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役職の高い人が「忙しい」を言い訳にしてはいけないわけ

今から約20年前、雪印食品偽装事件がおこり、日本中が大騒ぎになったことがありました。その最中、大勢の記者に囲まれて、責任追及された社長の一言。「私は寝てないんだ!!!(怒)」
この一言で、雪印食品はついに廃業まで追い込まれてしまいました。
この例は特殊な状況ですが、一般的にも責任ある立場の人が「私は忙しい」と言い訳をすると「この人は大丈夫か?」と思うこと、ありますよね。

なぜ役職の高い人ほど、「忙しい」を言い訳にしてはいけないのでしょうか。

管理職の仕事とは

管理職の役割はなんでしょう。ドラッカーさんの「マネジメント」(ダイヤモンド社)によるとマネジメントの役割は以下の3点とあります。

①自らの組織に特有の使命を果たす。
②仕事を通じて働く人たちを生かす。
③自らが社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題について貢献する。

そしてそれらを「現在、未来」「短期、長期」といった時間をもとに考えていくこと。また管理的活動と起業家的活動も併せ持たないといけない、と書かれています。

そしてドラッカーさんは「マネージャーは”組織の成果に責任を持つ者”」と定義づけています。かつてマネージャーは”人の仕事に責任を持つ者”と定義されていたそうですけど。

管理職=マネージャーの役割を理解するうえで、ドラッカーさんのこの指摘はとても共感できます。マネージャーは仕事の進捗管理や現場にどっぷり入り込んで業務を進めることで手一杯だと、本来のマネジメントができないのです。

しかし、多くの管理職は残念ながら目の前の業務の処理に追われていて、マネージャーというより現場のリーダーのような人が多いように感じます。

なので「私は忙しい!(怒)」とキレる管理職を見ると、あぁ、この人はマネジメントができていないんだなと周囲から白い目でみられることになるのです。

とはいえ管理職は忙しい。どしたらいいの??

でも実際、管理職はとても多忙です。特に文鎮型に近い組織モデルの場合、プレイヤーとして動くことも求められます。自分の部門のミッションを達成するために、やらなければいけない作業も多く、部下が人員数的な理由や能力的な理由で思うように動かない場合など、結局、現場にどっぷり入り込んでしまう。そのことは多いに理解できるし、多いに同情します。

でもあなたは管理職です。「現在、未来」という時間軸で考えるならば、現在の対応を部下を動かして実現しつつ、自らは未来を創造しながら動いていくことができなければ、管理職の役割を果たせていないということなのです。

作業の山に埋もれそうになるとき、また達成しないといけない結果に焦るとき、どんな風にコマを使って、どう解決すべきかを考え、うまく指揮を執ることを最も優先して行動しないといけないのです。

人員が足りない、ということも、目先の業務量の対応ではなく、将来に向けてどんなプランを描くかを示していかないと、単なる人員補充に奔走しているようでは、「組織の成果に責任」を持つ管理職の姿ではないのです。もちろん、組織内での信頼があれば、いろんな方法で解決できる策もあるはず。
そう考えるとマネージャーは、まず手を使う前に頭を使うことを習慣にしないといけません。

ドラッカーは言う。「プレイングマネージャーでなければいけない」「マネジャーの仕事のための会議など不要」「マネージャーの仕事の補足をポストで補ってはいけない」

管理職は「忙しいを言ってはいけない」などというと、「プレイングマネージャーだから無理」ということもよく聞かれます。でもドラッカー曰はく「マネジメントは一つの仕事だが、マネージャーが専念するほど時間を要するものではない。マネージャーが仕事をしないと働くことの感覚を忘れ、尊さも忘れる」のでプレイングマネージャーでなければならないと言っています。
同時に、マネージャーの仕事は本人ひとり、またはせいぜいその直下の部下を使うだけのことで、マネージャーの仕事の補足のためにヘンな肩書を付けた人を増産することや、会議をすることを否定しています。
このことは現場の仕事のことではなく、あくまでも「マネージャーの仕事」のことです。
冒頭のマネジメントの役割を実践するためのマネジャーの仕事は、自分でしっかり考えて動きなさいということなんですよね。

管理職の仕事は管理ではなく「組織の成果への責任」

組織に帰属する人は、かならずその組織への貢献が求められます。でも新入社員などキャリアが浅い場合、また役職が低い場合は、成果は個人に紐づくことが大半で、個人の成果をしっかりあげることが個人の責任を果たし、結果として組織の成果にも貢献します。
でも管理職は「組織の成果」が自らのやるべきことなのです。

そう考えると、忙しくしている内容をマネージャー自身がしっかりと整理し、組織の成果に向けて「自分がやるべきこと、他のメンバーに任せること、足りないものを何で補うか」など考え、行動することです。

「忙しいというな」がやせ我慢にならないように。本質を考えよう。

「忙しいというな!」と叱られるので、我慢しようと思った人がいたら、それは管理職に向いていないということの証明です。このことが苦痛に感じるなら管理職を辞退して、専門職を目指したほうが幸せです。
ただ、辞令であなたに管理職の命が来たのなら、あなたに組織は期待しているのです。

マネジメントの本質。自分のやるべきこと。それらを踏まえて組織の成果への貢献をしっかり考えて挑戦していてください!

参照:「マネジメント【エッセンシャル版】基本と原則
   著者/P.F.ドラッカー 発行/ダイヤモンド社




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