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「止まる」こととは——。はたから見ると「動いている」ように見える時

画家が筆をとめて、描いていた絵を少し離れて見ている時。料理人が出汁を口に含んで味をみている瞬間。会話の中でピッタリくる言葉を探して、話すのを止めている時。『自分をいかして生きる』西村佳哲より

「動く」ために必要なのは「止まる」こと。逆説的だけど。ほとんどのことに共通して、動くことより、「止まる」ことの方が難しいと思っている。難しいことには、価値がある。

30歳を手前に、最近はよく「止まる」ことの難しさについて考えている。加えて、実感している。歳を追うごとに、油断していると外的な「動」に巻き込まれて、止まることを忘れてしまうのではないか。上に引用した文章には、次のような続きがある。

わたしたちは自分の奥の誰かに、「これでいい?」とか「どう?」という問い合わせを行っている。今、自分自身が感じていること、つまり自分の実感を確かめている。

先日、サッカーの文脈でちょっとだけ「減速」について触れた。身体をコントロールする上でも、サッカーの戦術的アクションを遂行する上でも、非常に大切なファクターだ(例えばビルドアップも、ハイプレッシングも、減速/静止が出来ない個人・チームでは機能しない)。静的フェーズを作れないチームは、どう考えたって良いサッカーなんか出来ないし、うまく止まれない選手は、どう考えたって効果的に“動く”ことは出来ない。

※そうすると、身体に関するスペシャリストが現れて、以下のトークセッションをすることになったので、すみません宣伝入ります

それはいいとして、サッカーをライフワークにする自分としてはやっぱり、「止まる」ということについて考えずにはいられない。なぜ、止まることは難しいのだろう。

生きることに、止まることは必要なのだろか。


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集団の渦

アウトドアブランド「Patagonia」には、社員が仕事を2ヶ月ほど離れて非営利団体で働くことができる(給料やポジションは保留されながら)制度があったり、2ヶ月とか、時には4ヶ月とか、社員がアウトドアに出掛けていくことが推奨されているそうだ。今調べたら、僕は2017年に『社員をサーフィンに行かせよう』を読んでいたみたいだけど、先日古本屋で買った本でPatagoniaの働き方について少し書かれていて、再びこの本のことを思い出した。

細かいところはそれらの本を読んでもらえたらいいのだけど、僕はこのPatagoniaが行っている(哲学が表れた)働き方は、つまり「止まる」ことなんじゃないかと思っている。

僕が初めて「止まった」のは、

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