見出し画像

”嫌われ方のレシピ” 変革の新卒採用 #2 採用メッセージ編

以前の在籍企業での新卒採用の刷新した話の続きです。
もしよければ前回記事の♯1から読んでください。
#2はカルチャーマッチ採用を最大化し、学生と自社の双方を幸せにしたかった話です

企業文化構築の最大の担い手は採用チーム

カルチャーマッチ採用を間違うと、早期離職による無駄はまだしも、会社として正しい決定や制度への不満や、風土への悪影響が起こります。

「良い人を採用するよりも、合わない人を採用しないことが大事」とよく言いますが私もそう思います。

入社後に社員は組織内で相互に作用しあい、採用後に人事や経営者が組織風土をコントロールしきることは事実上不可能だからです。

成長企業では、現在以降に採用した人が数年内に会社の大多数を占めることが多々あります。採用チームは将来の企業文化をまさに今その手で作ってるのです。

新卒採用担当になった時、その大きな責任に対して自分はどう向き合うのかを考え、採用メッセージの変更に着手しました。

起こっていた問題の例

着任時の説明会は下記のような内容でした
・我々は新興のネット広告企業だが広告市場全体の中で売上20位以内
・近年中に10位以内に届く勢いで成長している
・このようなプロモーションの好事例がある

この結果、何が起こるか?
広告代理店に入りたい人が受けますよね。人気業界なので母集団の数には有利です。しかし、成採用競争力からいって大部分は電博に入れなかった人が入ることになる。
彼らは華やかな総合広告に憧れ泥臭い仕事に不満を感じたり、成長した後に中途入社でそういった会社に転職してしまいます。

情報開示の問題もありました。良い内容は話すが、悪い情報は進んで開示しない。当時の広告業界は過重労働が当たり前。その準備なく入り業務量に早期離職や心身の体調を崩すこともありました。

せっかくの新卒がそんな理由で辞めていく、事前に開示していたら違う選択もあったかもしれない。会社としても離職が多く無駄な育成・再採用コストを払うことになる。組織風土やLTVに責任を持たず採用数を追うからこんなことが起こる。非常に辛い思い出です。

目標とする採用の姿

私なりに考えた新卒採用の方針は「自社で幸せになれる人にこだわりまくる」ことでした。

理想とする働き方や職場環境がマッチし、事前の情報提供によって入社前後のギャップがない。だからその人は自社に入って幸せになれるし、楽しく長く在籍する。その幸せの度合の最大化や、ミスマッチで不幸せになる率の最小化にこだわる。それが会社にとって社員のLTV最大化に直結します。

新卒採用市場でだけ強い会社はすごいと思いながらも共感はできなかった。働いたことがない中で必死に考え、もっと幸せになれるかもしれない他の選択を断ち自社に決断してくれる。採用担当なら情報を盛るのではなく、彼らが自社で本当に幸せになれる確信を持って仕事がしたいですよね。

我ながらキモいこと言ってますが、合理的に最適な企業活動を求めた結果、こんなゴールに行きついてしまいました。

退職はミスマッチの最たるものです。必ずしも悪いことばかりではないですが自社の採用や風土を見直すには格好の材料となります。

退職理由はつまるところ、望む先が見えないことor望まない先が見えること。選社理由が満たされなかった時、許容できないギャップがあった時にそれは起こります。

自社に満たせる選社理由はなんなのか、どんなギャップが起こり得るのか、徹底的にオープンにしたかった。

理想を追求する採用メッセージ

その状況から目指すべき姿に近づくために、まず見直したものが採用メッセージでした。

フィットする価値観の人が自社を選ぶ理由をシャープにする。
誰にでも好かれる会社は実は本当に合う人からは選ばれない。
ただただ、この会社で一番幸せになれる人に刺さるようにひたすら磨く。

そしてフィットしない人材が入社しないように嫌われる理由を作る。
嫌われる理由がある分だけ、選ばれる理由はシャープさを増す。
望まない退職や不満になることは事前開示し期待値調整する。
自社の選考ジャッジは完璧ではない。学生がセルフジャッジしやすくして採用の質向上に協力してもらう。

少しだけ具体で言うと、母集団形成を広告業界の巨人ではなくみんな大好き人材輩出企業Rやベンチャー企業が競合企業となるように変えました。
そして、Rに行く学生全員ではなく、こんな価値観・志向性を持ってる学生だけは競り負けないというメッセージを練りました。

どんな内容かと言うと、まずはとにかく打席に立たせるという約束。そしてその約束の詳細である情報の整備。仕事の意義、クライアントのセグメント、カウンターパート、業務の幅…etc

その他は高い期待値を満たせないことを伝えます。WLBも給与も丁寧な研修も華やかな仕事もそれが大事なら他の選択肢がある。他に売れるポイントがあっても推さない。実態よりも期待値が低く伝わることは特に問題ではありません。

時に誤解があったとしても、とにかく好きになって欲しい理由のみで好きになってもらう。そのシャープさを維持できないなら嫌われた方が良い。
そんなことを繰り返していった結果、就活生同士や先輩→後輩の口伝の中で、「自分の仕事に対する考えが明らかになる選考」「そういう選社軸ならあそこを受けてみた方が良いよ」となっていき、設定した価値観の学生に関しては輩出企業に勝てるようになってました。

象徴的な採用Movie

1年目の採用を終えた後、2年目に向けて作成した動画があります。公開数日で10万PVを超えたり、それを見て入った世代が毎年その動画を社内コンテンツに利用してくれたり、今でも自社に縁のなかった20代後半の方々からはたまにあれを見返して初心に返るんですと言ってもらえる幸せな動画です。

もしこのnoteの内容に興味を持ってくれた方は下記を是非「音アリ」できいてみてください。私のやりたかったことが伝わるのではないかと思います。説明会もアトラクトもこの方向性でもう少しライトじゃない感じにしてました。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm16925850

Movie公開の4年後に社内広報に載った作成背景はこちら
shorturl.at/akIS6

終わりに

人によってはネガに捉える自社の特徴を前面に出す、ハードワークすることを是としたようなメッセージを出す、これらに社内外の賛否があったことは事実です。

ですがその賛否は意図して作り出したものでもあります。
繰り返しですが、万人受けするメッセージは本当にフィットする人にも、実は自社に入ったら不幸にしてしまう人にも半端にしか伝わらない。

もしかしたら採用より先にビジネスモデルや労働環境を見直すべきだったかもしれないし、ほっといても素晴らしい採用ができて能力が身について早く帰れてたくさん稼げる会社ならその方が良かったかもしれない。
今同じ立場だったら別のアプローチのできるかもしれない。

ただ、沢山のアンコントローラブルの中でasisとtobeの線上にハマる現実的なcanbeを作っていき、
価値観の合う人には幸せなキャリアを
合わない人には不幸になるリスク回避を
自社には高いLTVとカルチャーフィットを
そして採用チームには誇れる仕事を
それぞれ実現できました。

絶対の正解はないけれど、入社後退職して他社にいったメンバーも含め、皆が価値観のフィット高い環境で楽しく仕事をしてるのを見て、あの時やろうとしたことは達成できたんだと思ってます。

ーーーーー
以上です。最後まで読んでいただきありがとうございました。
♯4くらいまで書けそうな気がしてます。
最近twitterやってるのでもしよかったらこちらも見てください!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?