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Dual Residence: サくら&りんゴ#10

都庁が遠くにそびえ、坂を下ると神田川。
水平線から朝日が昇り、窓辺で水鳥の飛来を眺めるシムコー湖畔。
そんな東京とカナダ・オンタリオの二重生活を綴ります。
杉並のサくら、Innisfilのりんゴ、つたない言葉で。

信じられない事いろいろ in Canada
隔離8日目。閉じこもり生活であるが、世間もロックダウン中である。
Janがビーチを通りかかったので、裏庭側のガラスドアから手を振る。

自宅に戻ってすぐ政府関係の機関から電話がかかって来た。ちゃんと自宅で隔離生活をしているかの確認である。

食料品必需品の確保はできていますか?
訪問客はないですね?

そして
新鮮な空気にあたることができる状態ですか?

Yes, 裏庭に出ることができます。ビーチもすぐなので。

ビーチはだめです。自分の土地から出てはいけません。

えー!水鳥しかいないのに?

しかしそう言われて、言われた通りにする日本人の私は、久しぶりのJanにもガラスドアから手を振るだけである。

北側のお隣さん家族は引っ越してしまって、空き家になっている。
三歳の男の子を筆頭に、1歳半の男の子そして生まれたばかりの女の子がいた。裏庭で野放しにされていた大型犬二匹。
友人カップルのMarc&Ritaが借りて住んでいた家で、その頃の手入れされた裏庭は見る影もなかった。
ココだけの話、
以前この家のオーナーがやってきて、
何回勧告しても家賃滞納で17か月分よ!
と言っていた。

信じられない。

子どもたちのおかあさんは快活で気さくな女性で、私が朝コーヒーを持ってビーチに出ると 話しかけてくれたものだ。

子供が増えて手狭になったからどこか広いところに移ろうと思っているの。

そう言っていたけど。

オーナーによると、家の中は汚れたおむつや犬の毛やら荒れてひどい状態だったらしい。

信じられない。新生児がいたというのに。

しかしとうとう追い出されて、あの一家はどこへ行ったのだろう。
私が東京に戻る前は、婚約したと報告してくれていたのに。子供が三人もいてまだ結婚していなかったのかと、日本人的感覚からは驚いたけれど。
カナダでは結婚とほぼ同等のコモンローと言うカップルの関係がある。

さてガラス戸の向こうでJanが言うには、二軒向こうの家も売りに出ているという。そのまた向こうは去年売れたばかりだ。それだけではない。南側のお隣さんも二階のベランダから出てきて、さらに南側の三軒向こうも売れたという。二軒向こうは新しい家が建ち上がったばかりである。
信じられない。湖畔の住宅街はいったいどうなっているのだ。
オンラインでの仕事が定着し、高い家賃のトロントのアパートメントに住む必要の無くなった人々が広い土地を求めてやってきている。値段が高騰して、南側のお隣さんなど購入した2年前に比べて1.5倍になっているらしい。

信じられない。この田舎町で。

今売りたいけど、ホームレスになるし。

笑いながら言うお隣さんは自分の手でリノベーション中である。

さてうちの湖畔の家もまだ出来上がっていない。
私が東京に居る間はレベッカ親子が住んで、その代わりに壁のペンキを塗る約束であった。

そして半年近い不在から戻ると、寝室はホテルの部屋の様に片付いていた。

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かつては夫の壁塗り道具のヘラやロールやら、何に使うのかわからない材木やプラスティックのシートが散らばっていた場所である。

選んだグレーが重すぎないかと心配したが、朝の光で見ると壁のペイントはほどよい温かみをもって仕上がっている。この灰色も湖側の白も、ほんのりピンクがかった色に調合してもらったのだ。

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レベッカは自分がここに住んでいる間に、ドアも入れておくと言った。この家には部屋のドアというドアがまだついていなかったのである。寝室にも、クローゼットにも、浴室にも、そしてトイレにも。東京に居る間レベッカといざこざがあって、代わってErikに家を見に行ってもらったら、
ドアはちゃんと入っているよ!ノブがないだけで。

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信じられない。
ドアをインストールすると言ったら、ちゃんと閉まるようにノブも入れるってことじゃないの?

おかげで、寝室のドアも浴室のドアも、レストランのキッチンドアのようにバタンバタンと音を立てる。両手にお皿を持っていてもお尻で開けられるという便利な状態だ。

やれやれ。
やはりこの地では今も予想外のことが起こる。

家の南側では4本のリンゴの苗木たちが花をつけはじめていた。

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Redspring, Releika, Greencat,そしてFntasia
それぞれにいったいどんなリンゴがなるのか私にはわからない。
去年の12月東京に行く前、バーラップで覆った木の根っこは、ちゃんとリスから守られていた。そろそろ害虫よけのスプレーをした方がよさそうである。

りんゴの木の話は今はまだ書けない。

私が東京に居る間、湖畔の家にも時が経った。太陽の昇る位置は、すっかり北に寄ってフックス島に乗るのも間近である。

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そう言えばもうひとつ信じられない事 in Canada
日中の気温は20Cをとっくに超えていても朝晩はまだまだ10C以下になる。陽が照っていても湖水の温度は上がりきらない。それでも子どもや若者たちは水着になって遊んでいるのだ。
隔離中のため 人目を忍んで水際に行ってみると
信じられないほどの冷たさではないか。
寒さに耐性のない私が泳ぎに出られるのはまだまだ先のことである。

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ながつきかず
日本とカナダの子供たちのために使いたいと思います。