって生きてきたつもりだったのに(そうでもなかったか?) こんなことが起きようとは。
父や母が亡くなった時も弁護士を雇うことなくことはすべてスムーズに終わっている。日本ではこうだったは、この地では全く成り立たないわけで、そのことは予想していても、こんな高額請求が来るとは思ってもいなかった。
せっかく戻った食欲がまた失われてしまっている。頭がフル回転していると(私なりに)食べることを考えることを勝手にはじき出してしまうのだ。
それでも、もう今季最後かな~と思いつつ湖に出た。
よく晴れた日の湖は
深い海より蒼い。
それは夫が湖の色に合わせて選んだキッチンカウンターの蒼より
ずっと深い。
しかしほんとうは水かさが減って、その色に反して停泊しているボートの列を超えてなお、腰に届かない浅さである。
初めて見る人は、一体ボートまでどうやってたどり着くのかと考える。ボートまでボートで行かなくてはいけない、みたいな。
でも実際は荷物を持って、服をたくし上げて歩いて行って乗り込んでいる。
ボートに乗ったり、水上スキーをしたり パダルボードをしたり。人々は水のある生活を楽しんでいる。私はうらやましげに見ているだけである。
さて、スイミングフレンドのアイリーンを探すがこの日は見あたらない。先日は海色のワンピース水着が素敵だった。涼しくなっても泳げるようにウエットスーツ買ってみようかしら、そう言っていた。
彼女はいつも旦那さんと来ていて、それも私にはうらやましい。彼はTシャツのまま湖に入って彼女が危なくないよう近くで見ているのだ。持参のフロートの上にぷかぷかと浮きながら。
ひとりでいつものカナダ国旗の目印まで泳ぐ。
水が思いのほか温かく何とも心地いい。
折り返し点で仰向きになって浮いてみる
この二週間の数字とわからない英単語がまだ頭の中を占拠していた
しかしそんなこととは無関係に
空は広い
広くて広くて広い
深く深く透明で
でも行きつく先は見えない
人は人生で行きつく先が見えてしまうと落胆するし
見えなければ不安になる
勝手なものだ
パソコン画面にくぎ付けされた
30cmの視野から解き放たれて
私の目は遠く遠くを見渡す
深く深く遠くを
それでもやっぱり行きつく先は見えない
ビーチに辿り着く途中でひとりの女性と出会った。
遠くまで行って疲れた~
いつも泳ぐようにしてるのよ
本当にこの地の人は、どんな状況下でも気軽に話しかけてくる。
わたしもなるだけ毎日泳いでるの
そう返すと
知ってるわ!
え~知ってるの~?!
返す間もなく彼女は水の中
もうひとりスイミングフレンドができそうである。
そんなわけで、美白至上主義の(多くの)日本女性からは考えられないほど日焼けしてしまっている。
以前は気になったけれど、もうそんなことより、湖と一体となって空を見上げる方が私にとってうんと素敵になった。
しかしひとつ懸念がある。
食欲を失くしただけでなく
新しい服を買う意欲もなくして
おまけに裏庭の野菜作りや夫の建築道具の移動やらの作業で
大抵の服はひっかけた穴があったり破れたりしている。
ダークスキンのやせた女が穴の開いたTシャツと裾のちぎれたスパッツという出で立ちで成田空港に降り立ったら、
難民申請の方ですか?
そう聞かれそうな気がする。