クラウドワークスの創業期から6年以上在籍するぼくが、辞めるのを辞めた話。

この記事は、2018-12-25に他ブログで書かれた記事の転載です

こちらは「Service Designer's Advent Calendar 2018」の、最終日の記事です。

メリークリスマス。クラウドワークスのUXデザイン部チーフデザイナーの上田です。

10月1日を以て、クラウドワークス社のチーフデザイナーに就任したのですが、役職を引き受けるに至る過程で、自分自身のキャリアについて葛藤や悩みを抱えてました。

アドベントカレンダーの最終日は、そんな、ぼくがデザイナーとして経験したキャリアの葛藤や悩みについての素直な告白です。年末年始に人生や仕事を深く内省する人にとって、役立つヒントがあればうれしいです。

クラウドワークスを辞めようと思ってた笑

理由1. デザイン組織の立ち上げの一区切り

2016年10月から、ボトムアップでデザイン組織の立ち上げに携わりました。

少人数の小さな組織で始まり、「会社にデザイン文化をつくりたい」「デザインで事業成果を出したい」といった想いで、

デザインプロセスの設計、対外的な組織ブランディング、プロダクトオーナーを兼任してカイゼンチームの立ち上げ、フロントエンド領域の強化など、がむしゃらにやってきました。褒められた話ではないんですが、時間的な意味合いでは、他の誰よりもたくさん働いていたと思います。

原動力は、創業期に入社した1人目のデザイナーとして、クラウドワークスのデザインをこのままで終わらせらたくない、というプライドでした。

当時の自分の目標は、自分がいなくてもデザイン組織が発展し続けられる状態をつくることと考えてまして、デザイン組織も、3名から10名にメンバーも増え、尊敬できるデザイナー1人1人がそれぞれの強みを活かしながら活躍しています。もちろん、まだまだ発展途上な状態だと捉えてますが、当初の「自分がいなくてもデザイン組織が発展し続けられる状態をつくること」は達成しつつあるのでは、と思ったのです。

自分なりに設定したゴールを達成できたタイミングというのは、1つの節目としては納得感がありますよね。

理由2. 「デザイン戦略を設計したい」と「デザイン技術を磨きたい」のジレンマ

ここ2年のデザイン組織の発足と進化に沿って、デザイナーからリードデザイナー、リードデザイナーからチーフデザイナーと1年おきの間隔で役職をアップデートしてきました。

開発チームに所属する1デザイナーとして局所的なカイゼンで成果を出すことからスタートし、サービス全体の体験やUIの統一や価値の低い機能の戦略的な廃止など、現場で気づいたプロダクトの抱える課題を全体の戦略に反映したいという気持ちと、デザイナーの活躍できるフィールドを広げたい気持ちで、より大局的な役割にシフトしていきました。活動の幅を開拓することで、結果的にも、クラウドワークスの社内におけるデザイナーのプレゼンス向上に繋がった部分もあったはずです。

ただ、デザイン戦略の策定や全体施策を推進したいという気持ちとは裏腹に、もっとデザイナーとして技術力を磨きたい気持ちのジレンマを抱えることになります。欲張りな自分の性格を考えると、本来はもっと小さいプロダクトや組織の方が向いてるのではないかと思い、スタートアップへの転職を志向していました。

他にも細かく挙げれば、最近は謎のデザインバブルでIT業界は深刻なデザイナー不足に陥ってるので、デザイナーにとっては外部環境的にチャンスを掴みやすいことなど色々ありますが、主に以上の2つの理由でクラウドワークスの卒業を検討していました。

しかしデザインマネージャーとの対話や内省を重ねた結果、クラウドワークスでのチャレンジを継続したいなと思い至り、オファーいただいたcrowdworks.jpを始めとした複数のプロダクトを束ねる「プロダクトDiv.」という部門全体のデザイン戦略をリードするチーフデザイナーの役職を引き受けました。その理由について掘り下げて書いてみたいと思います。

それでも、クラウドワークスに残った理由は?

理由1. 事業部のボードメンバーとして上流の景色を見てみたい

力不足で恐れ多いのですが、チーフデザイナーの役割の1つに、次のようなミッションがあります。

「プロダクトDiv.」という部門のボードメンバーの一員になることで、よりプロダクト事業や組織の運営に「デザイン」を取り込むミッションを担います。

2018年はデザイン経営というキーワードが注目された年でしたが、経営や事業にデザインの力を活かせるとぼくも信じてますし、クラウドワークスでも実践すべきだと考えてます。最上流の会社経営まではまだ関わることができていませんが、事業部の単位でも事業や組織の運営にデザイナーとして関わることができるのは貴重な経験だと思いました。

また、事業会社や制作会社、組織のフェーズによって事情が違うのかもしれませんが、現場の開発チームなど少人数の組織の単位でデザインを実践するのと、戦略を設計して大人数の組織の単位でデザインを実践するのは、巻き込む人の幅広さや思考する時間軸の長さが変わってくるので、提案や求められる実行力の難易度の差があるのではないかと思います。

少人数の組織の単位であれば自ら会社を興すなど比較的経験しやすいと思いますが、クラウドワークスのような大きな組織で、事業運営目線でデザインを推進していくことは中々できる経験ではないため、自分の将来にも繋がってくるのではないかと思い、クラウドワークスに残ると決めた大きな要因になりました。

デザイナーとしてキャリアを選択する上で、判断に迷ったときは「得られる経験のレア度」を1つの指標にして考えてみると面白いかもしれません。

理由2. crowdworks.jp というプロダクトの可能性を再認識

デザイナーとして深くコミットメントするなら、社会性の高いテーマをやりたいというのがコアとしてあります。それ以外を絶対にやらない、という訳ではないですし、今後は興味が変わってくる可能性もなくはないけど。

先日 crowdworks.jp のサービス哲学を考える会をやったのですが、クラウドソーシングは社会のあたらしい働き方を支える大切な仕組みであると、改めてサービスの価値を見つめ直す機会になりました。副業推進の波で、フリーランス市場だけではなく、今後は兼業・副業市場でもしっかり価値を発揮していくべき存在だと思ってます。

兼業・副業市場のユーザーを理解するためのユーザーリサーチをやっていて、日本の大企業や中小企業に務める様々な会社員の方々の根強いニーズを感じて手応えも持ちました。

安心・安全、素早いマッチング、仕事量、多様な仕事、情報の質などのユーザー体験の課題、年季のはいったサービスならではのシステムやUIの課題などハードルは多くありますが、取り組むテーマのやりがいを考えれば、もう少し自分にできることで貢献したいという気持ちが増しました。

ニュースを見てると日々新しいサービスが生まれ続けていますが、本心で「世の中にあった方がいい」と思えるサービスはありますでしょうか?もしくは、現在担当しているサービスで実現しようとしてる未来は本当に必要だと思いますか?

デザイナーに限った話じゃないと思うんですが、「関わる事業やサービスにどれぐらい熱量を持てるか」はデザイナーとして成果を出す鍵なんじゃないかと思います。サービス愛、という言葉もあるように、本気で向き合えるサービスとの出会いを大切にしていきたいですよね。

さいごに

キャリアに対する葛藤や悩みを振り返っていて、クラウドワークスに残った理由は、必ずしもクラウドワークスを卒業しようと思った理由を打ち消す要素ではないところに、キャリア選択の理屈のみで割り切れない奥深さを感じました。

例えば、デザイナーとして伸ばしたいスキルと事業会社と制作会社の特徴と照らし合わせ、合理的に判断する方法もありますが、そういった枠やフレームに自分を当てはめるのではなく、自己との内省や他人との対話の中から、本当にやりたいことを発見できると納得のいく選択ができるかもしれません。

以上で Service Designer's Advent Calendar 2018 は終了です。

それでは、楽しいクリスマスをお過ごしください!

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