プロダクトをシンプルに保つために機能削除プロジェクトを立ち上げた話
この記事は、2019-03-01に他ブログで書かれた記事の転載です
こんにちは。チーフデザイナー兼プロダクトオーナーの上田です。
クラウドソーシングサービスのクラウドワークスというプロダクトで戦略的に機能削除を推進している話をします。
去年の夏に価値の低い機能の廃止にこだわる3つの理由という記事を公開して反響がありました。
前回の記事では、機能の追加ではなく、機能を減らすことの価値について説明しました。当時はプロダクトオーナーとして運営しているチームの施策として機能削除をしていたのですが、最近はもっと注力するために機能削除を推進するプロジェクトを運営しています。
本来はサービスの成長とセットで機能の棚卸しをできていれば理想で、クラウドワークスは歴史的な経緯で対処が遅れてしまったものの、今後のサービス展開の足枷にならないように優先度を高めています。
イベントなどで取り組みを紹介する中で、「機能削除したい気持ちはあっても、いざやろうと思うとプロセスが分からない」と疑問の声があったので、プロセスを具体的に公開してみます。
機能削除の優先度を高める
クラウドワークスのプロダクト組織ではプロダクト開発の年間ロードマップで機能削除の優先度を高く設定しています。
たしか最初はエンジニアの自主的な活動だったのですが、開発チームの施策として機能削除をリリースするなどの事例を通して、ちょっとずつビジネスサイドのみんなも問題意識を強く持ってくれるようになり、戦略上のテーマに位置付けられるようになりました。
前回の記事で紹介した通り機能を減らし、プロダクトをシンプルに保つ価値は下記の3つだと考えていまして、こういった価値観をプロダクト組織で共通認識として持てるようになってきた気がします。
・ユーザーがコア体験に集中できる
・情報の鮮度を保ちサービスのブランドを毀損させない
・開発やデザインの生産性向上
また、クラウドワークスは提供すべきコア体験の1つにFast Start(仕事をはじめるまでの速さ)という指標を掲げており、なるべく無駄のないユーザー体験を提供することは非常に重要だと考えています。
プロジェクトチームを立ち上げる
優先度を高めると言っても、エンジニアのモチベーション問題もあるので、機能削除を専任で担当する開発チームの立ち上げは現実的ではないと考えました。
そのため、業務委託メンバーのアサインや開発チームで分担する「分散型」で対応する体制を視野に入れ、まずは不要な機能の洗い出しやビジネス価値の検討を進めるプロジェクトをプロダクトオーナーたちと3人で立ち上げました。
ちなみにみんな兼任で、プロジェクトの体制は下記のようなイメージです。
仕組みを整える
プロジェクトチームを中心に不要な機能の洗い出しをやっていると、どうしても抜け漏れは発生します。
また、デザインや技術的な負債の根深さは開発チームで手を動かして気づくケースが多いので、プロダクト組織の全体を巻き込んで課題として共有してもらえると効率的にプロジェクトを進めることができそうだなと思い、下記の2つの施策で仕組みを整えました。
1. リストの作成
※機能削除のことを社内では「剪定」とネーミングしています。
スプレッドシートで機能削除の候補リストを作成して運用しています。
開発チームで手を動かしたり、ドッグフーディングしたりして気になった時点でリストに候補として追加してもらい、プロジェクトの週次ミーティングで新着の機能をチェックし、ビジネス価値の検討をするルーティンを回しています。
あと、スプレッドシートは課題や優先度、検討状況を可視化して情報をオープンにしています。
2. Slackチャンネルやスタンプの作成
ちょっとしたtipsなのですが、機能削除のリリースを報告したり、疑問や質問ができるチャンネルを作ることで、効率的にコミュニケーションを進められました。あと、Slackのスタンプはプロジェクトの浸透に効果的でおすすめです。
アウトプットにつなげる
業務委託メンバーのアサインと開発チームで分担して担当する体制でアウトプットしています。
プロジェクトを立ち上げて数ヶ月ほど推進して想定外だったことは、機能削除の候補になっているものについてビジネス価値を事前に明らかにしておくと、想定以上に機能削除のタスクを開発チームで拾ってくれていることです。感謝。
事前にビジネス価値が明らかになっていないと、たとえ開発チームで不要な機能を発見できたとしても、開発スケジュールの都合でビジネス価値の検討をしている暇はないケースが多いので、残念なことに不要な機能が結果的に放置されてしまうのですよね。
なので、不要な機能の洗い出しとビジネス価値の検討を担当するプロジェクトの立ち上げは一定うまくいってるのではないかなと思っています。
今後の課題
順調にプロジェクトは軌道に乗ってきていますが、下記の点は引き続き今後の課題として試行錯誤が必要だなと思っています。
・ユーザーにとって価値があるかどうかの判断基準
・大型の機能はビジネス価値の判断や技術的な実現可能性の難易度が高い
・開発リソースが足りない
基本的には大胆に判断してやっていくしかないと考えているのですが、効率的なプロジェクトの進め方を検討していく所存。
さいごに
完璧とは、付け加えるべきものがなくなった時ではなく、取り去るべきものがなくなった時のこと ー アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ
機能削除は、この言葉をコンセプトに「これ以上削ることは出来ない状態」を目指してプロジェクトを推進しています。
小手先のグロースではなく、根本的にプロダクトの品質を高めることによって、長寿のプロダクトでも、シンプルでモダンなプロダクトに生まれ変わることができるってことを証明していきます!
さて、そんなクラウドワークスでは、新しい働き方を一緒にデザインしてくださる仲間を探しています。ご興味ある方はぜひ気軽にご連絡いただけるとうれしいです。
それでは、最後まで読んでくださりありがとうございました。
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