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結局ふざけていいのか?ダメなのか?——「勝利」を追求すればするほど必ず「楽しむ」に行き着く理由と根拠

サッカーという、ある種抽象的なスポーツの世界にいるからなのかもしれないが、時に「勝利」が邪険に扱われ、また時にそれに相対するようにして、「楽しい」や「幸せ」が邪険に扱われているのを目にすることが多い。そのような論争をみるたびに、僕はサッカーに従事する人間として、大きな危機感を覚える。

上記したように、「勝利」が邪険にされる代わりに「楽しい」が表に出て、逆に「楽しい」が邪険にされる代わりに「勝利」が表に出るような、そんなサッカーが日本で行われている限りは、僕は未来がないと思う。だから今回は、その論争を終わらせることを目標に、この文章を書くことにする。

前提として僕は、サッカーをすることによって「死ぬほど勝利を求めている」人間である。また同時に「死ぬほど楽しむことを求めている」人間である。

なぜその2つが同じ人間に宿ることが出来ていると、僕は言えるのだろうか。

言葉や図表を使って整理をする必要がある。でなければあなたは18歳までの自分のように、サッカーをすることで勝利をあげることや、楽しむこと、幸せになることが、一向に出来ない。

そもそも僕らは「勝利が欲しい」と言う割には、「勝利」とは一体何かを深く掘り下げ、正体を知しようとすることをしないそれは「楽しい」もまったく同じである。「幸福」とは何か?と聞かれたら、わからない。あまりに難しいテーマだ。ただし「勝利」の正体や「楽しい」の正体は、整理することができる。

サッカーというゲームにおいて、もしくはその他類似した分野において、『「勝利」を追求すればするほど「楽しむ」に必ず行きつく理由と根拠』をここで説明していきたい。


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日本人はよく、勝利を求めることは、楽しむことを犠牲にする行為であると認識する。それはまず、正しいことだろうか。『憂鬱でなければ仕事じゃない』という著書が話題になったこともある。もちろんそれは、職種によってはそうなのかもしれないし、状況によっては、何らかの感情(緊張や興奮)を「憂鬱」として置き換えることもあるだろう。

例えばサッカーを仕事に置き換えた時に、何が最も大事なポイントになるかと言えば、『生産性』『創造性』である。短い時間で効率よくTRをすることを「生産性が高い」と置き換えることもできるし、少ない体力の消耗でプレーをすることも「生産性が高い」と言うことができる。つまり仕事量が少ないにも関わらず、より多くの、もしくはより良い結果を出すことが、サッカーにおいてはあらゆる面で重要になってくる。

「創造性」が重要なのは説明するまでもなく、サッカーは事前に未来が読めない構造をしているため「創造性のゲーム」であると言える。つまり現在の世の中のように、どういったことが課題・問題になってくるのか、過去ほどわかりやすくないということだ。仕事や社会における問題・課題がわかりやすかった過去に比べて、これからはまず課題や問題を見つける創造性が必要になってくる。サッカーは、過去も未来も、ゲーム中は常にその状態である。

「生産性」と「創造性」が重要なのは、サッカーだけではない。例えばフリーランスのデザイナーにとっては、どれだけの時間でどれだけ創造性を働かせ、良いものを生産し続けるかが、仕事における基準となる。お金を稼ぐこと、もしくは良い作品をつくることを勝利と置き換えてもいい。さらに、例えばGoogleやFacebookなど、世界の名だたるアメリカのIT企業においても、彼らはあらゆる工夫をして「生産性」を高め、そして「創造性」を失わない工夫をしている。それが『ウェルネス』であり『メンタルヘルス』である。彼らは社員がより働きやすい環境を整えるために、ハード面・ソフト面において、あらゆるケアをしているのだ。なぜなら、働いている社員が仕事をすることに喜びを感じ、楽しみ、幸せを感じている状態でしか「生産性」や「創造性」を高めることは不可能である、ということを知っているからだ。つまりそれは、会社の業績に関わってくる問題である。日本にも、そういった職場環境を作っている企業は多くなってきているのではないだろうか。

ここで疑問が浮かぶ。

なぜ同じ「生産性」と「創造性」が命のサッカーとIT企業の間で、サッカーでは「楽しむ」ことを犠牲にして勝利や成長を求め、IT企業では「楽しむ」ことで勝利や成長を求めるという、両者の間に矛盾が発生しなければならないのだろうか?これを解決するには「勝利」と「楽しい」を一度解体する必要がある。


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ここで初めて「努力」や「苦しむ」という言葉を出してみよう。おそらく、

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